蜃気楼の向こう側

１ 新たな出会い

謎の女性

駅の方へ、歩き出す真希乃。
今日は、遅くなったから、道場は無理だなっと、考えている。

「佐伯真希乃くん？」
声の方を振り向くと、大学生かその上くらいの女性が立っていた。
「はあ、そうですけど」
「やっぱり、はじめまして、鷺月麗美さぎつきれいみです。どうぞ、よろしく」
ネイルの塗られた大人を感じる手が握手を求める。
慌てて、手をズボンで擦ると差し出し握手をした。
「どうも、で？僕に何か御用ですか？」
「ううん、今は特に」
「今は？」
「今日は、挨拶だけでもと、思ってね」
「はあ・・」
「うふっ、また、そのうちね」
くるりと背を向けると肩越しに手を振る。
それに対してポカンと手を振る真希乃。
（なんだったんだ、あの女性ひと）

この時、背後にものすごい殺気を感じた。寒気がするような、悍おぞましい気配。

ゆっくりと、振り向くと、目の前に掌が

パーン！　風船が割れたような音が響き渡る。

また、これだ。

ぷりぷりと怒って先を行く彩花。
それを追う真希乃。
「誤解だって。待てよ、彩花」
彩花を追いながら振り返るが、先程の女性の姿は、もうなかった。

　　　　　　・・・

教室。
頬を摩る真希乃、まだ、余韻が残っていた。

「また、喧嘩ですか？」
嬉しそうに蓮華が、声を掛ける。
「そんなんじゃないよ。いてっ、まだ、ジンジンする」

「仲がいいのね」
「だから、そんなんじゃ」

バタバタと、駆け寄る足音。
「真希乃！大変」
彩花が、真希乃に近づく。
一瞬、身構える真希乃。

「真希乃。シノが、忍さんが・・」
今にも泣き出しそうな彩花を見て、真希乃は立ち上がっていた。