〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ロング―

ランク城とラバーグ城

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「皆のもの、ロベリー王女からの御言葉である」


 騎士団長の声が響くとともに皆ロベリーの方を向き整列する。熱い視線が緊張を飲み込み背筋を伸ばして姿勢を正すと、


 
わたくしは争いをするつもりはありません」



 王女の第一声に雰囲気が変わり話は続く、



「いま、突然このような事を言うのはおかしいのかもしれません。でも私は、皆さんもご存知の通り母を戦争で失い、その時の気持ちは胸を貫ら抜かれる思いでした。あんなに優しかった母なのに······。そんな母のためにも国民のためにも、戦をしないで終わらせたいんです。ご協力をお願いします」



 再び気合の歓声が起こり皆王女に改めて忠誠を心で誓う。
 そんな活気の中「ロベリー様」とラドルフは彼女が乗る馬を引いて来た。


「アハッ、ロネリー、ありがとうラドルフ」


 美しい毛並みのロネリーに近付き顔を付けロベリーは首を優しく叩くと笑顔で喜んでいるようだ。
 ロネリーに搭乗しようと足を掛けると、何故か再び扉が開く、



「待ちなさい、ロベリー」



「お父様!」



 突然の王様の登場に周りの兵もラドルフ騎士団長もざわめく。体の弱った王は助手に肩を借りて、


「これからどこへ行つもりだ」


「いまこのランク城にラバーグ城の軍が押し寄せて来ています。だから」


「だから戦いに行くと言うのか?」


 ロベリーは目を閉ざし、


「······いえ、争わず説得して止めに」



「無理だ、出来る訳がない」



「王様、無理をなさらないでください」


 助手が止めるが弱い体にムチを打つかの様に強く言い放つ、


「お前は戦争を甘く見ている。言葉で止まるものならメイもあのとき止められたはずだ」


 4年前の戦争も、ロベリーの母メイはニゲラニ城との海域をめぐる争いにより命を落としている。


「ではお父様は、このまま相手国の方が襲って来るのを放置せよと言いうのですか?」


 思わずこもった感情で言い放つ、その事は痛い程分かっているロベリーでも、



「私はお父様お母様のこの国を守りたいんです」



 話ながら馬に跨がり、


「行ってまいります」


「待てっ、ロベリーッ!」


 ロネリーに乗った娘は城下の町を駆け抜けて行く。


 その王女に続いていく兵達。


 だがラドルフは王に近付き、



「プログ様、ロベリー王女も成長しているのです」



 プログ王は娘の背中にメイの面影を重ね、


「ラドルフ、娘を頼む」


「はっ!」


 ラドルフも城下の道を進んで行った。



「ロベリー、死なないでくれ······」



 ランク城の城下町は淡いピンクにオレンジの家や店が建ち並ぶため町全体が柔らかい雰囲気、海岸に近い事からも漁業も盛んでぶり真鯛まだい、特にまぐろが人気である。


 そんな城下の町に何だなんだと国民は兵の命令で道を開け、ロベリー王女を戦闘に多くの兵の馬が駆け抜けて行く姿を確認すると、「ついに戦争か」「あんな若いのに戦うのね」と皆その空気を感じとり、また国の無事を祈る者、「ロベリーさま、がんばってー」と声援を送る子ども達もとまさに老若男女さまざまであった。


「ロベリー様、国民も貴女の勝利を期待してます」


 右隣で馬に乗っているラドルフの言葉に、


「はい、分かってます」


「勝ちましょう」



「いえ、止めたいです、何とか」



 その気持ちが強まるロベリーは不安を心にしまいそう誓う······。



 ロベリーが城下を出た頃、森林を先頭で走る2頭の馬に乗った黃緑髪の2人は後列に多くの兵の姿があり、



「もうすぐですね、プレナ姉さん」



 左の馬に騎乗した妹が話すと、



「ああ、必ず私達がなるんだ、··に!」


 誓った姉を必ず成就させると妹も同じく心に誓う。


 青空の下、移動して30分位が経ったロベリー達は、大陸から見て西方に馬を疲れさせないよう時に速度を下げながら荒野を進軍していた。


 馬の常歩なみあしで前進していると遠くの方で森林が見え始め、左右に別れた道があり右はゴルドバ城、左がニゲラニ城。そのためラバーグ軍はどちから現れるのかを警戒しなければならない。
 ロベリーや騎士団長、国に知識のある者達はどちらに来るかを考えてると、


