コロシアムでチャンピオンになった勇者は、気ままに魔王討伐にむかいます

ヒムネ

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新たなキャプテン

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「――おやめなさい、貴方のしていることはこの星をそのものを壊す行為」
「フンッ、御託は良い力をよこせ」
「この力はマジティリーの秩序を保つ力、それは出来ません」
「では力ずくで貰うとしよう!」
〔やはりこうなりますか……炎の精霊、わたしの心の声を聞いてください……〕
 風と地を手に入れた魔王は今度は水の精霊の元に現れた。だが水の精霊は魔王と対面したときに戦う覚悟を決めていた。それほどに魔王は歪んでいる……。

 ――イコーナのキャプテン・ヴィルコの夢のお告げと信じてコハーカ港にやって来たシャルル一行だったが、強風が吹き荒れ、店や宿屋や家には所々壁にヒビが入っている。
「ここ最近、気候が変じゃないか?」
「そうね、風は強いし、地震も感じて」
「この星の最後が近かったりして」
「トレチッ、そんな不謹慎こと言うもんじゃないわよ」
「……魔王の影響かも知れん」
「魔王が動き出したってこと?」
「もしかしたらだ……自然災害かもしれないし、断定は出来ない」
 『魔王を倒す』それがシャルルが掲げてきた目標であり、だからこそコロシアムで優勝して勇者になったのだ。もしレイジの言うことが万が一にもあるかもしれないと気を引き締めた。
「そうだね、それでイコーナ、どんな感じ?」
「……どんな感じと言われても、どうして良いかわからなくて……ごめんなさい」
「いやいいよ、急に言われても困るよね。ごめん」
「い、いえ」
「今日1日、コハーカの宿屋で休もう、また夢のお告げが来るかもしれないし」
 シャルルの提案はみんなが賛成で1日休むことにした。エリイとトレチはイコーナと宿でゆっくりとする事にして、シャルルはどうしようかと思ったらレイジが宿屋を出て行ったので話し掛けると、ついて行ってもよいと言ってくれた。
「どうして付いて来たがる?」
「イコーナはトレチ達と一緒だし、何となくね」
「そうか……」
 話してすぐ隣のカフェに寄る。
「ん、ここカフェだけど?」
「そうだ、カフェだ」

 何時もそんなに喋る方じゃないレイジがカフェ、なんてシャルルは意外な気がしていた。そう思いながらも中でコーヒーを飲むことにした。
「コーヒーうまいな~」
「シャルルは砂糖とミルク入りか」
「レイジは、ブラックだね、良く飲めるな~。もしかしてブラックオンリー?」
「いや、微糖や砂糖、ミルクも飲んでいる。あと豆もいろんな産地の物を飲んでいる」
「へ~、コーヒー好きなんだね」
「……オレは、いずれこういう自分の店を持ちたいと思っている」
「うっ!」
 コーヒーを吐き出しそうになるシャルルは、気合で止めた。
「ほっ、ほんとかっ!?」
「ああ、コーヒーは産地で味が変わるものだが実はもう一つ大事なことがある」
「なにそれ?」
「それは豆を選別することだ」
「選別って……こんな小さい豆一つひとつをっ!?」
「そうだ、腐った豆や虫が食った豆などを排除するその地道な作業によってコーヒーは美味く深みのあるコーヒーができるんだ……ズズッ」
「へ~、コーヒー豆に、カフェか~」
「それがオレの復讐……」
「え?」
「何でもない」
 レイジの最後の言葉は小声でよく聞こえなかったが『復讐』と聞こえたような気がした。
 コーヒーを飲み終わり宿屋に戻った二人、トレチ達と合流し今日一日夜もゆっくりして寝ることにした。久しぶりの様な休憩に満足のシャルル、その夜の事だった。

『――イコーナ、イコーナ』
「はっ……キャプテン……」
 真夜中にイコーナは目が覚めた。部屋は夜でも満月で綺麗だった。寂しさくも明るい光が不思議だった。
「……きれいな月」
 キャプテン・ヴィルコ達と乗っている時は月なんて当たり前だったのに、今は悲しくも懐かしい。
『イコーナ』
「キャプテンの……声……?」
 イコーナは声に導かれるように階段を降りて入り口を出る。そして周りを見渡した。
「えっ、あれって!?」
 イコーナはこれはもしやと大きく光る港の方に走った。近づくに連れ光は大きなり、もしやと思ったイコーナの予想は当たった。
「ロート・オーシャン号っ!」
 イコーナは急いで船に乗ったその船首へ、そこにはキャプテン・ヴィルコの後ろ姿があった。
『イコーナ』
「キャッ、キャプテンッ、生きてたんですね!」
『……いや、アンデッドの肉体は失っちまって今は魂だけさ』
「そんなっ!?」
『強くなったんだなイコーナ』
「え?」
『眼が違う、分かるぜ。これならお前に引き継がせられる。オレたちの魂を』
「魂って……」
『このロート・オーシャン号だ!』
「キャプテンッ、あたしっ!」
『……』
「あたし憧れてた。ずっと拾われてからキャプテンの背中を見て、あんな勇敢で楽しそうなキャプテン・ヴィルコの背中を」
『オレはなイコーナ、魔王に復讐するためにアンデッドとして蘇り、目的を果たせず死んじまった……惨めなゾンビだったさ』
「惨めじゃないですっ、キャプテンは……あたしにとってカッコいい、から」
『ははっありがとよイコーナ、でもオレも意外だったんだが実は後悔はしてねえんだ』
「なんで?」
『それはなイコーナ、強くなったお前がここにいるからなんだ』
「キャプテン……」
『これで安心して成仏できる』
「そんなっ、いっちゃうのっ!?」
『ああ』
「あたしっ……離れるなんて、いやだよっ」
『おいおい、お前はこのロート・オーシャン号を引き継ぐんだぜ。頼むよ
「え、?」
『もちろんだっ、これからはお前がこのロート・オーシャン号の2代目船長イコーナだ』
 キャプテン・ヴィルコは自分の海賊の帽子をイコーナに被せ、剣を渡す。
「これは、キャプテンの大事な」
『たのんだ……シャルルたち、と……魔王を……たお、せ……イコーナ』
「キャプテン……キャプテェェェーンッ……」

 消えたキャプテン・ヴィルコの魂、気がつけば太陽が微かに顔を覗いていた。その光が眩しいからかはたまた悲しいからか、イコーナはキャプテンから授かった帽子に顔と零す涙を隠した。大切な人の剣を抱きしめながら……。
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