56 / 96
4 恐頭山
珍毛大
しおりを挟む
「これから、移動します。初めてのところなので、真希乃くんは、私の手を握ってね」
「はあ・・・」
状況の読めない真希乃。
「京介くん、先に行ってあの爺さんを捕まえといて」
「了解っす。麗美さん来るって伝えれば、どこにも行かないっすから」
んじゃっと、京介が消える。
はあ・・・と、肩を落とす麗美。
「麗美さん、これから会うお爺さんって、そんなに怖い人なんですか?」
「ある意味、怖いわね。あのしつこさは・・・」
「しつこさ?」
よしっと、ガッツポーズをする麗美の気合が入る。
「とにかく、いくよ」
グニャリと二人が消える。
・
グニャリと、真希乃と麗美は、岩山らしきところに出てきた。
周りを見回す真希乃。
そこは、中国の武陵源のように、細長い岩山が立ち並び、雲が眼下に漂った場所だった。
真希乃は、息苦しさを感じ、喉に手を当てる。
「ここは、空気が薄いから、早く呼吸法を身につけてね」
さらりと麗美が言う。
「身につけろったって」
麗美は、何やら落ち着かないでいる。
「京介くん?いるの?」
呼びかけに反応がない。
「おかしいな、見つからなかったのかしら」
麗美は、足元に何やら気配を感じた。
「わしのこと、探しておるのかの?」
麗美の足の間で、杖を手に人が横たわっていた。
咄嗟に、麗美は、スカートではないが、股座を両手で隠すと飛び退いた。
「ちょちょちょ」
慌てる麗美の後ろから
「つれないの~、わしとの仲じゃというのに」
麗美のうしろのすぐ近くで、逆さまになって宙に浮き、麗美の髪を手に香りに酔いしれている。
「たまらんの~ふがふが」
「ひっ」
振り向き後退りして身構える麗美。
「珍毛大様、まずは、お話をお聴き下さい」
麗美は、言うと跪いた。
「よかろう、まずは、と言うことは、楽しみは、後で、言うことだな」
「あ、はは・・・」
半ベソの麗美。
(もう、帰りたいよぉ)
宙に浮いたままの珍毛大。
「そやつか、わしに預けたいという若造は」
「はい」
平伏する麗美。
それを見た真希乃。
(そんなにすごい人なんだ)
よく見ると、先ほどからこの老人は、浮いたまま平然としている。
麗美は、真希乃の頭を押さえ同じように平伏させた。
「ん~」
腕組みして、思案する毛大。
「いかがですか?」
麗美が問いかける。
「うむ、条件を飲めるなら、話を聞くがの」
ゴクリと、固唾を飲む麗美。
「条件とは?」
「今宵、一夜、床を共にするなら、考えても良いぞ」
ゴン!たまらず、毛大の頭を殴る麗美。
何もなかったように平伏する麗美。
余韻で、毛大の頭が揺れている。
毛大は、頭を押さえ天を仰ぐ。
「はて?何やら、ぶつかった気が・・・」
「・・・」
毛大は、ホッホッホと、笑うと
「冗談じゃよ、R15であるからして、そのようなこと出来る訳がなかろうに」
ホッとする麗美。
杖の先を麗美に向ける。
「良いかの。せめて、今宵、一夜、共に湯浴みをせい」
ゴン!毛大の頭が揺れる。
何事もないように平伏する麗美。
「冗談じゃ。わしはただ、乳繰りあえたら、それで良いのじゃ」
麗美は、平伏している。
毛大の頭が揺れている。
「冗談じゃ」
(まだ、来るか)
麗美は、毎度の事で、毛大が 冗談じゃ と、言ってるうちは、しつこくあれやこれや言うのを知っていた。
「せめて、せめてじゃ、膝枕とお酌で、手を打たぬか?」
それくらいなら・・・と、麗美はホッとした。
「仰せのままに」
