輝く草原を舞う葉の如く

貴林

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第二章 サザンソルト国

第九話 城内へ

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中に入ると広場になり、真ん中に大きな階段、その両脇を芝を敷き詰め、馬車道がその芝の外側を走っている。階段の先に白く塗られた石積みの城が姿を現した。
正面の玄関の両側に、ガラス張りの大広間があった。
サユミはあごが外れそうに見上げる。
「うわぁ、綺麗」
馬車は階段前に横付けされた。
ギムネラ王が、先に降りていて
「タル。皆さんをゲストルームに案内してくれるかな?」
「わかりました。お爺様」
正面の大きな扉を入ると、天井から煌びやかなシャンデリアが下がっている。
左右両側から上れる階段の踊り場の壁に、ギムネラ王の肖像画とその横に王妃、反対側に王太子と思われる青年がおりその横に王太子妃がいる。
さらに王太子妃の横にタルーシャ王女がいる。
額の大きさが身分の差を象徴するかのように大小様々に飾られている。
王太子と王太子妃の下でサユミが
「これが、タルのご両親?」
「うん、そうだよ。私が十歳の時に病で亡くなったけどね」
「そう、病で?」
紫色病ししょくびょうという、肌が紫色になる病気だよ」
「紫色病?」
「うん、あの暗雲の雲霧に蝕まれると掛かる病気なんだって」
「ええ?あの雲霧で」
うつむくタルーシャ。
「お爺様も同じ病なの」
「そうだったんだ」
広間を左に進むと来賓用の部屋があった。
小振りながらシャンデリアが下がっている。
窓側中央に暖炉があって、その両脇のガラス越しに城下が望める。
暖炉の前に四角く立派なマホガニー材のテーブルがあり、その周りに一人掛け用の椅子が四脚と長椅子が置かれていた。
テーブルの上に、先ほどのバナナを見つけるサユミ。
タルーシャが、それに気づきバナナを手に取ると、皮を剥いて白い果肉を頬張る。
それを真似るサユミ。
ハグ・・モグモグ。
落ちそうになる頬を抑えるサユミ。
「うんま、いんあお、あええいあお」
「は?」
皆がサユミを見る。
ゴクリと飲み込んでもう一度言う。
「みんなも、食べてみなよ」
騙された気分で皆も真似て食べてみる。
ハグ・・モグモグ。
んーーっと、皆が揃って頬を抑える。
タクトが、一気に食べ終わる。
「なんじゃ、こりゃ。こんなの初めてだ」
マリカも驚いている。
「お腹も膨れるし、なんなのこれ?」
「えと、たしか・・・ナババだったよね」
「違うよ。ナナバ・・じゃなかった?」
そんなやり取りがおかしくて、お腹を抱えて笑うタルーシャ。
「二人とも、間違ってるからね。バナナだよ」

コンコンと扉を叩く音。ガチャと扉が開く。
「失礼いたします。王女様、これを」
何かをタルーシャに渡すと執事がバタンと扉を閉じる。
タルーシャが、サユミに近づくと、白金製の板を五枚差し出してきた。
「はいこれ。通行証だよ」
見ると、百合の花がかたどられていて、裏を見るとギムネラとタルーシャの名とサユミの文字が刻まれていた。
「あ、ありがとう」
サユミは、札を皆に配った。
「これがあれば、領地内ならどこでも出入りしていいからね」
「うわぁ、すごい」
高々と持ち上げてキラキラする札を見るサユミ。
ナルセが札を首に掛けるとすかさず。
「無くすなよ。サユミ」
ムッとなるサユミ。
「無くしませんよーだ」
皮の紐に下がった札を首から下げるサユミ。
タルーシャが声をかける。
「マリカ、鍛冶場。見に行かない?」
「行く!」
即答するマリカ。
「こっちだよ」
扉を開けて出て行くマリカ。それに続くサユミとタクト。
ナルセとハヤネが顔を見合わせる。
行くか?と、首を傾げるナルセ。
うんとうなずくハヤネ。
二人も後に続いた。
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