〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

文字の大きさ
8 / 54
プリンセス ―ロング―

動く王女たち

しおりを挟む
 右肩を出した桜色のドレスに、左胸の上にハナニラの花を付け、

「今、世界に不安を感じている皆様と、争う他の国々の方々にわたくしの想いをお話させて頂きます」


 城下街から老若男女の人が毅然とした姿のオメラ王女の言葉に対し真剣な眼差しになる。


「いま、この世界に混沌が押し寄せて来ています。その事により皆不安な日々をお過ごしだと思います。緊張感のます中、騎士や兵士の方々に感謝し、護りたい家族、恋人、友、子どものためにあえて離れ動いてくれています。私を含めた皆がそんなあなた方に感謝しています」


 デル·サージ城の騎士、兵士らにその声は伝わり涙を流す兵士の姿も。


「混迷で心弱まる心中、それでも国を信じている皆様に感謝し、その信じる想いが争いに打ち勝ち、それが戦争で家族を亡くした方々のせめてもの癒愛と感じています。デル·サージに住む人々は心で戦っています。そんなあなた方と私達は心を1つにすればどんな壁も乗り越えられます」


 それは他の国の家族を亡くした人への言葉でもあった。


「この混迷の時代を乗り越えた時、より良い未来が待っていることでしょう。次代の子も喜びになるとも思います。だからこそ」


 オメラ王女は1度は空を見上げ、



「だからこそ、私は戦争を仕掛ける国を大変心苦しく思うと同時に争を止めて頂きたく存じます」



 名指しこそ避けたものの、どこの国かは明らか。


「5年前、私はお母様を戦争で亡くしました。その時の哀しみを覚えています。この世界に自分が存在する意味を失い虚空を感じました。それでも私には王女として生まれた使命と戦争を無くすというお母様の想いがあります」


 国民にも前王女であるジル·ピ·カーナ王女を失った哀しみを知っていた。今のオメラ同様に争いを無くすことに尽力を尽くし亡くなり、その意思は今も彼女に強く受け継がれていのだ。


「私は争いを、戦争で解決する事を断固として認めません」


 オメラ王女の演説は終わると日に照らされる堂々とした姿と強い意志を身体で感じ湧き出る国民、それは即座に全ての国へと伝えられる。
 各国の王、王女は感心と勇気を貰い、また動じず関係ないなど思いは様々であった······。


 その想いに翌朝、また1人の王女を動かす······。


「あの若さで、素晴らしいわオメラ王女」


「では、オネリア王女」


 ウィン騎士団長を護衛にべオレ城から馬車は3時間を掛けムース城を越えてギトス城へとたどり着く。


 ギトス城は緑に囲まれ古風な城。土色の壁、大きく砦に囲まれた城が隣同士に2つあり、前扉から中へと入る。中も土色で自然と一体化して気持ちよさを感じ、アラベスクと呼ばれる装飾が美しい。噴水と薔薇の花の中庭に付き右へと進むと謁見の間へ、


「シリカ」


「来てくれたのね、オネリア」


 2人は中庭へと向かう。


「元気だった? シリカ」


「ええ、このまえ私の扉を変えてみたの」


 まぁ、と以前のシリカ王女の部屋の扉は彫刻が彫ってあり、『王女が右手で中指を立て、すぐ隣に人差し指と親指に変わる彫刻』が訳がわからず扉を変えたのだ。


 私の部屋の扉にもと『人差し指を交互にぶつけ合う様な彫刻』だったという。
 2人並んでいるとシリカは前に足を動かし薔薇を眺めると、前置きが終わりと彼女にオネリアは、


「······昨日のオメラ王女の演説の記事はお読みになって?」


 しゃがみながら、


「もちろんよ、御若いのに強い子ね」


「ええそうね。お母様を亡くして弱っていると思っていたけど、円卓の間、そして昨日の演説、彼女は立派に王女として成長しているわ。だから」


「だから?」オネリアの方を振り向き、


「私達に何か出来る事があると思うの」


「······それは、なに、オネリア」


 シリカの目の前まで近づき彼女の眼を見て反らすことなく言う、


「私達も、ビスカ城とニゲラニ城に行き争いを止めるよう説得するのです」


 それは極当たり前なやり方で当たり前だからこそより良く相手に伝わるもの。しかし、今この混迷の時にこそ一番難しい事かもしれない。だがそれを演説で行ったのがオメラ王女なのだ。


