33 / 156
第一章 聖女イリス
愛の告白
しおりを挟む
既に陽は西に大きく傾いていた。夕暮れの一歩手前の時間帯を、クロードに連れられ馬車で移動する。すぐ後ろには、帝国兵の乗る馬が付く。わたしを見張っているらしい。
「その水晶、役に立ったかい」
クロードの視線が、わたしの胸元に向けられる。もらって以来、ずっと付けている小さな水晶が、西陽を受けてきらめいた。
「どうなんだろう。あまり、よく分からないわ」
無言のまま、クロードは水晶を見ている。これをもらった日のことを、懐かしく思い出した。もしかするとあの日々は、わたしの人生の中で、一番輝いた夏かもしれない。
馬車の揺れに身を任せていると、クロードが再び口を開いた。
「君からの手紙は、私に届かなかった。助けを求めてくれたのに、助けられなくてすまない」
「ううん。あの手紙、あまり、出来のいいものじゃなかったから、先生に読まれたら恥ずかしいわ。それに、助けてくれたでしょう?」
もしわたしが聖女でないと言ったら、この人は信じてくれただろうか。あの平穏な暮らしを続けたいと訴えたら、力になってくれたのだろうか。
「……先生は、自分を守る術を持ちなさいと言ってくれたわ。利用されるだけで終わる人間にはなってはいけないって。そうするつもりだったの。ディマといれば、なんだってできるような気がしていた。ずっと故郷で暮らすんだって、そう思ってた。だけど、全然、だめだったわ」
「思う通りに生きられる人間はわずかだ。よほどの幸運に恵まれないとね」
慰めてくれているんだろうか。彼はわたしの顔に視線を移した。その静かな瞳に浮かぶ思いは読み取れない。
「ねえ先生。わたしにかけられた闇の魔術は、少しは変化があったのかしら」
いや、とクロードは首を横に振る。
「強くも、弱くもなっていない。君という存在と同一であるかのように、ただ、そこにあるだけだ」
「魂も、まだ二つに見える?」
「初めから二つには見えない。ダブって見えるだけだ。重なり合い、ズレている」
それのどこが違うのか、わたしには分からない。
「わたしが聖女であることと、それは関係があるのかしら」
「関係は無いはずだが、君は特別な存在だから、私の予期しないことが起きている可能性はある。ただ、君を見たヘイブン聖密卿がおっしゃるには、複数人が君に魔術を行使したらしい。誰かがかけた闇の魔術を、別の誰かが防いでいる。上書きして魔術をかけた人物は相当な傑物に違いないだろうね。初めにかけられた魔術を利用し、君を守る術式に変えてしまったんだから」
「先生の話は難しくて、やっぱりよく分からないわ」
小さくクロードは頷いた。
「君の命を脅かすものではないことは、確かだ」
処刑場に現れた車椅子の人物を思い出し、わたしは言った。
「ヘイブン聖密卿――あの人は、ずっと車椅子なの? ローブを被っていて、顔さえ分からなかったわ」
正直、あの姿には驚いていた。
「歩行は可能だ。ただ、十年くらい前に、ひどい事故に遭ってから、体中に跡が残ってしまったと聞いている。だから体を隠しているんだ。
歩くよりも、ああやって移動した方が早い。事実、私が会う彼はいつもあのような姿だ。人前に素肌を曝すことはほぼ無い」
「言葉もいつも人づてに?」
「ああ、喉にも傷を負って、小声しか出ない。あるいは手話だ。だけどそれは、彼の信仰心や能力に影響はしないよ」
違和感はある。小説の中のヘイブン聖密卿の出てくるシーンに、あれほど目立つ特徴は書かれていなかった。この違いは、一体なに?