「むむ・・・.良いのじゃな。そのまま、乳繰り合う運びに・・・」
毛大の頭が揺れる。
「さすれば、そのもの、名はなんと申す?」
真希乃が答える。
「真希乃と言います」
「では、マキノ。まずは、そちの力量を見させてもらうが、良いかの?」
「え?」
「立ち上がって、端っこに立つのじゃ」
「はあ・・こうですか?」
言われるまま、岩山の崖っぷちに立つ真希乃。
「これから、どうすれば?」
「でわの」
毛大は、真希乃の背中をトンと押した。
無論、真希乃は、崖から突き落とされたからたまらない。
うわあああああああ
手足をバタバタさせて、みるみる落ちていく真希乃。
声が、遠く聞こえなくなった。
「んむ」
麗美は、不安になった。
本来なら、すでに姿を現しているはずが、未だに現れなかった。
「ありゃ、ダメだの」
嘆く毛大。
空気が薄く、途中で失神したとも考えられる。
崖淵で、手をついて下を覗き込む麗美。
「そんな・・・」
ガクリと、項垂れる麗美。
毛大は、何やら気配を感じ取った。
「お・・戻ってきよった」
グニャリと空間が歪み、マキノが現れた。
ボタボタっと、マキノの腕の中から、桃がこぼれ落ちる。
「よかったら、一緒に食べませんか?」
毛大は、ニヤリとする。
「んっ、下界まで降りておったか」
「あ、はい。途中から下が見えたので、そのまま」
「で、桃を見つけ、盗んできたと?」
(・・・盗む?)
「はあ・・・そうなりますか」
「たわけ!」
毛大の気の圧力に押されて、よろめくマキノ。
麗美も、ホッとするのも束の間。
事態の重要さを理解していた。
「毛大様、申し訳ございません。きちんと、伝えておくべきでした」
真希乃は、キョトンとする。
「真希乃くん、あなた、とんでもないことをしてくれたわね」
「え?」
「その桃はね・・・」
崖の下の方から、真希乃でもわかる、ものすごい気を感じていた。
ババッと、羽根を広げて、美しい女神が現れた。
「まさか」
よくよく見ると、羽根と思ったそれは、羽衣だった。
「妾の、桃を取ったのは、どいつだえ?」
「あ・・・」
名乗り出ようとする真希乃を遮る毛大。
「すまんのう。美蝶華よ。わしの弟子の過ちでの」
「弟子?」
周りを見渡し、視線が真希乃で止まる。見透かすように見据える。
「ふん!くだらん」
「ほほ、くだらんか?」
蝶華は、そっぽを向いてしまう。
「くだらんわ、石ころ如き拾うても、無駄な事ぞよ」
毛大は、後ろで手を組み、やや下向きで思案する。
「原石掘り出すにゃ、割ってみんことにはの」
「ふっ、かけらも出やせぬわ」
「ほお、それは、残念じゃの。もし出たら、美に、譲っても良いと思っとったがの~」
はっと、する蝶華。
「なんと、妾に譲ってくれると申すか?」
「今は、まだダメじゃがの」
「ふん、くだらん」
チラリと、蝶華は、麗美を見る。
「ほお、これだけ、輝いておるのに、まだ、原石を持っておるな。珍爺、桃の代わりに、この女子でも良いぞよ」
毛大は、蝶華を静止する。
「いやいや、この女子は、すでに穢れておるでの」
麗美は、それを聞いて、否定するでもなく顔を赤らめた。
「ん~、ん?」
蝶華は、岩陰に、何やら気配を感じた。
毛大が、それに気づく。
「おお、忘れとったわ。なんなら、こやつで手を打たぬか?」
見ると、岩陰で、猿轡を噛まされ、後ろ手に縛られ動けずにいる京介がいた。
じぃっと、見る蝶華。
「つまらんぞよ」
毛大は、顎髭を撫で下ろすと
「ダメかの?」
「ダメに決まっておろうが」
「ん~」
「磨き過ぎて、珍色に染まり過ぎておるぞよ。そんなのつまらん」
「やはりの・・・さて、どうしたものかの」
蝶華が、何かを思い付いた。
「ならば、一年、妾に預けてみぬか?」
毛大が、大きく首を振る。
「いやいや、それはいかんの。いかんいかん」
蝶華は、毛大の異常なまでの、拒絶ぶりに驚いた。
「何故、そこまで、珍は拒むのだえ?たかが、一年であろうに」
チラリと、麗美を見る毛大。
「と、とにかく、今はダメじゃ」
蝶華は、その様子を見て、アゴを摘むと、麗美を見る。出るところと、引っ込むところ、メリハリのはっきりした体つきをしている。
「なるほど、そう言うことかえ・・・」
下を向く蝶華。
毛大が、そんな蝶華を見て
「どうしたんじゃ?顔が赤うなって、今にも破裂しそうじゃが」
ギロリと、蝶華は、毛大を睨みつける。
「未だに、若い女子に現を抜かしておるのかえ?」
毛大が、後退りをする。
「あ、いや、これはじゃの」
「妾の苦労も知らずに・・・」
毛大は、両手で蝶華を抑えるように手をかざす。
「まあまあ、ひとまず、落ち着かんかの」
「妾が、ここまで想いを寄せておるというに・・・」
「い、いかんの、これは」
毛大は、ゆっくりと後退りをする。
ジリジリと歩み寄る蝶華。
周りの小石がコトコトと、動き始める。真希乃と麗美は、足元の揺れで、足を掬われる。
「早よ、逃げ」
毛大は、手の甲でシッシッと払う仕草をする。
「こ、この、色、色爺がー」
蝶華の掲げた右手が、妙に歪み大気が吸い寄せられて見える。
身構える毛大。
逃げ出すには、遅過ぎた。身をかがめて衝撃に備える真希乃たち。
蝶華は、右手を振り下ろした。
パーン 風船の割れる音?
「はぶ・・・」
毛大の断末魔の声。
毛大は、グルグルと、体を捻り回転させながら、吹き飛ばされた。
ドサッ 珍は、チーン と、撃沈。
蝶華は、真希乃の腕を掴む。
「珍よ。マキノは、妾が預かるぞよ」
「あ、いや、それは・・・」
毛大は、頬を摩りながらマキノに手を差し伸べる。
「何か、言い分でもおありかえ?」
「・・・ないの」
毛大は、ガクリと肩を落とす。
「でわの」
蝶華は、毛大を真似た口調で言うと、真希乃共々姿を消した。
思わぬ展開に、三人は途方に暮れている。
「はあ・・・」
状況の読めない真希乃。
「京介くん、先に行ってあの爺さんを捕まえといて」
「了解っす。麗美さん来るって伝えれば、どこにも行かないっすから」
んじゃっと、京介が消える。
はあ・・・と、肩を落とす麗美。
「麗美さん、これから会うお爺さんって、そんなに怖い人なんですか?」
「ある意味、怖いわね。あのしつこさは・・・」
「しつこさ?」
よしっと、ガッツポーズをする麗美の気合が入る。
「とにかく、いくよ」
グニャリと二人が消える。
・
グニャリと、真希乃と麗美は、岩山らしきところに出てきた。
周りを見回す真希乃。
そこは、中国の武陵源のように、細長い岩山が立ち並び、雲が眼下に漂った場所だった。
真希乃は、息苦しさを感じ、喉に手を当てる。
「ここは、空気が薄いから、早く呼吸法を身につけてね」
さらりと麗美が言う。
「身につけろったって」
麗美は、何やら落ち着かないでいる。
「京介くん?いるの?」
呼びかけに反応がない。
「おかしいな、見つからなかったのかしら」
麗美は、足元に何やら気配を感じた。
「わしのこと、探しておるのかの?」
麗美の足の間で、杖を手に人が横たわっていた。
咄嗟に、麗美は、スカートではないが、股座を両手で隠すと飛び退いた。