 だがシリカは目を閉じ、


「それは、無理かもしれないわ」


 シリカ、と表情は変えずともオネリアは納得してくれるとも思っていたため内心動揺していた。


「······どうして?」


「クイーン·ザ·セレブレイド」そう言い顔を上げ日に当たるが、すぐに雲に太陽は隠れてしまう。


「私は内心、それもあるのではないかと思い始めてきたの」


「この戦争は神の仕業と言いたいの?」


「わからない、でも、もしそうならここ8年間による王や王女達の死が、もし神によるものだとしとら」


「そんな事ない、戦争は全て人が起こす事。神という言葉に自身を隠して争いを起こしてるだけで、人間の仕業だわ」


 そう強く言葉を発するのは、オネリア自身が生まれた時から今までの48年間ずっと王族として生き、王女になり時代を観てきたからこその想いだった。


「そうは言ってもオネリア、何か確証はあるの?」


「いえ、まだなにも。ただ親友の貴女なら協力してくれると思ってたから」


「ごめんなさい、私はまだ心の中で混乱しているのかも知れない。もう少し様子を見守っていたい」


 再び日に当たるシリカに言葉で謝るとオネリアは、


「そう、残念だわ」とにこやかだが何処か寂しそうな瞳を閉じ足を帰りの道へと進んでいき再び出会う事を誓い馬車へと帰る。


 すると馬車と一緒に待っていた騎士団長が、


「どうでしたか、オネリア王女」


「ウィン······まだ彼女も混乱してるみたい」


 流石に落ち込む顔をする彼女に黙って話を訊きながらオネリア王女が先に馬車へと入りギトス城を離れた。


 ――その頃ランク城では、


「お父様、具合はどうですか?」


 父の様子を見ていたロベリーはベッドから父の体を起こす。


「ロベリー、すまない。お前に偉そうな事を言って、肝心の自分がこのざまだ」


「お父様そんな」


「私はあの時メイの気持ちを汲んであげた。結果そのせいでメイは······いっそ私も早く彼女の元に」


「お父様っ!」


 怒鳴るロベリーを見てすまん言い過ぎたと謝る父に、


「······お母様はきっと死んでしまった事を後悔してても自分の意思を貫いた事は、後悔してないはず」


 それを聞くと眉尻を下げ目を閉じてしまう父、亡くした妻の事を考えて不安になったのか横になり天井を見ながら、


「もう、戦いには、行かないでくれ」


 何も答えられなかった。この先どうなるかは誰にも分からないし世界の状況で出たくなくとも国を護るためには出なくてはならないのだから。


「お父様は御自分の御身体のことだけを心配してください」


「約束してくれ、ロベリー」


 ロベリーはタオルを絞り終え父の頭にそっと乗せベッドの隣の椅子に座り、



「約束は出来ません」


「ロベリー!」


「もしまた何処かの国が攻めて来れば城を護らないと、それにオメラ王女の様にとまではいかなくとも何かわたくしにも」


「駄目だロベリー」


「ごめんなさいお父様」


 そう言って部屋を出て扉を閉める。


「お前は私に2人も家族を失えと言うのかロベリー!」


 父の声は聞こえていたし正直どうする事が正しいのかは分からない。このままオメラ王女の言葉にビスカ城やニゲラニ城が耳を傾けてくれれば何も争いは起きないのだが。


「どうでしたか?」


 聞いてきたのは父の面倒も見てくれているヤクナだった。


「お父様に、戦うなと言われてしまいました」


「······ロベリー王女」


 苦笑いのロベリー、しかし不安のなか朝日が昇るとともに新たにランク城を護るべく第2の戦いが始まってしまう······。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏
ファンタジー
魔法が当たり前、人間によく似た長寿の生命体は「神」と呼ばれる異世界、「デウスガルテン」。 かつて一つだった世界は複数の「箱庭」という形でバラバラに分かたれてしまい、神も人間も別々に生きている。 物語は、神のみが生きる箱庭「キャッセリア」から始まる。 ユキア・アルシェリアは、若い神の少女でありながら、神と人間が共存する世界を望んでいる。 それは神としては間違いで、失敗作とも役立たずとも揶揄されるような考え方。 彼女は幼い頃に読んだ物語の感動を糧に、理想を追い続けていた。 一方。クリム・クラウツは、特別なオッドアイと白銀の翼を持つ少年の姿をした断罪神。 最高神とともに世界を治める神の一人である彼は、最高神の価値観と在り方に密かな疑問を持っていた。 彼は本心を隠し続け、命令に逆らうことなく断罪の役割を全うしていた。 そんな中、二人に「神隠し事件」という名の転機が訪れる。 ユキアは神隠し事件に巻き込まれ、幼なじみとともに命の危機に陥る。 クリムは最高神から神隠し事件の調査を任され、真実と犯人を求め奔走する。 それは、長く果てしない目的への旅路の始まりに過ぎなかった────。 生まれた年も立場も違う二人の神の視点から、世界が砕けた原因となった謎を追うお話。 世界観、キャラクターについては以下のサイトにまとめてあります↓ https://tsukuyomiraika.wixsite.com/divalega ※ノベルアップ、カクヨムでも掲載しています。 【2023/12/19】 1~3話を約二年ぶりにリライトしました。 以前よりも世界観などがわかりやすくなっていると思いますので、読んでいただければ幸いです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...