正体不明の闇が、すぐそこにあるようだ。
アレンが生き延び、エルアリンドが城から追放されたように、この世界と小説の世界では、ズレが生じているのだろうか。最たる例は、他ならぬこのわたしだ。イリスという少女に重なる、わたしの存在が、この世界に、歪みを生じさせている。
この世界に生まれた時から付き纏う不安の影が、急速に濃くなったように思え、クロードを見上げた。
「先生。先生は、イリスの味方でいてくれる? 困ったら、助けてくれる? わたしやディマや、お父様とお母様を、守ってくれる?」
いずれこの国の宗教の最高権力者になる彼が、守ると言ってくれたらどんなにいいか。懇願するような口調になってしまったけど、彼に拒む様子はなかった。
「いつだってそうするよ」
「約束して」
癖で、左手の小指を差し出す。クロードが反応しないから、半ば無理矢理彼の手を取り小指を重ねた。
「聞いたこともない風習だ」
「ディマとはいつもこうして約束するわ」
約束なんて、大した効力を持たない。そんなことは分かっていても、手を離して、ほんの少しだけ安堵した。
「先生が、いてくれて良かった。本当にありがとう」
クロードも微笑む。
「君は不思議だ。時々、変に大人びて見える。そこが奇妙に魅力的だよ」
「あら、口説いていらっしゃるの?」
「まさか。私は聖職者だ」
生真面目な返事に、こんな時にもかかわらず、笑いが漏れた。
◇◆◇
大聖堂の中、祭壇脇の小さな部屋に、ディマは司祭たちに見守られながら一人で座っていた。
「……ディマ! ディマ!」
わたしに気が付くとすぐにディマは立ち上がり、瞬く間に、強く抱きしめられる。
「イリス、会いたかった。ずっとイリスのことを考えてたんだ」
その体を、わたしも抱きしめ返した。ついさっき処刑場で見たばかりなのに、会うのが随分と久しぶりに思える。彼の体が小刻みに震えていることに、ようやく気がついた。死に、極限まで近づいたんだ。恐怖を感じないはずがない。
「ディマ、とても勇敢だったわ」
わたしが聖女であることはもう知れ渡っていて、司祭たちが涙を流しながらこちらを見ているから、居心地はかなり悪い。そう思っていると、「二人で話しなさい」と、クロードが、彼らを外に追いやった。
扉が鈍い音を立てて閉まると、二人だけの空間になる。
「……嫌だな。神学校になんて行きたくないよ。家族と離れたくない」
わたしの顔に、温かな水滴が落ちる。見上げると、ディマの頬に涙が伝っていた。
体を離すと、ディマの両手が、肩にかけられる。言い聞かせるように、彼は言った。
「寂しい時は僕を想って。僕も君を想うから。
悲しみに支配されそうな時は、僕の名前を呼んでくれ。僕も君の名前を呼ぶから。助けが必要なら、たとえ月にいたって駆け付ける。世界が滅んだって、僕は君の側に行く。
……イリスが好きだ。とても、好きだ。僕の全身全霊をかけて、君を愛してる」
まだ本当の恋も知らない、優しくて純粋なディミトリオスからの、それは愛の告白だった。
「わたしも、あなたを愛してる。いつだって、あなたのことを想うわ」
心が千切れてしまいそうに、痛かった。
彼は冷酷な悪役なんかじゃない。誰かを愛し守れる人で、かけがえのないわたしのたった一人の兄だった。
彼のことが大切で愛おしいと思うのは、彼に恋するイリスではなく、ディマと七年間を過ごした、わたし自身の心だった。
「クロード先生が言ってた。神学校で、僕が優秀で敬虔な信者だと認められれば、帝都にも戻ってこれるって。なるべく早く戻ってくる。それまで僕は、帝国と教会の従順な奴隷でいる」
そうしてディマは、ポケットから、何かを取り出した。綺麗に包装された、小さな箱のようだった。
「本当は、もっとちゃんと渡したかったんだけどさ。十歳の誕生日おめでとう」
受け取り、開けると金の指輪が入っていた。側面には、見事な模様が彫刻されている。季節ごとに領地に咲く花が、繊細なレースのように刻み込まれていた。
なんて素敵な贈り物なんだろう。箱ごと、指輪を抱きしめた。
「……すごく綺麗。誕生日なんて、すっかり忘れてた。ありがとう、本当に、ありがとう」
「お父様が金を買ってくれて、僕とお母様で、毎日少しずつ作ったんだ。全然気付いてなかっただろ、バレないように、苦労したんだよ」
指輪はわたしには少し大きくて、ディマは、わたしの首から水晶が下がる鎖を外すと、そこに指輪を通し、再び首に戻した。
