24 / 40
小さな灯火
しおりを挟む
〔――だから言ったのよっ、やめとけって……こうなるってわかってたでしょっ、もうっ!〕
ソレイユは一人拷問部屋の声が聞こえる距離にいた。そこから聞こえるルナの殴られた痛みからの悲痛な叫びが、悲鳴が彼女の胸に突き刺さる。
〔どうしてっ、どうして逆らったりしたのよルナっ、あのままあなたがシャルルを焼却炉に捨ててれば……〕
本当にそうなのだろうか……。
あのまま毎年の勇者の様に焼却炉に捨てて良かったのか……。
あのいつもウキウキなシャルルの笑顔、あたし達に刺され時の顔が、とても悲しそうだった……。
「わたしは、卑怯だ……」
何故かそう思った。思わずにはいられなかった。壁に寄りかかると聞こえてくる魔王の殴る響き……シャルルはルナにとって何なのか、自分にとっても何なのかは今は分からない。ただ、エリイとして仲間になって楽しかった。その記憶が、今は虚しく頭を流れてくる。
――しばらくして音が聞こえなくなり殴り終わったのだと気が付いた。するとやはり階段を上る足音とともに魔王ディメントが姿を現した。
「……」
静かに敬礼をするソレイユ、そこに執事のカニングが彼女を見て止まった。
「やあ、キミはあのルナと共に勇者シャルルの仲間になったふりをしていたね」
「……はいっ、そうですが?」
「焼却炉に勇者の遺体が無かった理由、キミは知っているかな?」
明らかにこちらを疑っている。だがここはいつものように強気にでなくてはいけない。
「そうですか、それでルナが拷問を」
「知っているのか知らないのかを聞いているんだが?」
「知りません、わたしは彼女とは関係ないので」
「あのルナという魔族は勇者に肩入れしすぎた結果、嘘をついた。キミは大丈夫かね?」
「勇者に肩入れ、ですか。ありえません。わたしは彼女と違ってそういう事にはドライなので」
「……そうか、それはすまなかった」
謝ると執事カニングは城の角を曲がり去っていった。
「もう、無理みたいね……」
ソレイユは何かを思いカニングと違う方向に歩いていく……。
何かを思ったソレイユが消えた頃、イトの不思議な力によりシャルルはゆっくりと目を覚ました。
「ここは……オレん家……クリスばあちゃんっ!」
ガタンッ、『クリス婆ちゃん』という声が聞こえたその婆ちゃんとイコーナ走ってきた。
「シャルルさん!」
「はぁ、はぁ、目覚めたかシャルルッ!」
「あっ、イコーナにばあちゃん、やっぱりここはオレん家だったのか……イト?」
ずっと看病していたのかシャルルの膝にイトが疲れて眠っていた。
「……シャルル、頭の中を整理してよく思い出すんじゃ」
「……オレは……仲間に、裏切られた……」
「あのシャルルさん、その仲間って誰なんですか?」
「イコーナ……覚悟して聞いてくれ……エリイとトレチだ」
「そんな……」
「オレが倒れる時、少しだけ姿を覚えてる、二人は魔王の部下の魔族だった」
「エリイさんとトレチさんが……魔王の部下!?」
裏切られただけでも驚愕なのに愕然とするイコーナ。
〔……じゃあ、あたしが見たトレチさんは?〕
「シャルル、燃えとるかい?」
クリスが問うとシャルルは苦笑いをしながら首をゆっくり横に振った。
「もう……オレは……恐いよ」
「なにをだい」
「仲間って奴が……くっ」
辛そうに目を閉じシャルルは自分の恐怖を口にした。その言葉と一緒に身体は震えているのがわかった。
「シャルルさん……」
「ごめん、イコーナ……オレはもう……」
「シャルル、今は家でゆっくりとしていなさい……ゆっくりとね」
シャルルは黙って頷くとクリスがニッコリと笑顔でイコーナと部屋を出ていった。
「オレの……オレの炎は……もう……」
手のひらを見つめてながら、もういまの自分は炎の勇者を名乗れない気がした。
「う~ん……あっ、シャルル、さん」
「イト……」
「シャルルさんは、もう二度と戦えないのでしょうか」
