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「私」に関する前情報
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「そもそも釣り書きはそちらから、と記憶しておりますが、本当に冷やかし、だったのですか?」
何やら話が変な方向に向いていっているような気がして、冷静になって聞いてみると、二人の釣り書きは、公爵様の采配によって届けられたと言う。そのことに関して詳細な説明はされなかったらしいが、されなくとも独自に調べることはできるだろう。
彼は既にやらかしている自覚があるからか、頭に手を置き、恥ずかしそうな顔をして、しどろもどろと言い訳を始めた。
「貴女のことは、異母弟の婚約者だったと言うことと、弟を引き取るが、後継者を授かれない時には、優秀な養子を融通してほしいと伯父上に直談判したご令嬢だと聞いている。
私の母は、苛烈な性格で婚約者が決まるまで大変だったと聞いている。伯父上とは歳が離れていることもあって、可愛がられたと言うからとても我儘に育ったのだと。
そんな母を引き取ってくれた当時の父に、伯父は一応の恩義は感じていた。だから、後妻との間に生まれた、平民になるはずの父の子供にもいくつかの道を用意していたと言う。侯爵家を継がせること以外なら、期待に添えるように手を尽くそうと。
結果はああなってしまったが、二人が努力するならば、貴族として残れるように尽力しようとしていた。
実際、ブラウン伯爵家には公爵家から厳しい査定があったのだが、幸いにもブラウン伯爵家には何ら悪いところはなかった。
それで……次は、貴女に査定が移って……だな。」
「私に、気になる箇所があったと言うことでしょうか。信用できない何かを検知した、と?」
「いや、そうではないんだ。何というか。これはコチラの話なんだが、私が聞いた話では、貴女は愛のないマートンよりもより良い条件の男の子を産むために一見貞淑なふりをして男を誘っている、と。いや、それは事実無根の言いがかりに過ぎないのだが。」
ああ、大方この男を狙う女性から私への牽制が入ったと言うところか。
「私は、他人の心を見透かせる伯父のようなタイプではない。伯父曰く女性からはカモにされるタイプなのだそうだ。その証拠に継ぐ筈だった侯爵位は、争いの種になりかねない、と言う伯父の意見で剥奪されてしまった。」
「だから、公爵はウチに釣り書きを送って来られたのですね。」
「ああ、私が貴族のままに居られるには貴女に気に入られなければならないのだが。……それもこれも、もしかしたら貴女の仕組んだことなのかと。」
彼に私への悪口を吹き込んだ相手が誰かは知らないが、この男はあの公爵の許で育てられたにしてはお花畑な頭だな、と言うことは理解した。
「因みに、貴女に私の悪口を吹き込んだのはどこの誰なのですか。」
「異母妹のジュリエットだ。」
「……彼女とはいつ話を?」
「彼女とライアンの婚約が成った後に、少し話をした。ずっと自分に婚約者がいなかったのは貴女に妨害を受けていたからだと。彼女の横で狙った男を落とす様を見て、弟が可哀想で見ていられない、と。弟が女性に言い寄っているように見えるのは婚約者に振り向いてほしいからだ、と。」
「そんな事実はありません。」
「ああ、今は理解している。ただ、あの頃の自分は異母妹に頼られて、嬉しかったのだな、多分。」
それで、まんまと騙されて、さっきの発言?シェイラは自分が先入観に囚われていたことに気づく。自分も彼を責められない。
あの公爵に育てられたのだから、この男は正常に育ったものだと、思い込んでいた。貴族社会は厳しいので、残念ながら不適合者も多数存在する。この男も、そちら側だっただけ。
人の話を聞かないマートンみたいな男も、人の話を信じすぎる彼のような男も、人のものばかり欲しくなるジュリエットみたいな女も、その一人。
「残念ながら、貴方は貴族に向いていないかと思われますわ。ブラウン伯爵家が貴方を認めることはありません。」
「わかっている。……申し訳ない。一方的で傲慢な態度だった。」
来た時の勢いはどこへやら、慎ましく座る彼を見ていたら、怒る気力も失せてしまった。公爵様に同情する。
「ジュリエットとは仲が良かったのですね。公爵には咎められたのではないですか。」
「ああ、会ってはいけないと何度も言われたよ。彼女は美しいが、父の血を引いているかも定かではないと言われていたから。実際異母弟は父に似ていたが、ジュリエットは彼女の母親に似ていたからね。まあ、血の繋がりがないのなら、彼女の引き取りを私がしても良いのかもしれない、とも思っていたが。」
ああ、だからなのか。彼は伯父に捨てられたのだ。シェイラは優秀な養子を、と彼に頼んだ。頼みはしたが、ただ漠然とした「優秀な」の意味だと十分彼もその条件に該当してしまう。
