完璧な姉を困らせる不出来な妹は追放されました

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魅了される

婚約が決まっただけで、辺境に移ったリリアは穏やかに過ごせていた。姉の態度は気にはしていなかったものの、姉の婚約者から過分の親切を受けるのは痛くもない腹を探られるようで嫌だった。

とはいえ第二王子は此方を慮っての行いなので、断るのも不敬に当たり内心気が気ではなかった。

彼の妹であるカサンドラは別だ。彼女とは仲良くしてもらっているし、姉の様子を逐一報告してくれて、気遣ってくれている。仲の良い両親を見ている身として政略結婚になったとしても、いつかは自分も誰かと結婚するのだと漠然と思っていた。だけど顔合わせを行う度に姉が良いと言われ続けたリリアの自尊心は一回なくなった。

すぐに母が何かに思い至り、辺境伯の元からセドリックが来るまでは、リリアはすっかり自分に自信を失くしていた。

リリアの婚約者は辺境伯の四男であるセドリック。彼は姉から発せられる魅了の力を無効化し、リリアを姉の悪意から遠ざけてくれようとした騎士である。

「辺境にいる騎士なら魅了には耐性がありますのでおすすめですよ。」
母ににっこりと微笑んだ彼を貴方が良いと選んだのはリリアの方だ。

「貴方には婚約者はいらっしゃるの?」
「私は継ぐ家もない辺境伯の四男ですから、繋がろうとする奇特な者はいません。」

「本当に私で良いのですか?後悔しませんか?後で彼方が良いと言われると悲しいのでもう少し考えてからにしてはいかがでしょう?」

セドリックは和かな笑顔のまま、リリアに商品でも勧めるように対応する。

「貴方が相手になって下さるなら後悔などしません。」

セドリックは幼い子を見るような慈しむような目をして、リリアの意見を聞くと、もうそれ以上は誰かを勧めるようなことはせずに、承諾の意を示した。

リリアとセドリックは年齢的に釣り合うと言うのに話してみると、彼は年齢に見合わず、随分と老成した考え方をすることがわかった。

リリアも姉アリシアの関連で苦労しているが、セドリックもどうも似たような苦労をしているようだ。彼の兄、つまり辺境伯の三男はセドリックが好きで好きで堪らず何かと関わりを持とうとしてくるのだとか。

アリシアはリリアに対して悪意がありそうだが、同じようなことを100%の善意で行われると言うのも結構疲れるだろうな、とリリアは納得した。リリアは辺境に着いて真っ先にセドリックに魔道具をプレゼントした。

「認識を阻害するものは前に着けて、残念だけどあまり効果はなかったんだよ。」
そうは言いながらも着けてくれるセドリックはその後、リリアにお礼を言わずにはいられなくなった。

その魔道具は、厳密には認識阻害のものではない。彼の姿を見るときに見るポイントをずらすような効果を持つ。話を聞くに、兄は弟の母親似の瞳を気に入っているらしい。だから目に視線を向けないようにポイントをずらす魔道具をプレゼントした。

これはアリシアで実証済みである。彼女はリリアの笑顔を見るのが嫌いだったので笑った時に別の部分が印象に残るようにして、姉のイライラがたまらないように調整をしていたのだ。

認識阻害のポイントをずらす話をしたら、セドリックは感心し、リリアに作り笑いではない本来の笑顔を見せてくれた。

うん。リリアは三男の気持ちがよくわかる。セドリックの瞳には人を惹きつける力がある。でも魅了の力は感じない。姉とは違い、彼は彼自身の力で周りを魅了するのだ。

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