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3 帰郷 旅立ちの前に
真希乃と千景
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目の前に、我が家があった。
真希乃は、すごく懐かしく感じていた。
新聞配達のバイクが、静まり返った世界に、音を響かせていく。
「風呂入って、さっぱりするかな。皆も無事着いたかな?」
「真希乃兄ちゃん、おつかれ!」
後ろから、俊の声。
「おつかれ、俊ちゃん」
「絶対、見つけようね、お兄ちゃんを」
先に言われてしまったと、頭を掻く真希乃。
「もちろん、見つけるさ。約束する」
「うん、じゃあ、またね」
バイバイと、手を振り、お辞儀をする俊。
真希乃も手を振り返す。
なんだか、とても長い間、家に戻っていない気がした。
家に入ると、千景は、もう起きていた。
テーブルの椅子に腰掛ける千景。
向かい合うように、真希乃も腰をかける。
真希乃は、これまでのことを全て話して聞かせた。
・・
「そう、そんなことが・・夢でも見てるような話ね」
キッチンの椅子に腰掛ける千景。
「でも、本当なんだ。それに、父さんと大志は必ずいる」
「そうかもしれないけど、向こうは戦場なんだよね?」
「あ、うん」
「食料だって、あまりないんでしょう」
「・・・」
「疫病だってわからないわよ」
「・・・」
「そんなところに、簡単に、行っておいで。なんて、言えると思うの?」
「・・それは、そうだけど・・」
千景の言ってることに、間違いはなかった。
ナミリアも、なけなしの食材を使って、持てなしてくれたに違いないし、今になって、恥ずかしく感じる真希乃だった。
「でも・・」
「ダメよ!」
強い口調の千景。
ビクリと、する真希乃。
「でも、行かなきゃならないんだ」
「いいえ、行かせられません!」
千景が、威嚇するように声を荒げる。
真っ直ぐ、千景を見る真希乃。
「行かなきゃ駄目なんだ。どうしても」
「だから、どうして?」
テーブルをバンと叩いて立ち上がる千景。
「後悔したくないんだ。母さん」
真希乃も、負けじと立ち上がる。
真希乃の心からの叫びを、千景は聞いた。
驚いている。
千景が、ふっと、笑みを浮かべると真希乃を見る。
「何を言っても、ダメか・・」
「・・・わかったわ」
「?」
「真希乃が、そこまで言うなら、思うようにしなさい」
「え」
「何が正しいとか、間違いとかなんて、わからないけど、真希乃が決めてるのなら、母さんは、もう止めない」
「かあさん・・」
「どんな結果になろうと、それはあくまで結果。何かをしてもしなくても生まれるもの、それなら・・」
「それなら、結果なんか気にせず、やるなら、思い切りやらなくちゃダメよ」
「後悔ってね」
「後で悔いるから後悔なのよ。そんなもの、お爺ちゃんになってから、すること」
「行きなさい、真希乃!」
「かあさん・・・」
真希乃は、テーブルに手をつき、頭を下げている。
有り難かった。後押ししてくれるのが、嬉しかった。
真希乃は、立ち上がり、背を向けると遠くを見据える。
千景は、いつのまにか、広く大きくなった息子の背中を見て、誇らしく思った。嬉しいのに頬を涙が伝う。
「行ってきます」
「うん」
晴れ晴れとした、その表情に迷いはなかった。
真希乃は、千景を見る。
「ありがとう。かあさん」
バタン、ドアが閉まる。
涙を拭いつつ千景は、ゆっくり立ち上がる。
「まったく・・・」
「これだから、男の子は、嫌なのよ。・・あの人の息子だからかな」
仏壇に置かれた真の写真をみる千景。
「・・真希乃を、お願いしますね」
真希乃は、すごく懐かしく感じていた。
新聞配達のバイクが、静まり返った世界に、音を響かせていく。
「風呂入って、さっぱりするかな。皆も無事着いたかな?」
「真希乃兄ちゃん、おつかれ!」
後ろから、俊の声。
「おつかれ、俊ちゃん」
「絶対、見つけようね、お兄ちゃんを」
先に言われてしまったと、頭を掻く真希乃。
「もちろん、見つけるさ。約束する」
「うん、じゃあ、またね」
バイバイと、手を振り、お辞儀をする俊。
真希乃も手を振り返す。
なんだか、とても長い間、家に戻っていない気がした。
家に入ると、千景は、もう起きていた。
テーブルの椅子に腰掛ける千景。
向かい合うように、真希乃も腰をかける。
真希乃は、これまでのことを全て話して聞かせた。
・・
「そう、そんなことが・・夢でも見てるような話ね」
キッチンの椅子に腰掛ける千景。
「でも、本当なんだ。それに、父さんと大志は必ずいる」
「そうかもしれないけど、向こうは戦場なんだよね?」
「あ、うん」
「食料だって、あまりないんでしょう」
「・・・」
「疫病だってわからないわよ」
「・・・」
「そんなところに、簡単に、行っておいで。なんて、言えると思うの?」
「・・それは、そうだけど・・」
千景の言ってることに、間違いはなかった。
ナミリアも、なけなしの食材を使って、持てなしてくれたに違いないし、今になって、恥ずかしく感じる真希乃だった。
「でも・・」
「ダメよ!」
強い口調の千景。
ビクリと、する真希乃。
「でも、行かなきゃならないんだ」
「いいえ、行かせられません!」
千景が、威嚇するように声を荒げる。
真っ直ぐ、千景を見る真希乃。
「行かなきゃ駄目なんだ。どうしても」
「だから、どうして?」
テーブルをバンと叩いて立ち上がる千景。
「後悔したくないんだ。母さん」
真希乃も、負けじと立ち上がる。
真希乃の心からの叫びを、千景は聞いた。
驚いている。
千景が、ふっと、笑みを浮かべると真希乃を見る。
「何を言っても、ダメか・・」
「・・・わかったわ」
「?」
「真希乃が、そこまで言うなら、思うようにしなさい」
「え」
「何が正しいとか、間違いとかなんて、わからないけど、真希乃が決めてるのなら、母さんは、もう止めない」
「かあさん・・」
「どんな結果になろうと、それはあくまで結果。何かをしてもしなくても生まれるもの、それなら・・」
「それなら、結果なんか気にせず、やるなら、思い切りやらなくちゃダメよ」
「後悔ってね」
「後で悔いるから後悔なのよ。そんなもの、お爺ちゃんになってから、すること」
「行きなさい、真希乃!」
「かあさん・・・」
真希乃は、テーブルに手をつき、頭を下げている。
有り難かった。後押ししてくれるのが、嬉しかった。
真希乃は、立ち上がり、背を向けると遠くを見据える。
千景は、いつのまにか、広く大きくなった息子の背中を見て、誇らしく思った。嬉しいのに頬を涙が伝う。
「行ってきます」
「うん」
晴れ晴れとした、その表情に迷いはなかった。
真希乃は、千景を見る。
「ありがとう。かあさん」
バタン、ドアが閉まる。
涙を拭いつつ千景は、ゆっくり立ち上がる。
「まったく・・・」
「これだから、男の子は、嫌なのよ。・・あの人の息子だからかな」
仏壇に置かれた真の写真をみる千景。
「・・真希乃を、お願いしますね」
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