「わからん……わからんがこのままでは、シャルルは魔王に勝てん」
「あたしは……いったいどうすれば……」
――静かになった拷問部屋には生命が著しく薄くなっていた。
「……おい、生きてるか……」
ルナを見るレイジだったがしかし返事はない。
「死んじまったか……」
「ん……まだ、生きてた……みたい」
「派手にやられたな」
「……」
「魔王は女だろうがお構い無しか」
「……」
「生きてて、よかったな……」
「死んでても、よかったのに」
「……どうしてそう思う」
上を向いたルナ、ジャランと鎖が鳴る。
「勇者を裏切って、魔王を裏切って……あたしの人生なんて、バカみたい……死んでもよかったのに」
「……どうして魔王を裏切った」
呆れたのか力が抜けたのか、座り込んだルナ。
「ふふ、そんなこと聞いてどうすんのよ」
「だって普通の神経じゃないだろ……魔王を裏切るなんてこと……」
「……わからない」
「ちっ、何とかしてここを出て復讐とシャルルの仇、両方叶えてやる……」
「彼なら生きてるわよ」
「ほんとうかっ!」
「ええ、心臓を刺したのに、なぜかね」
復讐心をあらわにしていたレイジに初めてニヤリと笑顔が戻っていった。
「そうかシャルル……よかった、なら何としてもここを出ないとな……」
〔あなたが羨ましいわよ、王子、いや、レイジ……わたしにはもう、彼を想う資格もないもの〕
すると真夜中に拷問部屋から微かな足音がした。
「お前はっ!」
「ソレイユ……」
「静かにして……逃げるわよ」
ソレイユは一人拷問部屋の声が聞こえる距離にいた。そこから聞こえるルナの殴られた痛みからの悲痛な叫びが、悲鳴が彼女の胸に突き刺さる。
〔どうしてっ、どうして逆らったりしたのよルナっ、あのままあなたがシャルルを焼却炉に捨ててれば……〕
本当にそうなのだろうか……。
あのまま毎年の勇者の様に焼却炉に捨てて良かったのか……。
あのいつもウキウキなシャルルの笑顔、あたし達に刺され時の顔が、とても悲しそうだった……。
「わたしは、卑怯だ……」
何故かそう思った。思わずにはいられなかった。壁に寄りかかると聞こえてくる魔王の殴る響き……シャルルはルナにとって何なのか、自分にとっても何なのかは今は分からない。ただ、エリイとして仲間になって楽しかった。その記憶が、今は虚しく頭を流れてくる。
――しばらくして音が聞こえなくなり殴り終わったのだと気が付いた。するとやはり階段を上る足音とともに魔王ディメントが姿を現した。
「……」
静かに敬礼をするソレイユ、そこに執事のカニングが彼女を見て止まった。
「やあ、キミはあのルナと共に勇者シャルルの仲間になったふりをしていたね」
「……はいっ、そうですが?」
「焼却炉に勇者の遺体が無かった理由、キミは知っているかな?」
明らかにこちらを疑っている。だがここはいつものように強気にでなくてはいけない。
「そうですか、それでルナが拷問を」
「知っているのか知らないのかを聞いているんだが?」
「知りません、わたしは彼女とは関係ないので」
「あのルナという魔族は勇者に肩入れしすぎた結果、嘘をついた。キミは大丈夫かね?」
「勇者に肩入れ、ですか。ありえません。わたしは彼女と違ってそういう事にはドライなので」
「……そうか、それはすまなかった」
謝ると執事カニングは城の角を曲がり去っていった。
「もう、無理みたいね……」
ソレイユは何かを思いカニングと違う方向に歩いていく……。
何かを思ったソレイユが消えた頃、イトの不思議な力によりシャルルはゆっくりと目を覚ました。
「ここは……オレん家……クリスばあちゃんっ!」
ガタンッ、『クリス婆ちゃん』という声が聞こえたその婆ちゃんとイコーナ走ってきた。
「シャルルさん!」
「はぁ、はぁ、目覚めたかシャルルッ!」
「あっ、イコーナにばあちゃん、やっぱりここはオレん家だったのか……イト?」