「戻ってきたら、アリアを探す。アリアを見つけ出して、さっさとオーランドと恋に落ちてもらうんだ。それで僕らは故郷に帰って、帝都での出来事なんて、少しも思い出さないくらい幸福に暮らそう。心配しないで。約束しただろ。僕がいるかぎり、君を不幸になんてしやしない。今生の別れじゃないんだ。すぐにまた、一緒にいられるようになるよ」
「わたしも、従順な聖女でいる。アリアが現れても、騙すつもりなんて少しもなかった、可哀想な女の子だって、みんなに分かってもらうように。アリアが現れたら、すぐに身を引けばいいわ。そうしたら、オーランド様だって許してくれるはずよ」
それから両親の話をして、わたしたちはまた少し泣いて、ディマがクロードと共に旅立つまで、わたしは彼の側にいた。
来るかもしれない恐るべき未来に向けて、わたしたちができることは、ただ、立ち向かう覚悟を決めることだけだった。
そう、覚悟を決める。
もう迷わない。家族みんなで、また一緒に暮らすためだったら、なんだってやってやる。イリスが国に尽くす有能な人間であると帝国中に知らしめて、アリアが現れたとしても、処刑なんて誰にも考えさせないくらいに、愛される人間になろう。
そうしてあの領地に戻るんだ。それが希望で、夢だった。
「その水晶、役に立ったかい」
クロードの視線が、わたしの胸元に向けられる。もらって以来、ずっと付けている小さな水晶が、西陽を受けてきらめいた。
「どうなんだろう。あまり、よく分からないわ」
無言のまま、クロードは水晶を見ている。これをもらった日のことを、懐かしく思い出した。もしかするとあの日々は、わたしの人生の中で、一番輝いた夏かもしれない。
馬車の揺れに身を任せていると、クロードが再び口を開いた。
「君からの手紙は、私に届かなかった。助けを求めてくれたのに、助けられなくてすまない」
「ううん。あの手紙、あまり、出来のいいものじゃなかったから、先生に読まれたら恥ずかしいわ。それに、助けてくれたでしょう?」
もしわたしが聖女でないと言ったら、この人は信じてくれただろうか。あの平穏な暮らしを続けたいと訴えたら、力になってくれたのだろうか。
「……先生は、自分を守る術を持ちなさいと言ってくれたわ。利用されるだけで終わる人間にはなってはいけないって。そうするつもりだったの。ディマといれば、なんだってできるような気がしていた。ずっと故郷で暮らすんだって、そう思ってた。だけど、全然、だめだったわ」
「思う通りに生きられる人間はわずかだ。よほどの幸運に恵まれないとね」
慰めてくれているんだろうか。彼はわたしの顔に視線を移した。その静かな瞳に浮かぶ思いは読み取れない。
「ねえ先生。わたしにかけられた闇の魔術は、少しは変化があったのかしら」
いや、とクロードは首を横に振る。
「強くも、弱くもなっていない。君という存在と同一であるかのように、ただ、そこにあるだけだ」
「魂も、まだ二つに見える?」
「初めから二つには見えない。ダブって見えるだけだ。重なり合い、ズレている」
それのどこが違うのか、わたしには分からない。
「わたしが聖女であることと、それは関係があるのかしら」
「関係は無いはずだが、君は特別な存在だから、私の予期しないことが起きている可能性はある。ただ、君を見たヘイブン聖密卿がおっしゃるには、複数人が君に魔術を行使したらしい。誰かがかけた闇の魔術を、別の誰かが防いでいる。上書きして魔術をかけた人物は相当な傑物に違いないだろうね。初めにかけられた魔術を利用し、君を守る術式に変えてしまったんだから」
「先生の話は難しくて、やっぱりよく分からないわ」
小さくクロードは頷いた。
「君の命を脅かすものではないことは、確かだ」
処刑場に現れた車椅子の人物を思い出し、わたしは言った。
「ヘイブン聖密卿――あの人は、ずっと車椅子なの? ローブを被っていて、顔さえ分からなかったわ」
正直、あの姿には驚いていた。
「歩行は可能だ。ただ、十年くらい前に、ひどい事故に遭ってから、体中に跡が残ってしまったと聞いている。だから体を隠しているんだ。
歩くよりも、ああやって移動した方が早い。事実、私が会う彼はいつもあのような姿だ。人前に素肌を曝すことはほぼ無い」
「言葉もいつも人づてに?」
「ああ、喉にも傷を負って、小声しか出ない。あるいは手話だ。だけどそれは、彼の信仰心や能力に影響はしないよ」
違和感はある。小説の中のヘイブン聖密卿の出てくるシーンに、あれほど目立つ特徴は書かれていなかった。この違いは、一体なに?
