都市伝説ガ ウマレマシタ

鞠目

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拡散した人

保健室の天井

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 目を開けると白い天井が見えた。どこだっけ? この天井。私はベッドに寝ていてベッドの周りには白いカーテンが見えた。あ、保健室だ。知ってる場所でなんだかほっとした。
「お、気が付いた? 佐々木さん、落ち着いたかしら?」
 私が起き上がると、カーテンの隙間から保健室の里中先生が顔をのぞかせた。里中先生は若くてかわいい女の先生だ。とっても話しやすくて、男女両方から人気の先生。私もえりこも先生のことが大好きだ。
 里中先生の顔を見た瞬間、心の中の何かが弾けた。私の意思に関係なく涙が次から次へと溢れた。先生は黙ってベッドに座り私の頭を撫でてくれた。

 体中の水分がなくなるんじゃないかと思うぐらい泣いた後、私はやっと落ち着いてきた。そして里中先生に昨日からの出来事を話した。先生は私が話し終えるまで黙って聞いてくれた。
「大丈夫、佐々木さんは何も悪くないわ。あなたが悩む必要はないのよ」
 私が話し終えると先生は優しい顔で、でもきっぱりと言い切った。
「で、でも……」
「でもじゃないの」
 先生は有無を言わさぬ雰囲気で私を見つめる。私は何も言えなくなり俯いた。
「佐々木さん」
「は、はい」
 名前を呼ばれてびっくりした私は顔を上げた。何を言われるんだろう、少し不安になったけど先生はとってもかわいい笑顔で私を見ていた。
「ちょっとゆっくり私とお話しない?」
「はい、したいです」
「ありがとう。じゃあ、お話をする前に何か飲み物でもどうかな?」
「……え?」
 突然の提案に私は再びびっくりした。先生はいたずらっぽく笑っている。
「そんな声でおしゃべりしたら喉が痛くなっちゃうわよ」
「……へっ?」
 たくさん泣いた後にたくさん話した結果、知らないうちに私の声はかなりガラガラになっていた。

「一階の自動販売機で何か買ってこようと思うんだけど、どう? 私はミルクティーにしようと思うけど佐々木さんは何がいい?」
「え、いや、そんな自分で買いますよ。あ、でも財布は教室だ……」
「いいのよ、気にしないで。でも他のみんなには内緒よ」
 先生はふふふと笑いながら人差し指を唇の前に立てた。私はその顔を見てなんだか緊張がほぐれた。
「じゃあ、レモンティーで」
「わかった。じゃあちょっと待っててね。すぐに戻るから」
「はい」
 保健室を出る先生を見てから私はベッドに横になった。いろんな感情が頭の中を駆け巡っている。でも、ここで先生と話せば少しは整理できる気がする。
 今ところ嫌な予感はしない。ここは安全だと思う。私はそっと瞼を閉じた。



「友だちは大切にしなきゃいけないよ」



 いきなりすぐそばで里中先生の声が聞こえた。
 驚いて目を開けると目の前に真顔の先生の顔があった。今外に出たはずじゃ、そう言おうとした途端、先生に両手で強く首を絞められた。
 私は先生の手をのけようと必死にもがいた。先生の顔を見ると目を見開いていて明らかに様子がおかしい。そもそも先生が出て行った後、保健室のドアが開く音はしなかった。
 一瞬躊躇ったけれど私は思いっきり先生のお腹を蹴飛ばして先生の手から逃れた。
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