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契約結婚の申し出
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「結婚?ですか……」
王弟のご子息なだけあって、顔立ちはとても王家に似ているものの、終始にこやかな表情を貼り付けていて、中々腹の底が読めない。
と、そんな噂を今頃になって思い出す。大公子息とは今日が初対面で、だからこそ彼がこうしたことを口にしたのなら、何か思惑があるはずだ。
「いえね、今回また婚約はしたものの、逃げられてしまったでしょう。新たな縁を繋ぐにも他のご令嬢は皆、すでに他の方との婚約を済まされている。それで、今回貴女に白羽の矢が立ちまして。
婚約を先にしてまた逃げられては敵いませんので、できれば早いうちに結婚を、と。勿論断ってくださってかまいません。
ただ、私は貴女より少しばかり年上ですし、身分も上なので、権力は使い放題ですよ。あくまでも政略結婚ですので、私の伝手を使って優れた養子を貰うことも可能です。」
淡々と語られる申し出に、シェイラは呆気に取られつつ、冷静になって考えた。
元々マートンとの間にも恋愛感情などはない。愛人がいて、彼らが寄生してくるのが嫌だっただけで、政略結婚は受け入れている。
権力を振り翳す気はないけれど、味方になってもらえばこんなに頼もしいことはない。
前向きに考えてみても良いのかもしれない。
彼はこちらの考えが読めるのか、満足そうに頷き、これから来るであろうもう一人の来客に渡してくれ、と一通の手紙を差し出した。
「貴女と話す前に目を通すように、彼に渡してください。」
受け取ると、先程の貼り付けた笑顔ではない、微笑みを浮かべ「返事は急ぎませんのでよくお考えください。」と、去っていった。
さて、この手紙。グレイズ侯爵家の後継者となるはずだった先妻の忘れ形見、大公子息からすれば親同士が従兄弟という間柄の人物にと、言付かったのだが。
結論から言うと、彼は手紙を先に読まなかった。
そして、シェイラに勘違いからくる暴言を吐いた上で、伯爵家の全てを敵に回した。
マートンとは異母兄である男は、伯爵家に来るなり、まだ顔合わせの段階であのセリフを大声で口にしたのである。
「貴女を愛することはない!」
エコーまで聞こえたほどにシーンと静まり返った屋敷の空気。そりゃそうでしょうよ。初対面で何言ってるの、気持ち悪い。
「は?……当たり前です。私だって、貴方を愛することなんて、ありません。」
身分が上でも、頭のおかしな男に振り回されたくなくて、ちゃんと拒否の言葉を口にする。なのに、言われた方は驚愕の表情を浮かべるのだから意味がわからない。
「……え?」
「何ですか、急に。冷やかしならお帰りください。大公子息様とは随分違うのですね。ガッカリしましたわ。」
無礼な態度に、母がご立腹な模様。
衝撃的な言葉を吐きながらも、紳士的な態度を崩さなかった大公子息様と、勘違い発言の元侯爵家後継者。
マートンと同じ血が半分入っていることで色々察したが、こうしてみると碌でもないのは父親の血なのだな、と理解することができた。
どうどう、と母を宥め、話が進まないので、ソファを勧める。お茶も入れ直して貰ったところで、改めて、預かっていた手紙を読んで貰う。
読み進めるうちに、顔色が赤から青に変わり、全て読み終えた頃には白い顔になっていたからには、何かしらの誤解があったのだろう。
「申し訳ない。貴女が私の子供を望んでいると聞いて、早とちりしてしまった。」
いえ、それ、私も初耳ですけど?
王弟のご子息なだけあって、顔立ちはとても王家に似ているものの、終始にこやかな表情を貼り付けていて、中々腹の底が読めない。
と、そんな噂を今頃になって思い出す。大公子息とは今日が初対面で、だからこそ彼がこうしたことを口にしたのなら、何か思惑があるはずだ。
「いえね、今回また婚約はしたものの、逃げられてしまったでしょう。新たな縁を繋ぐにも他のご令嬢は皆、すでに他の方との婚約を済まされている。それで、今回貴女に白羽の矢が立ちまして。
婚約を先にしてまた逃げられては敵いませんので、できれば早いうちに結婚を、と。勿論断ってくださってかまいません。
ただ、私は貴女より少しばかり年上ですし、身分も上なので、権力は使い放題ですよ。あくまでも政略結婚ですので、私の伝手を使って優れた養子を貰うことも可能です。」
淡々と語られる申し出に、シェイラは呆気に取られつつ、冷静になって考えた。
元々マートンとの間にも恋愛感情などはない。愛人がいて、彼らが寄生してくるのが嫌だっただけで、政略結婚は受け入れている。
権力を振り翳す気はないけれど、味方になってもらえばこんなに頼もしいことはない。
前向きに考えてみても良いのかもしれない。
彼はこちらの考えが読めるのか、満足そうに頷き、これから来るであろうもう一人の来客に渡してくれ、と一通の手紙を差し出した。
「貴女と話す前に目を通すように、彼に渡してください。」
受け取ると、先程の貼り付けた笑顔ではない、微笑みを浮かべ「返事は急ぎませんのでよくお考えください。」と、去っていった。
さて、この手紙。グレイズ侯爵家の後継者となるはずだった先妻の忘れ形見、大公子息からすれば親同士が従兄弟という間柄の人物にと、言付かったのだが。
結論から言うと、彼は手紙を先に読まなかった。
そして、シェイラに勘違いからくる暴言を吐いた上で、伯爵家の全てを敵に回した。
マートンとは異母兄である男は、伯爵家に来るなり、まだ顔合わせの段階であのセリフを大声で口にしたのである。
「貴女を愛することはない!」
エコーまで聞こえたほどにシーンと静まり返った屋敷の空気。そりゃそうでしょうよ。初対面で何言ってるの、気持ち悪い。
「は?……当たり前です。私だって、貴方を愛することなんて、ありません。」
身分が上でも、頭のおかしな男に振り回されたくなくて、ちゃんと拒否の言葉を口にする。なのに、言われた方は驚愕の表情を浮かべるのだから意味がわからない。
「……え?」
「何ですか、急に。冷やかしならお帰りください。大公子息様とは随分違うのですね。ガッカリしましたわ。」
無礼な態度に、母がご立腹な模様。
衝撃的な言葉を吐きながらも、紳士的な態度を崩さなかった大公子息様と、勘違い発言の元侯爵家後継者。
マートンと同じ血が半分入っていることで色々察したが、こうしてみると碌でもないのは父親の血なのだな、と理解することができた。
どうどう、と母を宥め、話が進まないので、ソファを勧める。お茶も入れ直して貰ったところで、改めて、預かっていた手紙を読んで貰う。
読み進めるうちに、顔色が赤から青に変わり、全て読み終えた頃には白い顔になっていたからには、何かしらの誤解があったのだろう。
「申し訳ない。貴女が私の子供を望んでいると聞いて、早とちりしてしまった。」
いえ、それ、私も初耳ですけど?
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