「ちょちょちょ」
慌てる麗美の後ろから
「つれないの~、わしとの仲じゃというのに」
麗美のうしろのすぐ近くで、逆さまになって宙に浮き、麗美の髪を手に香りに酔いしれている。
「たまらんの~ふがふが」
「ひっ」
振り向き後退りして身構える麗美。
「珍毛大様、まずは、お話をお聴き下さい」
麗美は、言うと跪いた。
「よかろう、まずは、と言うことは、楽しみは、後で、言うことだな」
「あ、はは・・・」
半ベソの麗美。
(もう、帰りたいよぉ)
宙に浮いたままの珍毛大。
「そやつか、わしに預けたいという若造は」
「はい」
平伏する麗美。
それを見た真希乃。
(そんなにすごい人なんだ)
よく見ると、先ほどからこの老人は、浮いたまま平然としている。
麗美は、真希乃の頭を押さえ同じように平伏させた。
「ん~」
腕組みして、思案する毛大。
「いかがですか?」
麗美が問いかける。
「うむ、条件を飲めるなら、話を聞くがの」
ゴクリと、固唾を飲む麗美。
「条件とは?」
「今宵、一夜、床を共にするなら、考えても良いぞ」
ゴン!たまらず、毛大の頭を殴る麗美。
何もなかったように平伏する麗美。
余韻で、毛大の頭が揺れている。
毛大は、頭を押さえ天を仰ぐ。
「はて?何やら、ぶつかった気が・・・」
「・・・」
毛大は、ホッホッホと、笑うと
「冗談じゃよ、R15であるからして、そのようなこと出来る訳がなかろうに」
ホッとする麗美。
杖の先を麗美に向ける。
「良いかの。せめて、今宵、一夜、共に湯浴みをせい」
ゴン!毛大の頭が揺れる。
何事もないように平伏する麗美。
「冗談じゃ。わしはただ、乳繰りあえたら、それで良いのじゃ」
麗美は、平伏している。
毛大の頭が揺れている。
「冗談じゃ」
(まだ、来るか)
麗美は、毎度の事で、毛大が 冗談じゃ と、言ってるうちは、しつこくあれやこれや言うのを知っていた。
「せめて、せめてじゃ、膝枕とお酌で、手を打たぬか?」
それくらいなら・・・と、麗美はホッとした。
「仰せのままに」
「むむ・・・.良いのじゃな。そのまま、乳繰り合う運びに・・・」
毛大の頭が揺れる。
「さすれば、そのもの、名はなんと申す?」
真希乃が答える。
「真希乃と言います」
「では、マキノ。まずは、そちの力量を見させてもらうが、良いかの?」
「え?」
「立ち上がって、端っこに立つのじゃ」
「はあ・・こうですか?」
言われるまま、岩山の崖っぷちに立つ真希乃。
「これから、どうすれば?」
「でわの」
毛大は、真希乃の背中をトンと押した。
無論、真希乃は、崖から突き落とされたからたまらない。
うわあああああああ
手足をバタバタさせて、みるみる落ちていく真希乃。
声が、遠く聞こえなくなった。
「んむ」
麗美は、不安になった。
本来なら、すでに姿を現しているはずが、未だに現れなかった。
「ありゃ、ダメだの」
嘆く毛大。
空気が薄く、途中で失神したとも考えられる。
崖淵で、手をついて下を覗き込む麗美。
「そんな・・・」
ガクリと、項垂れる麗美。
毛大は、何やら気配を感じ取った。
「お・・戻ってきよった」
グニャリと空間が歪み、マキノが現れた。
ボタボタっと、マキノの腕の中から、桃がこぼれ落ちる。
「よかったら、一緒に食べませんか?」
毛大は、ニヤリとする。
「んっ、下界まで降りておったか」
「あ、はい。途中から下が見えたので、そのまま」
「で、桃を見つけ、盗んできたと?」
(・・・盗む?)
