〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ショート―

森林に立つ王女

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 その情報は兵によりランク城からヤクナに伝わり、


「そんな、こちらに向かっている間にだと?」


 自室にいたロベリーの耳にも入る。


「オネリア、王女······」


 ヤクナが彼女を見るとロベリーは歯を食いしばり震えていた。恐怖ではない悔やんでいるようだった。


「それとロベリー王女、実は······」


 ヤクナに伝えた兵士が恐る恐る口を開く、


「いま、町では、その······」


「どうしました? 話してください」



「はい、その、町でロベリー王女への不信感が漂っていてと噂になっております」



「悪魔だとっ!」


 ロベリー王女に対して何たる事だと兵士に怒りを見せたヤクナだが肝心の彼女は、


「悪魔······ですか」


 流石に悲しそうな顔を見せながら目をつぶり、


「いまの私には丁度よいのかも知れません」


「ロベリー王女!」


 また開くと目をキリッとして、


「たとえ悪魔と囁かれても、私は止めません。話した通り明日はターキシム城に向かいます」


 嘔吐しようが悪魔と言われようがロベリーの決意は変わらない。そう、全てはこの世界オブスーンのために······。



 そして日が変わり曇りの今日、ターキシム城と戦う日。今回はバイオレット王女のように奇襲するような人ではないターキシムのレスタ王女なのでお昼前にランク城を出たロベリーたちランク軍。
 馬で向かい通り過ぎる町の人たちの冷たい目線を感じた。


「また戦争?」


「今度はどの王女を殺す気なのかしら?」


「昨夜のオネリア王女もロベリー王女が殺したんじゃないの?」


 小声でもふと耳に入るものあり、下を向くロベリーにヤクナが馬で近づき、


「ロベリー王女、ご無事で?」


 はっ、と気づき頭を上げ、


「大丈夫です。大丈夫······」


 ヤクナに言っているというよりは自分に言い聞かせている様だった。見ている事しか出来ないヤクナやホセたちは彼女が何とも言えない針のむしろのよう。


 そんな気持ちのまま進むランク軍は、ランクの国を抜けニゲラニを抜けようとロベリーの馬を先頭に駆けていると、


「止まってっ!」


 突然のロベリー王女の合図に後方の兵たちは何が起きたのかと思いつつ止めた一方、前方の者たちは驚く。



「また、お会いしましたね。ロベリー王女」



「オ、オメラ、王女······」



 ニゲラニを抜ける国境の少しの森林に堂々と美しく立っていて、馬に引かれるかもしれないというのに止める事を分かっていたのか何も動じずにロベリーの目の前にその人は現れた。


 馬を止め降りたロベリーはオメラと目線を合わしながら、


「······皆さん、ここは私とオメラ王女2人にしてくれませんか」


 黙って言うことを聞くヤクナは引くよう命令を出しロネリーも連れ森林から2人が視認できるか出来ないかの距離まで戻っていった。


「御一人で会いに?」


「いえ、この私が来た森林の手前で兵を待機させています。御心配ありがとうございますロベリー王女、私はあなたと2人で話がしたかった」


「······そう言って頂いて嬉しいかぎりですが、失礼ですが私はもう」


「髪、お切りになったのですね。お似合いです」


「ありがとうございます。ですがこれは、髪を切ったのは、おしゃれではなく自身が変わるため、覚悟を決めるために、切ったまでです」


 覚悟、とオメラがつぶや見続けるロベリーの瞳から強い意思を感じ、


「······それは戦争をするため、ですか?」


「······いえ」


「なら、なんです?」


「クイーン·ザ·セレブレイドになるため······です」


 それを聞くと目線を下げたオメラ王女は、



「······うそです」



 ロベリーの答えを静かにしかし強く否定する。



「あなたは戦争や力で解決するような方ではない」


「······私は2人の王女を殺しました。それでも違う、と?」


 オメラはぎゅっとドレスを握る。



「それは、何かの間違いですっ、あなたはうそを言っているっ!」



 ロベリーの2人の王女殺害を必死に声を上げ否定するオメラ王女、それは彼女を心から信頼しているから。


「チュリン王女や昨日亡くなったオネリア王女の事も聞きました。あなたはそれと同じ事をしたというの」


 オメラの純粋な想い、しかし目そらさず、



「はい、私は同じ事をしました」



 まぶたと口を開き驚く顔を隠せない。


 それは怖さではなく心の衝撃によるもの、信じていた者に裏切られた者の哀しみの表情。


「オメラ王女······」


「では、この場で私も殺すの?」


 下を向いたオメラの顔から落ちたであろう光るものが、心痛むロベリーは、


「いえ」


「どうしてですか? あなたは全ての王女を殺すのなら私も」


「······あなたは、まだ······生かしておきます」


 まだ、生かしておく······つまりいずれ自分を殺しに来るという事に、前は近かった彼女が今は国境よりも遠くにまた揺るがないと感じた。


「そう······ですか、せっかくあなたとも友と呼べる方と思っていましたが非常に残念です」


「とも?」


「チュリン王女が亡くなる前、一緒にラバーグに登壇する日に言ってくれたのです。私の事を友達と、そしてあなたも友になってくれると」


「チュリンが、そんなことを······」


「ですがチュリンは間違っていたのね」


 何も言い返せないロベリーにも、この人はきっとチュリンの事で泣いたのだと目がうるうるとするも必死にこらえる。



「······ほんとうに、やめてはくれないのね」



「はい、やめる気はありません」



「······さようなら、ロベリー王女」



「オメラ王女も······さようなら」



 1人静かに自分が来た方向へと帰っていくオメラ王女を何とも言えない脱力感がロベリーにのしかかる。


 こうやって人が離れていくのだという感覚に。


 しかしロベリーはランク軍が待機する場所にいるヤクナに話し何故かまたその場を離れる事にする······。



 ロベリーの言葉を思い出すたびに落胆と涙を浮かべていたオメラは手で顔を覆い、



「ごめん、なさい、チュリン。私では、彼女を、あなたの友を、止められませんでした」



 自分の無力差を感じた。


 ガサッ、


 顔を上げ茂みから足音がして獣か何かと思い音をたてずにドキドキしながらもそっと歩くオメラ、


「オメラ王女」


「わっ······プレシャ、もう、驚きましたわ」


 現れたのはデル·サージ城のプレシャ騎士団長でオメラ王女を心配で少しの時間を置き向かっていたのだ。


「それでロベリー王女は、やはり」


「はい、残念でした。彼女は復讐に囚われているのかも知れません」


「そうですか、では我々も近いうちに」


「かも知れませんが、私は諦めません。きっと、きっと何か方法が」


 一度失敗してもけっして諦めないと両手を握るようにしながら強く思うオメラに、


「諦めませんねオメラ王女」


「はい、亡き友に情けない姿は見せられませんから」


「亡き友に会いたいですか?」


「もちろんです」



 スッと下がるプレシャは右の鞘からそっと剣を抜き、



「では、



「え······」の声と同じく剣先が、



 ザクッ、



 プレシャの剣は、



 地面に食い込んだ。



「なんだと?」



 オメラを目掛けて飛び込み彼女を救ったのは、



「ロベリー······どうしてっ!」



 ランク軍から再び離れオメラを監視していたロベリーだった。


「······これは驚いた、まさか貴女が現れるとは」


 殺意に満ちた眼でロベリーを、彼女もプレシャに対して、両者は睨み合う。


「なぜ付けていた?」


 オメラも気になるが黙したまま何も語らないロベリー、ただ分かることはオメラに手出しをさせまいと彼女の前に立っている事だけ。


「黙して語らぬか。まぁいい、ここで貴様も、死ねっ!」


 斬りかかるプレシャの剣にロベリーも右手の剣で受け止めたが、速さと力があると気づく。


「フフッ、なかなかやるようだな」


「くぐっ」


 受け止めている剣が徐々に力負けしていく。


「所詮は王女、ほらっ、どうした、どんどん強めていくぞ!」
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