〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ショート―

やわらかい緑風

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「お前達だけでなく、お前達の親たちも私の思惑通りに動いていたのさ!」


 声を強く発しつつそっと後ずさりし剣を拾おうと試みるシリカ。



「······なん、だと」



 皆が怒る中でも1番あらわにしたのは何時も冷静なレスタ王女だった。



「シリカッ、では父や母が死んだのは」



「たしかムース城とビスカ城と戦争したときだったな。あれも私がバルト、カイブ、ボルドに仕向ける様に命令したんだった」



 ドサッ、エマリンが膝を付く、



「ではお父様お母様が死んだのは······」



 エマリンだけでなくオメラも顔と眉を下げ黙ってしまう。
 シリカの暴露に謁見の間は一気に悲しみと憎しみの雰囲気に包まれ窓から指す光も何処か寂しく。


 そしてその間に剣を持ち再度ロベリーに斬りかかる。


「これが真実だっ、分かったなら黙って死ねぇーっ!」


「おのれっ、シリカッ」


 怒りのおさまらないレスタ、その目の前にガーネットは立った。


「どけっ、ガーネットッ」


「レスタッ、お前らしくもない」


「どけと言っている······私は、わたしは、いま自分を押さえきれない。ヤツを斬りたいっ!」



「······それ、だけですか?」



 怒る者、悲しむ者がロベリーの答えに振り向く。


「は? だから事実だと」


「そうやって我々を動揺させてその握った剣で私を倒せるとでも?」


「なっ!」


 シリカの言葉などまるで耳傾けないというようにロベリーが1歩2歩と進んで来たため勢いよく飛びかかった。



「こんのっ、小娘がぁぁぁーっ!」



 向かって来るシリカの剣を弾き中に舞、



「もうあなたの思い通りにはなりませんっ!」



 ゴツンッ、



 剣の柄でシリカの頭にぶつけると地面に泡を吹き気絶する。


「ロベリー、おまえ」


「ハァ、ハァ、レスタ王女、シリカ王女は我々を混乱させるために嘘をついた。そう思うんです」


 レスタはロベリーを眺め自身の冷静さを取り戻し溜息を吐いて、


「その可能性は大いにある、な」



「はぁぁぁーっ!」



 その殺意に満ちた大声に誰もが目を向けた。


 ロベリーは咄嗟に剣で、


 キンッ、


 受け止める。



「何故止める。ロベリィィィーッ!」



「あなたこそ、なぜ? 