正体不明の闇が、すぐそこにあるようだ。
アレンが生き延び、エルアリンドが城から追放されたように、この世界と小説の世界では、ズレが生じているのだろうか。最たる例は、他ならぬこのわたしだ。イリスという少女に重なる、わたしの存在が、この世界に、歪みを生じさせている。
この世界に生まれた時から付き纏う不安の影が、急速に濃くなったように思え、クロードを見上げた。
「先生。先生は、イリスの味方でいてくれる? 困ったら、助けてくれる? わたしやディマや、お父様とお母様を、守ってくれる?」
いずれこの国の宗教の最高権力者になる彼が、守ると言ってくれたらどんなにいいか。懇願するような口調になってしまったけど、彼に拒む様子はなかった。
「いつだってそうするよ」
「約束して」
癖で、左手の小指を差し出す。クロードが反応しないから、半ば無理矢理彼の手を取り小指を重ねた。
「聞いたこともない風習だ」
「ディマとはいつもこうして約束するわ」
約束なんて、大した効力を持たない。そんなことは分かっていても、手を離して、ほんの少しだけ安堵した。
「先生が、いてくれて良かった。本当にありがとう」
クロードも微笑む。
「君は不思議だ。時々、変に大人びて見える。そこが奇妙に魅力的だよ」
「あら、口説いていらっしゃるの?」
「まさか。私は聖職者だ」
生真面目な返事に、こんな時にもかかわらず、笑いが漏れた。
◇◆◇
大聖堂の中、祭壇脇の小さな部屋に、ディマは司祭たちに見守られながら一人で座っていた。
「……ディマ! ディマ!」
わたしに気が付くとすぐにディマは立ち上がり、瞬く間に、強く抱きしめられる。
「イリス、会いたかった。ずっとイリスのことを考えてたんだ」
その体を、わたしも抱きしめ返した。ついさっき処刑場で見たばかりなのに、会うのが随分と久しぶりに思える。彼の体が小刻みに震えていることに、ようやく気がついた。死に、極限まで近づいたんだ。恐怖を感じないはずがない。
「ディマ、とても勇敢だったわ」
わたしが聖女であることはもう知れ渡っていて、司祭たちが涙を流しながらこちらを見ているから、居心地はかなり悪い。そう思っていると、「二人で話しなさい」と、クロードが、彼らを外に追いやった。
扉が鈍い音を立てて閉まると、二人だけの空間になる。
「……嫌だな。神学校になんて行きたくないよ。家族と離れたくない」
わたしの顔に、温かな水滴が落ちる。見上げると、ディマの頬に涙が伝っていた。
体を離すと、ディマの両手が、肩にかけられる。言い聞かせるように、彼は言った。
「寂しい時は僕を想って。僕も君を想うから。
悲しみに支配されそうな時は、僕の名前を呼んでくれ。僕も君の名前を呼ぶから。助けが必要なら、たとえ月にいたって駆け付ける。世界が滅んだって、僕は君の側に行く。
……イリスが好きだ。とても、好きだ。僕の全身全霊をかけて、君を愛してる」
まだ本当の恋も知らない、優しくて純粋なディミトリオスからの、それは愛の告白だった。
「わたしも、あなたを愛してる。いつだって、あなたのことを想うわ」
心が千切れてしまいそうに、痛かった。
彼は冷酷な悪役なんかじゃない。誰かを愛し守れる人で、かけがえのないわたしのたった一人の兄だった。
彼のことが大切で愛おしいと思うのは、彼に恋するイリスではなく、ディマと七年間を過ごした、わたし自身の心だった。
「クロード先生が言ってた。神学校で、僕が優秀で敬虔な信者だと認められれば、帝都にも戻ってこれるって。なるべく早く戻ってくる。それまで僕は、帝国と教会の従順な奴隷でいる」
そうしてディマは、ポケットから、何かを取り出した。綺麗に包装された、小さな箱のようだった。
「本当は、もっとちゃんと渡したかったんだけどさ。十歳の誕生日おめでとう」
受け取り、開けると金の指輪が入っていた。側面には、見事な模様が彫刻されている。季節ごとに領地に咲く花が、繊細なレースのように刻み込まれていた。
なんて素敵な贈り物なんだろう。箱ごと、指輪を抱きしめた。
「……すごく綺麗。誕生日なんて、すっかり忘れてた。ありがとう、本当に、ありがとう」
「お父様が金を買ってくれて、僕とお母様で、毎日少しずつ作ったんだ。全然気付いてなかっただろ、バレないように、苦労したんだよ」
指輪はわたしには少し大きくて、ディマは、わたしの首から水晶が下がる鎖を外すと、そこに指輪を通し、再び首に戻した。
「戻ってきたら、アリアを探す。アリアを見つけ出して、さっさとオーランドと恋に落ちてもらうんだ。それで僕らは故郷に帰って、帝都での出来事なんて、少しも思い出さないくらい幸福に暮らそう。心配しないで。約束しただろ。僕がいるかぎり、君を不幸になんてしやしない。今生の別れじゃないんだ。すぐにまた、一緒にいられるようになるよ」
「わたしも、従順な聖女でいる。アリアが現れても、騙すつもりなんて少しもなかった、可哀想な女の子だって、みんなに分かってもらうように。アリアが現れたら、すぐに身を引けばいいわ。そうしたら、オーランド様だって許してくれるはずよ」
それから両親の話をして、わたしたちはまた少し泣いて、ディマがクロードと共に旅立つまで、わたしは彼の側にいた。
来るかもしれない恐るべき未来に向けて、わたしたちができることは、ただ、立ち向かう覚悟を決めることだけだった。
そう、覚悟を決める。
もう迷わない。家族みんなで、また一緒に暮らすためだったら、なんだってやってやる。イリスが国に尽くす有能な人間であると帝国中に知らしめて、アリアが現れたとしても、処刑なんて誰にも考えさせないくらいに、愛される人間になろう。
そうしてあの領地に戻るんだ。それが希望で、夢だった。
241
あなたにおすすめの小説
婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた
鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。
幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。
焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。
このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。
エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。
「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」
「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」
「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」
ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。
※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。
※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる