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3 帰郷 旅立ちの前に
俊と志織
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「俊!二度とこんなことは、しないでちょうだい!」
ベッドに腰掛ける俊に、志織が声を張り上げる。
膝に手を置く俊。
「はい、わかりました」
隣に腰掛ける志織。
「お兄ちゃんが、心配なのは、わかるけど、あなたまで、何かあったら・・・」
両手で顔を覆う志織。
「ごめんなさい、お母さん。もう、行かないから」
「わかってね、俊。あなたは、まだ、十三歳なのよ」
「・・・」
「あとは、警察に任せて、あなたは、普通に生活をしてちょうだい。いいわね?」
「・・はい」
俊の肩を抱く志織。
「あなたが心配だから、言ってるのよ」
「うん、わかってる」
「わかってくれたなら、いいのよ」
「あ・・あのね」
「ん?どうしたの?」
「仕事辞めるわけには、いかないよね?」
「何を急にそんなことを?」
「お兄ちゃんも、こんなだし、俊一人じゃ・・・」
弱音を吐くところだった。俊は、ぐっ堪えた。
「ううん、なんでもないよ。ママ」
あっと、俊は、思った。
「俊!ママって、呼ばない約束よ」
「あ、ごめんなさい」
志織は、立ち上がり、見下ろすように俊を見る。
「もう大人になるんだから、いつまでも、赤ちゃんみたいに言わないって、決めたわよね?」
「ほんと、ごめんなさい」
少し、イラッとする気持ちを、押し殺す志織。
「まあ、とにかく、学校もあるんだし、話は帰ってからにしましょう」
「はい、本当にごめんなさい」
パタンと、扉が閉まり、志織は、階段を降りて行った。
ふうっと、肩で大きくため息をつく俊。
そもそも、俊が弓道を始めたのも、母、志織の希望だった。
日本人らしく振る舞いなさい。が、志織の口癖で、弓道以外に、茶道もしている俊。
まだまだ、甘えたい年頃の俊にとって、母との時間は、もっと必要なことなのだ。だが、志織は、そんな気持ちを理解するでもなく、一人でもしっかりしなさい。と、独り立ち出来るようにすることだけを、俊や大志に教え続けてきたのだ。ご主人を早くに亡くし、女手一つで、苦労をして二人を育ててきた志織にとって、二人の独り立ちこそ、求めるところであった。
どんな苦難にも、立ち向かえるように・・・
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膝に手を置く俊。
「はい、わかりました」
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「・・・」
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「・・はい」
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「あ、ごめんなさい」
志織は、立ち上がり、見下ろすように俊を見る。
「もう大人になるんだから、いつまでも、赤ちゃんみたいに言わないって、決めたわよね?」
「ほんと、ごめんなさい」
少し、イラッとする気持ちを、押し殺す志織。
「まあ、とにかく、学校もあるんだし、話は帰ってからにしましょう」
「はい、本当にごめんなさい」
パタンと、扉が閉まり、志織は、階段を降りて行った。
ふうっと、肩で大きくため息をつく俊。
そもそも、俊が弓道を始めたのも、母、志織の希望だった。
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