「次はお前だ」と刃物でも突きつけられているかのような感覚に、シェイラは、武装の必要性を感じて、震えた。
何やら話が変な方向に向いていっているような気がして、冷静になって聞いてみると、二人の釣り書きは、公爵様の采配によって届けられたと言う。そのことに関して詳細な説明はされなかったらしいが、されなくとも独自に調べることはできるだろう。
彼は既にやらかしている自覚があるからか、頭に手を置き、恥ずかしそうな顔をして、しどろもどろと言い訳を始めた。
「貴女のことは、異母弟の婚約者だったと言うことと、弟を引き取るが、後継者を授かれない時には、優秀な養子を融通してほしいと伯父上に直談判したご令嬢だと聞いている。
私の母は、苛烈な性格で婚約者が決まるまで大変だったと聞いている。伯父上とは歳が離れていることもあって、可愛がられたと言うからとても我儘に育ったのだと。
そんな母を引き取ってくれた当時の父に、伯父は一応の恩義は感じていた。だから、後妻との間に生まれた、平民になるはずの父の子供にもいくつかの道を用意していたと言う。侯爵家を継がせること以外なら、期待に添えるように手を尽くそうと。
結果はああなってしまったが、二人が努力するならば、貴族として残れるように尽力しようとしていた。
実際、ブラウン伯爵家には公爵家から厳しい査定があったのだが、幸いにもブラウン伯爵家には何ら悪いところはなかった。
それで……次は、貴女に査定が移って……だな。」
「私に、気になる箇所があったと言うことでしょうか。信用できない何かを検知した、と?」
「いや、そうではないんだ。何というか。これはコチラの話なんだが、私が聞いた話では、貴女は愛のないマートンよりもより良い条件の男の子を産むために一見貞淑なふりをして男を誘っている、と。いや、それは事実無根の言いがかりに過ぎないのだが。」
ああ、大方この男を狙う女性から私への牽制が入ったと言うところか。
「私は、他人の心を見透かせる伯父のようなタイプではない。伯父曰く女性からはカモにされるタイプなのだそうだ。その証拠に継ぐ筈だった侯爵位は、争いの種になりかねない、と言う伯父の意見で剥奪されてしまった。」
「だから、公爵はウチに釣り書きを送って来られたのですね。」
「ああ、私が貴族のままに居られるには貴女に気に入られなければならないのだが。……それもこれも、もしかしたら貴女の仕組んだことなのかと。」
彼に私への悪口を吹き込んだ相手が誰かは知らないが、この男はあの公爵の許で育てられたにしてはお花畑な頭だな、と言うことは理解した。
「因みに、貴女に私の悪口を吹き込んだのはどこの誰なのですか。」
「異母妹のジュリエットだ。」
「……彼女とはいつ話を?」
「彼女とライアンの婚約が成った後に、少し話をした。ずっと自分に婚約者がいなかったのは貴女に妨害を受けていたからだと。彼女の横で狙った男を落とす様を見て、弟が可哀想で見ていられない、と。弟が女性に言い寄っているように見えるのは婚約者に振り向いてほしいからだ、と。」
「そんな事実はありません。」
「ああ、今は理解している。ただ、あの頃の自分は異母妹に頼られて、嬉しかったのだな、多分。」
それで、まんまと騙されて、さっきの発言?シェイラは自分が先入観に囚われていたことに気づく。自分も彼を責められない。
あの公爵に育てられたのだから、この男は正常に育ったものだと、思い込んでいた。貴族社会は厳しいので、残念ながら不適合者も多数存在する。この男も、そちら側だっただけ。
人の話を聞かないマートンみたいな男も、人の話を信じすぎる彼のような男も、人のものばかり欲しくなるジュリエットみたいな女も、その一人。
「残念ながら、貴方は貴族に向いていないかと思われますわ。ブラウン伯爵家が貴方を認めることはありません。」
「わかっている。……申し訳ない。一方的で傲慢な態度だった。」
来た時の勢いはどこへやら、慎ましく座る彼を見ていたら、怒る気力も失せてしまった。公爵様に同情する。
「ジュリエットとは仲が良かったのですね。公爵には咎められたのではないですか。」
「ああ、会ってはいけないと何度も言われたよ。彼女は美しいが、父の血を引いているかも定かではないと言われていたから。実際異母弟は父に似ていたが、ジュリエットは彼女の母親に似ていたからね。まあ、血の繋がりがないのなら、彼女の引き取りを私がしても良いのかもしれない、とも思っていたが。」
ああ、だからなのか。彼は伯父に捨てられたのだ。シェイラは優秀な養子を、と彼に頼んだ。頼みはしたが、ただ漠然とした「優秀な」の意味だと十分彼もその条件に該当してしまう。
「次はお前だ」と刃物でも突きつけられているかのような感覚に、シェイラは、武装の必要性を感じて、震えた。
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