「やはりゴルドバ城から」


「しかしロベリー王女、奇襲ということも」



 そう話していると、



 馬が地面を蹴る音がゴルドバ方面からして蜃気楼に2頭、後ろに3、4と続々とラバーグの兵達が姿を見せて約500人等がやってきた。



 ロベリー率いるランク城の兵達も馬を常歩で近づいて行く。



 ここに両国の王女がそろう。



 両軍は100メートル位の距離で止まり兵は横にずれていく、寒風が吹き息も白い中王女だけは互いに馬から降りて顔を見合わせる。



「······思ったよりも情報を掴むのが早いな、ランク城は」



 口を開いたのは前髪を右に分けた方のショートカットの姉のプレナ王女。



「······プレナ王女······まさかこんな形でお会いになるのは残念です」



以来ですねロベリー王女、あの時からお変わり内容で」



 丁寧な言葉遣い、でもロベリーは知っている。彼女は内に秘める強い意思を。



「プレナ王女、私は争いに来たのではありません。争わないために来たんです」



「争わないためですか、それはつまり降伏すると言う意味ですね?」



 腕を組み降伏を促してくる。



「違います、私とプレナ王女とで、ランクとラバーグ、国と国がより良い未来へと進むために話しに来ました。ですから闘争を望みません、軍を引いてくれませんか?」



 こんな争いは無意味にただ傷つき憎しみを生むだけだとプレナだってきっと分かっているはず。
 いや彼女も戦争により親や親戚を亡くしているのに分からないはずはない、だから自分と同じく悲しかったはずとロベリーは確信していた。



 目を閉じて聞いていたプレナが上まぶたを開き、ふっと笑みを浮かべ、



「それで、この呪いの様な時代をどうするというのか。ここ8年間で嘘のように各国の王、王女が戦争や紛争で亡くなり我が国も父と叔父、二人の王が死んでしまった。そしてこのオブスーン大陸による12の国も何故か皆王女だけになった。この意味は前にも話したはずだ」



········ですか」



 その言葉は円卓の間でも話題になりプレナだけに限らず他の国もそれを強く信じる者は少なからずいたのだ。


 するとこれまで黙って隣で聞いていたプレナ王女そっくりの女性が、



「ロベリー王女、私は妹のデナ。貴女も戦争により母を失った、だがもしその敵国と出会った時その相手と協力出来るのかっ?」



「え······そ、それ、は······」



 考えもしない言葉が返ってきた。



 いま目の前の国に因縁はないし、もし母を亡くした原因の国だったら自分はちゃんと話せるのか、信用出来るのか。下を向き迷うロベリーの姿を見てデナも眉尻が上がり、



「国とはそんな簡単な話ではない。身内を殺した国とも笑顔で話さなくてはならない時だってある」



 言葉が詰まり何も言えない。


「なのに貴女はそんな事も考えず我々に口先だけ協力、協力などと」


 えっ、と思わず顔を上げる。


「貴女の母、モルエス·ラル·メイ王女は優しさと意思を通す心の強さがあったと聞く」


「デナさん······」


 眉尻も段々と下がっていくロベリー、


「だが貴女は前王女に何も及ばないし、当てにもならない」



 戦う前に心を折られそうになり、その場から走って逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。



 あんな優しい母に及ばないのは自分が一番分かっていると手を震わせ、それでも父と国のためにと若くして王女になり前へ出る事にしたのに、


 それなのに······。


「デナが言った通りだ。そんな覚悟でこちらに協力しろなどとごめんだ」


 言葉が強くなるプレナに頭を上げロベリーは危機を感じ、



「ま、待ってっ、もっとちゃんと話をさせて下さいっ」



「だまれっ、お嬢様がっ!」



 プレナの声質をラバーグの兵士達も感じ構える。更にそれを感じたランク軍もロベリーを侮辱された事も重なり構え始め、



 そして、



「私に続け、行くぞぉぉぉっ!」



 プレナの強く生きた掛け声で兵士達が突撃して来た。



「行けっ、ロベリー様を衛る為、迎撃しろぉっ!」



 ラドルフ騎士団長も号令を掛けると、



「うおぁぁ―っ」



 兵士達も迎え撃つ。



 ランク国西の荒野にて、ランク軍とラバーグの戦いが始まってしまう······。
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