ずっと看病していたのかシャルルの膝にイトが疲れて眠っていた。
「……シャルル、頭の中を整理してよく思い出すんじゃ」
「……オレは……仲間に、裏切られた……」
「あのシャルルさん、その仲間って誰なんですか?」
「イコーナ……覚悟して聞いてくれ……エリイとトレチだ」
「そんな……」
「オレが倒れる時、少しだけ姿を覚えてる、二人は魔王の部下の魔族だった」
「エリイさんとトレチさんが……魔王の部下!?」
裏切られただけでも驚愕なのに愕然とするイコーナ。
〔……じゃあ、あたしが見たトレチさんは?〕
「シャルル、燃えとるかい?」
クリスが問うとシャルルは苦笑いをしながら首をゆっくり横に振った。
「もう……オレは……恐いよ」
「なにをだい」
「仲間って奴が……くっ」
辛そうに目を閉じシャルルは自分の恐怖を口にした。その言葉と一緒に身体は震えているのがわかった。
「シャルルさん……」
「ごめん、イコーナ……オレはもう……」
「シャルル、今は家でゆっくりとしていなさい……ゆっくりとね」
シャルルは黙って頷くとクリスがニッコリと笑顔でイコーナと部屋を出ていった。
「オレの……オレの炎は……もう……」
手のひらを見つめてながら、もういまの自分は炎の勇者を名乗れない気がした。
「う~ん……あっ、シャルル、さん」
「イト……」
「シャルルさんは、もう二度と戦えないのでしょうか」
「わからん……わからんがこのままでは、シャルルは魔王に勝てん」
「あたしは……いったいどうすれば……」
――静かになった拷問部屋には生命が著しく薄くなっていた。
「……おい、生きてるか……」
ルナを見るレイジだったがしかし返事はない。
「死んじまったか……」
「ん……まだ、生きてた……みたい」
「派手にやられたな」
「……」
「魔王は女だろうがお構い無しか」
「……」
「生きてて、よかったな……」
「死んでても、よかったのに」
「……どうしてそう思う」
上を向いたルナ、ジャランと鎖が鳴る。
「勇者を裏切って、魔王を裏切って……あたしの人生なんて、バカみたい……死んでもよかったのに」
「……どうして魔王を裏切った」
呆れたのか力が抜けたのか、座り込んだルナ。
「ふふ、そんなこと聞いてどうすんのよ」
「だって普通の神経じゃないだろ……魔王を裏切るなんてこと……」
「……わからない」
「ちっ、何とかしてここを出て復讐とシャルルの仇、両方叶えてやる……」
「彼なら生きてるわよ」
「ほんとうかっ!」
「ええ、心臓を刺したのに、なぜかね」
復讐心をあらわにしていたレイジに初めてニヤリと笑顔が戻っていった。
「そうかシャルル……よかった、なら何としてもここを出ないとな……」
〔あなたが羨ましいわよ、王子、いや、レイジ……わたしにはもう、彼を想う資格もないもの〕
すると真夜中に拷問部屋から微かな足音がした。
「お前はっ!」
「ソレイユ……」
「静かにして……逃げるわよ」
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
魔王城の清掃係ですが、ラスボスに懐かれて世界を磨くことになりました
由香
恋愛
異世界に転移したら、なぜか魔王城の清掃係に就職していました。
巨大な玉座、血のついた回廊、禍々しい装飾品の数々。
今日も黙々と床を磨いていたら――
「お前の磨いた床は、よく眠れる」
恐怖の象徴と名高い魔王様に懐かれました。
見た目は完全にラスボス。
中身はちょっと不器用で、独占欲強めの努力型。
勇者は帰還の道を示し、魔王は隣を選べと願う。
光と闇のはざまで、選ぶのは――ただの清掃係。
戦争よりも、まず床。
征服よりも、まず対話。
これは、世界最強の存在に溺愛されながら
世界平和を“足元から”始める物語。
甘くて、少し熱くて、ちゃんと選ぶ恋。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる