魔物を倒すよりお前を押し倒したい

貴林

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第二夜 出先で

もう、イッちゃうの?

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駿太のワイシャツの裾を掴んで離さないポニーテール頭のミサオ。
「どうしても、イッちゃうの?」
「ミサオが言うとドキッとするんだけど、もしかして誘ってる?」
「誘ってるよ。だって、したいもん」
(そんな可愛い顔で言わないで)
心が揺らぐ駿太は、これから出勤しなければならなかった。ネクタイを整えて、鞄を脇に抱える駿太。
「ごめんね、行ってくるからね」
ドアに手を伸ばすと裾を離さないミサオは、後ろから抱きついてきた。
「チビ太はしたいって言ってるよ」
えっへんと威張るチビ太をギュッと握るミサオ。
「おほっ」
振り返えって、ミサオを見る駿太。
「俺だって、ミサオとしたいよ。でも、仕事に行かないと」
下唇を突き出すミサオを映画では見ることが出来ない。駿太にだけ見せる顔だった。
駿太は、ミサオのおでこにキスをする。とても、愛おしかった。仕事なんか行きたくなかったが、食べていくためには仕方がなかった。
「帰ったら、たくさんしようね」
「ぶぅ・・」
むくれるミサオ。
「行ってくるね」
背を向ける駿太をツンツンするミサオ。
振り返ると、んっと唇を突き出すミサオ。
チュッと、軽く唇に触れると駿太は、ドアノブを掴む。
グイッと裾を引っ張られ後ろによろめく駿太。
ミサオの豊満な胸がクッションとなる。後ろから抱きつくミサオは、何も言わずに駿太の肩に顔を埋めている。
そんなミサオが愛おしくてたまらなかった。このまま、会社なんか休んでしまおうかと、気持ちにさせられる。
「シュンタ、他の女の子にデレデレしたら、ダメだからね」
「わかってる。しないよそんなこと。第一、俺のことなんか気にかける女の子なんていないんだから」
生まれてから二十二年、そういうこととは、まるで無縁であった。
ミサオがいきなり、駿太の耳に歯を立てた。
「あいて、何するんだよ」
真面目な顔をするミサオ。
「今のシュンタは違うよ」
「え?」
「絶対、女の子が放っておかない」
「絶対にそれは有り得ない」
「わかった、なら約束して?他の女の子に言い寄られてもデレデレしないって」
駿太は、片手を上げて宣言した。
「おお、いいとも、他の子とデレデレしません」
「ならいいよ。もし、デレデレしたら、私、帰るから。私、見てるからね」
テレビの中の映画。ミサオが来た所で、駿太を見ていた所。
「怖いこと言うなぁ」
駿太はミサオのあごを持ち上げると、唇に唇を重ねて深くキスをする。
チュッと音を立てて唇が離れる。
「あ・・」
目を閉じて酔いしれるミサオは微かに吐息を漏らす。
「行ってくるね」
笑顔の駿太。
「・・・いってらっしゃい」
渋々見送るミサオ。
バタン、音を立てて扉が閉まる。
ミサオは、寂しげに4Kテレビを見つめる。
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