「はあ・・・そうなりますか」
「たわけ!」
毛大の気の圧力に押されて、よろめくマキノ。
麗美も、ホッとするのも束の間。
事態の重要さを理解していた。
「毛大様、申し訳ございません。きちんと、伝えておくべきでした」
真希乃は、キョトンとする。
「真希乃くん、あなた、とんでもないことをしてくれたわね」
「え?」
「その桃はね・・・」
崖の下の方から、真希乃でもわかる、ものすごい気を感じていた。
ババッと、羽根を広げて、美しい女神が現れた。
「まさか」
よくよく見ると、羽根と思ったそれは、羽衣だった。
「妾の、桃を取ったのは、どいつだえ?」
「あ・・・」
名乗り出ようとする真希乃を遮る毛大。
「すまんのう。美蝶華よ。わしの弟子の過ちでの」
「弟子?」
周りを見渡し、視線が真希乃で止まる。見透かすように見据える。
「ふん!くだらん」
「ほほ、くだらんか?」
蝶華は、そっぽを向いてしまう。
「くだらんわ、石ころ如き拾うても、無駄な事ぞよ」
毛大は、後ろで手を組み、やや下向きで思案する。
「原石掘り出すにゃ、割ってみんことにはの」
「ふっ、かけらも出やせぬわ」
「ほお、それは、残念じゃの。もし出たら、美に、譲っても良いと思っとったがの~」
はっと、する蝶華。
「なんと、妾に譲ってくれると申すか?」
「今は、まだダメじゃがの」
「ふん、くだらん」
チラリと、蝶華は、麗美を見る。
「ほお、これだけ、輝いておるのに、まだ、原石を持っておるな。珍爺、桃の代わりに、この女子でも良いぞよ」
毛大は、蝶華を静止する。
「いやいや、この女子は、すでに穢れておるでの」
麗美は、それを聞いて、否定するでもなく顔を赤らめた。
「ん~、ん?」
蝶華は、岩陰に、何やら気配を感じた。
毛大が、それに気づく。
「おお、忘れとったわ。なんなら、こやつで手を打たぬか?」
見ると、岩陰で、猿轡を噛まされ、後ろ手に縛られ動けずにいる京介がいた。
じぃっと、見る蝶華。
「つまらんぞよ」
毛大は、顎髭を撫で下ろすと
「ダメかの?」
「ダメに決まっておろうが」
「ん~」
「磨き過ぎて、珍色に染まり過ぎておるぞよ。そんなのつまらん」
「やはりの・・・さて、どうしたものかの」
蝶華が、何かを思い付いた。
「ならば、一年、妾に預けてみぬか?」
毛大が、大きく首を振る。
「いやいや、それはいかんの。いかんいかん」
蝶華は、毛大の異常なまでの、拒絶ぶりに驚いた。
「何故、そこまで、珍は拒むのだえ?たかが、一年であろうに」
チラリと、麗美を見る毛大。
「と、とにかく、今はダメじゃ」
蝶華は、その様子を見て、アゴを摘むと、麗美を見る。出るところと、引っ込むところ、メリハリのはっきりした体つきをしている。
「なるほど、そう言うことかえ・・・」
下を向く蝶華。
毛大が、そんな蝶華を見て
「どうしたんじゃ?顔が赤うなって、今にも破裂しそうじゃが」
ギロリと、蝶華は、毛大を睨みつける。
「未だに、若い女子に現を抜かしておるのかえ?」
毛大が、後退りをする。
「あ、いや、これはじゃの」
「妾の苦労も知らずに・・・」
毛大は、両手で蝶華を抑えるように手をかざす。
「まあまあ、ひとまず、落ち着かんかの」
「妾が、ここまで想いを寄せておるというに・・・」
「い、いかんの、これは」
毛大は、ゆっくりと後退りをする。
ジリジリと歩み寄る蝶華。
周りの小石がコトコトと、動き始める。真希乃と麗美は、足元の揺れで、足を掬われる。
「早よ、逃げ」
毛大は、手の甲でシッシッと払う仕草をする。
「こ、この、色、色爺がー」
蝶華の掲げた右手が、妙に歪み大気が吸い寄せられて見える。
身構える毛大。
逃げ出すには、遅過ぎた。身をかがめて衝撃に備える真希乃たち。
蝶華は、右手を振り下ろした。
パーン 風船の割れる音?
「はぶ・・・」
毛大の断末魔の声。
毛大は、グルグルと、体を捻り回転させながら、吹き飛ばされた。
ドサッ 珍は、チーン と、撃沈。
蝶華は、真希乃の腕を掴む。
「珍よ。マキノは、妾が預かるぞよ」
「あ、いや、それは・・・」
毛大は、頬を摩りながらマキノに手を差し伸べる。
「何か、言い分でもおありかえ?」
「・・・ないの」
毛大は、ガクリと肩を落とす。
「でわの」
蝶華は、毛大を真似た口調で言うと、真希乃共々姿を消した。
思わぬ展開に、三人は途方に暮れている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる