25日のスローライフ

ヒムネ

文字の大きさ
34 / 53

しおりを挟む
「――羽嵐先生」
「後光さん!」
 朱雀高校の正門前で待っていてくれたのか羽嵐先生がキョロキョロしていました。
「こんにちは」
「こんにちは、来てくれてありがとう」
「あの、私は何をすれば良いんですか?」
「とりあえず学校の体育館に向かって」
「羽嵐先生は?」
「私は連絡した他の生徒を待ってるから」

 どうやら私だけではない様なので、言われたとおりに体育館に向かいました。近づくと何やらザワザワしている様な声がしていましたが入って見ました。
「失礼します……これは」
 そこには体育館を埋めるような人の数、さらに行列が並んで何やら一人の女性が見ていました。
「ちょっと、待ってて」
 その女性は気がつくと診療している人に待ってもらうとこちらに向かってきました。距離が近づく度に私も誰だかわかりました。
「緑先生!」
「後光さん、待ってたわ」
 その方は、高校の時にお世話になった保険の養護教諭だった林緑先生でした。
「相変わらずのいい笑顔ね後光さん」
「緑先生、お久しぶりです。それで……この状況はいったい?」
「羽嵐を元気にさせたって聞いたわ」
「は、はい、その羽嵐先生から連絡があった時は驚きました」
「そうよね、それで見ての通り、ここにいるのはある病に掛かった病人なの」
「ある病、ですか」
「それは地球が終わる最後の病、エイジ……」

「――総理、今現在、地球人によるデモが4割、そのほとんどが宇宙船を飛ばせという意見です」
「ふぅ~っ、これだから下級国民は」
「それと、地球の発光現象が今だ増え続けております。さらに世界医師会が発表した地球最後の病エイジの患者数はこの残り10日から急激に増えているとのこと」
「ふぅ~そうかっ、それよりも」
「はい」
「私は明日、休みたい」
「かしこまりました。そのように手配します……」

 この朱雀高校の体育館にいる100人近くの人はエイジという病気だと緑先生は言いました。
「この病は、地球が亡くなるということが分かった人間が死を求めるという病なのよ、だからカウンセリング等をして気持ちを落ち着かせているんだけど」
「そうだったんですか」
 やはり地球が亡くなることでの病と言われて腑に落ちました。いままでいくつかの人はその病だった気がします。
「人手が足りなくてね」
「それで……では私は何をやれば? 普通の高校生なので医学の知識もないし」
「来たばかりの患者さんは並んでもらって時間がかかる、だからその間お話を聞いてあげて、後光さん出来る?」
「はい、お話しすれば良いだけならやります!」
「お願い!」
 そう言うと足早に診断に戻っていった緑先生、100人近いと思われる患者さんを診るなんて大変だと思いますが私も行動を開始します。

「――こちらに並んでください」
 噂を聞いた患者さんは羽嵐先生の誘導で並んでいます。その列を見ていると同じ制服の姿の学生を発見しました。
「すいません、もう少しお待ちくださいね~」
「この声!?」
「同じ学生の方ですか?」
「あんたは、後光一花」
「あなたは……前原灯まえはらあかりさん」
「こんなところで会うなんて、相変わらず人の懐に入るのがうまいわね」
「……」
「それで、何かしら?」
「あっ、そのっ、まだ並んで時間が掛かるので少しお話しと思って」
「お話? あたしは別にいいから他に行って」

 ショートで金髪の前原灯さん、私と同じクラスで同級生のおそらくは一番私を嫌っていたであろう人でした。私がいつものように高校で人に話しかけていたとき彼女に会いました。他の人と一緒で話しかけるも、答えてもらえず変わりに睨まれました。
「あの、私なにか悪いことしましたか?」
「存在が目障り」
 過去にその一言を言われてから、学校では前原さんだけには話しかけるのを止めていました。

「――聞こえなかった? いいって言ってるの」
「でもっ!」
「はあ?」
「でも前原さんがここに来たということは……病んでるんですよね?」
「……あんたには関係ない」
「かっ、関係はあります。いまはここを任されているから」
「……」
「だから、聞かせてください……」

「こっちに並んでください……ふうっ、人手が足らないわ」
「羽嵐先生」
「あ、蒼真先生」
「こっちは私が誘導します。あちらで羽嵐先生に呼ばれたという生徒が来ましたので、顔を出しに行ってください」
「そうですかっ、すいませんここはお願いします」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...