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庭にそぐわないもの

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エディが単独で乗り込んでくる前に、ステラは庭の穴に、あるものを埋めていた。それは、人!では勿論なく、服を着せた簡易版のトルソーだ。コレを人と間違えさせようというのだが。


「無理じゃない?」
「顔ないものね。」
「首から先がないのは不自然よね。」
「手作りで何とか作りましょうか?」

うーん。

そもそもトルソーを埋めていること自体、第三者に見られると怪しいのだ。明らかに驚かせる意図を感じさせてしまう。だからといって、人を埋める訳にもいかず、人っぽいものを探した結果、これしかなかった。

このトルソー、実は使いすぎて、あちこちが破れてしまった年季の入ったもので、近々廃棄予定ではあった。

それを畑なんかに埋めて、鳥やら害獣避けなんかに使ってみようと思い、庭の端に置いていた、という設定である。


でも畑とは違い、花壇だし無理があるかな、と考えていたところ、今度はサリナから驚くべき報告が届けられたのである。



「あの、すみません。実は……」

彼女の話を要約すると、彼女には文官の兄がいるのだが、その兄がライナー伯爵子息にある噂があると嘘をついたらしい。

彼は自らの無実を証明する為に、我がフリート伯爵家に忍び込むつもりらしい。


何故にうちの庭?とは思うが、レイラ達の頑張りにより、レイラが殺されていると言う仮説を立てて、奴は乗り込んでくるらしいので、何とか証拠を押さえてやろう、ということだろう。

「あの人ってあんなに考えなしだったのね。」
「昔から見てますが今が一番愚かだと見受けられます。」

ミラがステラの長年の疑問にあっさりと答えてくれる。彼女がいうなら多分間違いない。

ライナー伯爵家もこれから大変だろうな。一度は身内になる可能性もあっただけにその疲労やら、無念さは楽に想像ができた。あの家は弟のニコルが優秀だから、きっと大丈夫だろう。

彼は、彼自身もピンクさんに狙われていたのに、全く近寄らない姿勢を保っていた。あの一件で、彼を見直したご令嬢達はたくさんいる筈だ。今はまだ婚約者のいない彼も、兄から後継の座が移れば、人気もたくさん出るだろう。

我がフリート伯爵家も、エディには金輪際関わる気はなくても、ニコルなら話は異なる。

少なくとも、彼が兄のようにならない限りは、無事に伯爵家を盛り立てて行くことに、疑いはない。

ライナー伯爵家からはエディの有責での婚約破棄の話が出てきている。詳しい話は親同士でお願いするが、エディに対する制裁は自分に任されているため、悔いを残さないようにステラはどうにかトルソーと格闘しているのだ。

とはいえ、元婚約者の家に忍び込み、侍女を殺そうとする元貴族の平民男ってどれだけの罪になるんだろう。ステラの頭の中には、可哀想という気持ちよりも愉悦という気持ちが詰まっていた。
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