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夜の池
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『今日は花火あるから一緒に観に行きたい人』
『いく』
『行きまするん』
「今日は用事があるから見に行けない・・・っと、ふぅただでさえ高校とグループLINEで一緒なのにこれ以上一緒なんてごめんだぜ」
愚痴りつつたどり着いたのは人気のない林に囲まれた池のほとり、まもなく始まる花火を静かに穏やかに観ることが出来るだけでなく西と東それぞれ別の花火を堪能できる隠れスポット。
「6時58分そろそろだな、スマホの電源は切ってと」
今日は雲ひとつない紫色の空の東側を眺めていると花火が一発、二発と遅れて大きな破裂音がなる。
「・・・癒やされる」
耳に響く花火がオレの常日頃の疲れという波を穏やかな海にする。ほぼ毎日つきあわされる仲間のコミュニケーションと逃げ場のないネットワークには日々ストレスが溜まって心身が疲れてた。だからオレは夏恒例の花火を静かに過ごしたいと思い毎年夏休みにはここに来る。
「はぁーっ・・・あ、一旦終わりか」
ほんとうに何か最近疲れたなと腰を下ろして体育座り。どうして子供ってこんなに大変なんだろう。どこまで頑張ればいいんだろうか、テストやらスポーツやらと高1になってもまだ2年3年とあるしその間に友だちとの付き合いも続けなきゃいけない、
「はぁ~、ため息も付きたくなるよ・・・ほんとに」
下を向くと今度は大きな牡丹の花火が鳴ったのでまた顔を上げ、また癒やされる。
「花火って大きいよな・・・ん」
気配のような気がした。毎年この時間に人が居ることはないのだがと右に向いたら乗用車くらいの距離にショートカットの女の子が花火を観てた。オレと同い年っぽいけど見たことのない制服、他校か。ここに気付いた人が現れたって思っていたら向こうも気がついてオレはすぐ空を見上げた。
だけど視線を感じる。
じっと空を見上げて体感では5分くらい、でもまだ見られてる気がした。
まだ見てる・・・このままじゃ花火に集中が出来ない。しかたないと、
「こ、こんばんは」
オレは挨拶をしたらなにやら相手の女の子は少し驚いてる顔をしてるような。
「わたしが・・・こ、こんばんは」
話す言葉も見つからず沈黙、そりゃするよ他人だもん。でも挨拶したしこれでいいだろ。そのとき大きな花火の音、と同時に明かりで互いの顔がはっきりと見えた。
「よ、よくここに来るんですか?」
「え、ここに・・・来るっていうかなんていうか・・・はい、あの花火綺麗ですね」
「柳ですか、そうですね」
「やなぎ? あれ柳っていうんだ」
どうやらこの子は花火の種類を知らないみたいだとこのときオレは花火自慢スイッチが入って彼女に色々と説明してしまう。
「――あれは千輪菊ってやつで」
「へー、花火に詳しいんですね」
「ってごめん、説明しちゃって」
「うんうん、教えてくれてありがとう」
「・・・あのさ、オレ、津西 大輔、君どこの学校の生徒?」
「あ、そっか~そうだよね・・・私は仁藤 葵、じつは・・・幽霊なの」
花火の話で盛り上がった熱が一気に冷めた。幽霊って~・・・よく見りゃ彼女の膝から下の足がない、え、どうしよう、これはもしかしてピンチかも。
『いく』
『行きまするん』
「今日は用事があるから見に行けない・・・っと、ふぅただでさえ高校とグループLINEで一緒なのにこれ以上一緒なんてごめんだぜ」
愚痴りつつたどり着いたのは人気のない林に囲まれた池のほとり、まもなく始まる花火を静かに穏やかに観ることが出来るだけでなく西と東それぞれ別の花火を堪能できる隠れスポット。
「6時58分そろそろだな、スマホの電源は切ってと」
今日は雲ひとつない紫色の空の東側を眺めていると花火が一発、二発と遅れて大きな破裂音がなる。
「・・・癒やされる」
耳に響く花火がオレの常日頃の疲れという波を穏やかな海にする。ほぼ毎日つきあわされる仲間のコミュニケーションと逃げ場のないネットワークには日々ストレスが溜まって心身が疲れてた。だからオレは夏恒例の花火を静かに過ごしたいと思い毎年夏休みにはここに来る。
「はぁーっ・・・あ、一旦終わりか」
ほんとうに何か最近疲れたなと腰を下ろして体育座り。どうして子供ってこんなに大変なんだろう。どこまで頑張ればいいんだろうか、テストやらスポーツやらと高1になってもまだ2年3年とあるしその間に友だちとの付き合いも続けなきゃいけない、
「はぁ~、ため息も付きたくなるよ・・・ほんとに」
下を向くと今度は大きな牡丹の花火が鳴ったのでまた顔を上げ、また癒やされる。
「花火って大きいよな・・・ん」
気配のような気がした。毎年この時間に人が居ることはないのだがと右に向いたら乗用車くらいの距離にショートカットの女の子が花火を観てた。オレと同い年っぽいけど見たことのない制服、他校か。ここに気付いた人が現れたって思っていたら向こうも気がついてオレはすぐ空を見上げた。
だけど視線を感じる。
じっと空を見上げて体感では5分くらい、でもまだ見られてる気がした。
まだ見てる・・・このままじゃ花火に集中が出来ない。しかたないと、
「こ、こんばんは」
オレは挨拶をしたらなにやら相手の女の子は少し驚いてる顔をしてるような。
「わたしが・・・こ、こんばんは」
話す言葉も見つからず沈黙、そりゃするよ他人だもん。でも挨拶したしこれでいいだろ。そのとき大きな花火の音、と同時に明かりで互いの顔がはっきりと見えた。
「よ、よくここに来るんですか?」
「え、ここに・・・来るっていうかなんていうか・・・はい、あの花火綺麗ですね」
「柳ですか、そうですね」
「やなぎ? あれ柳っていうんだ」
どうやらこの子は花火の種類を知らないみたいだとこのときオレは花火自慢スイッチが入って彼女に色々と説明してしまう。
「――あれは千輪菊ってやつで」
「へー、花火に詳しいんですね」
「ってごめん、説明しちゃって」
「うんうん、教えてくれてありがとう」
「・・・あのさ、オレ、津西 大輔、君どこの学校の生徒?」
「あ、そっか~そうだよね・・・私は仁藤 葵、じつは・・・幽霊なの」
花火の話で盛り上がった熱が一気に冷めた。幽霊って~・・・よく見りゃ彼女の膝から下の足がない、え、どうしよう、これはもしかしてピンチかも。
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