 気絶したシリカに止めを刺そうとしたのはデナだったのだ。


「ソイツが全ての元凶だ。私は姉の仇をうつために今まで生きてきた。だから殺すんだっ、どけっ!」


「やめてっ、デナさん!」


「だまれエマリン王女っ、これは私達姉妹のこと。だからどけっ、ロベリーッ!」


 エマリンの言葉に従わず、今まで隠していた殺意を開放し邪魔するロベリーを鬼の形相で睨むが、その目もまた今までになく鋭い目付きになっていた。


「殺すつもりだったのですか?」


「ああ、そうだっ。なのになぜ邪魔をする!」


 黙するロベリーの答えを待つデナ、それを見守る王女達、


「わたしには、あなたが。だから、


 静かで強い意思で答える。ならばと、



「うわぁぁぁーっ!」



 デナは怒りのままロベリーに剣を向け激しく斬りかかった。



 剣が舞うデナ、反撃せず全て払うロベリー。



「私の想いがわかるだとっ、ふざけるなよロベリーッ!」



 ロベリーの目を見れば悲しみのようなものを感じるがそれでもデナは攻め続ける。


 シリカの次はデナと戦っているロベリーはひたすら彼女の気の済むまで剣を払い、



「ハァ、ハァ、な、なぜだ、どけロベリー」



 攻め続けたがついに傷と激しい攻撃をした事で手が止まり片膝が地面に付く。



「······気が、すみましたか」



「そんなわけ、ある、か。わたし、は」



「シリカ王女を殺したい気持ちは、分かります」



「ならば······なぜ」



「······つぎは?」



「つぎ、だと······」



 その問いにデナは一度下を向くと僅かな床の日の光が目を見て笑みを浮かべるとロベリーに、



「シリカを殺して、私は



「ええっ、デナ、さん······」



 言葉を聞いて動揺したエマリン。



「いいんだエマリン王女、シリカを殺せばこの世に未練は、ないっ!」



「やめてよ、デナ!」



 自分に涙を流すエマリンには目を向けず全ての人生を終わらす覚悟を決めて生きてきたデナ、彼女が目にした光とは何の汚れのない天の光。


「だからどいてくれ、ロベリー」



「······貴女も戦争により母を失った、もしその敵国と出会った時その相手と協力出来るのか······」



「そ、その言葉······」



「国とはそんな簡単な話ではない。身内を殺した国とも笑顔で話さなくてはならない時だってある······。私がデナさんと初めて戦場であった時に言われた言葉」


「······なにが、言いたい」


 一言一句同じ言葉を話すも冷たい瞳は変わらずロベリーは話し続ける。


「ウジウジとしたそんな覚悟でこちらから協力するなどごめんだ」


 それはデナではなく亡き姉のプレナの言葉だと気づいてロベリーを睨みつけ、



「うるさいっ、だまれロベリーッ!」



 思い出したくないと斬りかかるも剣で受け止められ、



「そして、あなたの姉のプレナ王女は私に言いました」



 キンッ、とデナの剣はロベリーの右側へと回転しながら地面に落ちデナの瞳に向かって強く言い放つ。



「『··!』」



 手が震え後ろに足を一歩動かす。



「あ、あ、ああ······ねぇ、さん」



 それはデナがロベリーの声とともに姉の幻、幻覚を見たためだった。


「まだ覚悟の足りなかった私に覚悟を教えてくれたのはあなたたち姉妹です。それなのに······」


 デナは下を向く。


「その大切なことを教えてくれたあなたが、亡きプレナ王女の妹であるあなたが······自国を捨て、姉の元へと行くというの。そんなの、私が許しませんっ」


 ロベリーの決意にはいつもプレナとデナの言葉があった。だからこそ自身の不甲斐なさと甘えにバーナやチュリンが亡くなった時、長い長髪と共に別れを告げたのだ。


「わたしは、わたしは常に姉さんが居たから強くなれたんだ。その姉ももう居ない、だから静かに姉と共に眠らせてくれっ!」


 土下座のような格好でロベリーにお願いし同時に涙を零すデナ。そのデナを見ながら、



「王女に、なってください」



「無理だ、私には」



「お姉さんとの想い出のラバーグ城を手放すのですか!」



「それは······」



「きっと生き残ったのがデナさんではなくプレナ王女だったら、手放さないはずです」



「······ああ、きっと姉さんなら、そうだろうな。でもわたしは」



「どんなに泣き叫んでも······亡くなった方たちは戻っては、きません」



 ロベリーも経験したこと。



「でもあなたは、もう1人じゃない」



 泣き崩れていたデナにそっと手を差し伸べてくれたのはエマリンだった。



「エマリン······王女」



「私になにが出来るのか分からないけど力になりますデナ。それと私のことはエマリンでいいです」



 姉の仇を取るためにずっと闇の中を1人駆け抜けてきたデナ、辛い気持ちを憎しみで隠して。だがふと、そんな彼女にとって自分を心配する純粋なエマリンが自然と美しく見えて、



「······エマリン、うっうっ」



 そっとエマリンの左手に触れた。



 その姿に安堵したロベリーも、



「こんどは、デナ王女の国を見せてください。そしてエマリン王女だけでなく我々にも協力させてください」



 エマリンだけではない。デナが周りを見渡せばそこには王女達の姿が、姉の姿がなくとも彼女にはこの戦いを共にした仲間がいたのだ。


 エマリンと一緒にデナは立ち上がり、


「ロベリー王女、わたしは······」


「いいんです。辛い気持ちは1人では耐えられませんから」


 温かい雰囲気に、



 声が風に乗り謁見の間に響く······。



「終わったのね、ロベリー」



 王女達が入ってきた開きっ放しの扉から、足音が聞こえ緑髪の女性が。



「あ、ああっ!」



「あっ、あなたはっ!」



 ロベリーとオメラは動揺を隠せずカランッと剣を落とす。



 他の王女達も決して現れるはずがない人の姿に驚く表情と、一瞬ときが止まったようだった······。


「おの、れ······ロ、ベ、リー······」
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