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第七夜 ラート はじまり編

露華と夜多乃

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あと残るは、治癒師を探すのみ、さて誰に頼んだものか?
「俺が知ってる子で頼めそうな子といえば・・・」
同じ会社の、真希さん、いや向かない。糸子さん、それも却下。岩世さんは、問題外。あとは、毛衣地夜多乃もういちやたのか。一応、頼んでみるとして。あとは、珍玉握りの露華だな。
「夜多乃ちゃんか、露華かな」
「いっそ、両方に聞いてみたら?」
「だね。ちょっと、露華に聞いてみるよ。まずは、会えないか」
「あ、うん・・」
携帯を取り出す駿太。
画面をスライドさせるとタップする。
『あれ、どうしたの?駿太。連絡くれるなんて、なんかあった?』
「あ、実は頼みたいことがあって連絡したんだけど」
『何よ、頼みって?駿太の頼みなら何でも聞いてあげちゃうところだけど』
「ああ、露華。いきなりだけど、会って話すって出来ないかな?」
『お、どういう風の吹き回しよ。私に会いたいだなんて』
「ああ、まあ、いつなら会えるかな?」
『今夜なら、会いてるわよ。うふっ、二人きりで会えるなんて、なんか楽しみ』
「あ、いや、一人じゃないんだ」
『ん?どいうこと?』
「電話じゃ説明しにくいんだよな」
『な~んだ、残念。二人で会うのかと思ってた』
「あ、ごめん」
『いいのいいの、気にしないで。で、他に誰がくるのよ?』
「俺の知り合いが三人」
『ふ~ん、まあいいか。知らない人と会うのは慣れてるからさ。○○ホテルまで来て、そうね時間は20時でいいかな?』
「うん、ありがとう。悪いね」
『いいの、いいの。駿太の立っての頼み事でしょ?聞いてあげるわよ』
「じゃあ、今夜」
『はいは~い』
通話を切る駿太。
「どうだった?」
電話の感じから、大丈夫そうなのはわかっていたが、念のため確認するミサオ。
「とりあえず、会ってくれるって」
「よし、まずはきっかけ掴んだね」
「だね」
「んじゃ、夜多乃ちゃんも聞いてみよ」
「ええ?いいんじゃないかな?毛衣地もういちさんは」
「露華さんが、ダメだったらどうするのよ」
「まあ、そうだけど」
「ほらほら」
「ああ、わかった、わかったから」
携帯の画面をスライドされる駿太。
「あ、これこれ」
タップすると、耳に当てる駿太。
『はい、毛衣地もういちですけど』
「あ、苗場ですけど、突然ごめんね」
『え?苗場さん?どうしたんですか?急に』
「実は、折り入って頼みたいことがあってね」
『私に頼みですか?どんなことですか?』
「あの、良ければ、会って話したいんだけど無理かな?」
『別に、構いませんけど。でも、会って話したいだなんて、正直驚きました』
「そりゃ、そうだよね。あの無理なら遠慮なく言って」
ミサオが、割り込む。
「そんな弱気でどうすんの?」
『あれ?今のって?』
「あ、いや、何でもないよ」
『女の人の声でしたね。もしかして、彼女さん?』
「そうだよ~」
ミサオが携帯に向かって呼びかける。
「ダメだったら、ミサオ」
『え?ミサオって?』
「あ、いや、従姉妹が遊びに来ててね。ミサオ、静かに」
『なんだ、そういうことか、一瞬声聞いて驚きました』
「え?」
『ミサオ・マモルに似てたので』
「本人だよ」
しゃしゃり出るミサオ。
『ほら、やっぱ似てませんか?ミサオに』
「あはは、やっぱり、大ファンだったりするの?ミサオの」
『いやいや、とんどもない。むしろ、その逆です』
「え?」
『私、あの人嫌いなんですよね?』
まさかの、嫌い発言。
「あ、そうなんだ」
「どこが、嫌いなんですか?」
気になって質問するミサオ。
『そうですねぇ、可愛いのに、男勝りなところとか?』
「そんな、可愛いだなんて、なんか照れる」
『いやいや、誉めてないですからぜんぜん』
「ん?」
『だって、普通に可愛いのは当たり前じゃないですか。女優なんだから』
カチンと来るミサオ。
「じょ、女優だからって、必ず可愛いとは言えないでしょ?」
『確かにその通り。でも、ミサオの場合、可愛いのに、アクションとかして、パンツ見せたりオッパイ見せたり、全くもって卑怯過ぎます』
「卑怯?」
『だって、そうじゃないですか?女の武器使いまくりにも程があります。そう思いませんか?あれは、女の敵です』
単なる嫉妬に駆られてるだけのような気がするけど、同性からしたらそうなのかもしれない。
「なるほどね、そうかもしれないね」
「駿太!」
睨みつけるミサオ。
『従姉妹なのに、呼び捨てなんですね。なんか変』
「そうなんだよ、こいつ変な奴でね」
ぐぬぬぬ、怒りを堪えるミサオ。
『で、どうします?』
「え?」
『会うんですか?会わないんですか?』
「ああ、もちろん、会って話したいな」
『わかりました、どこがいいですか?』
矢那が提案がありそうな顔をしている。
「いっそ、露華さんと一緒に会ったらどうだろ?」
小声で話す矢那。
『露華さんも、来るんですか?』
(しっかり、聞こえてますけど)
「あ、うん、そうなんだよ」
『露華さんも、一緒なんですね』
「あ、うん、またやっぱダメ?」
『いやいやいや、露華さんなら大歓迎です』
「そしたら、今夜20時に○○ホテルでいいかな?なんなら、迎えに行くけど?」
『そこだったら、うちからすぐそこなので大丈夫です。では、20時に』
「ありがとう、夜多乃ちゃん」
『いえいえ、どういたしまして。では、後ほどまたです』
「またね」
携帯をタップして通話を切る駿太。
「とりあえずは、会ってもらえることになったから、一歩前進だね」
腕を組んでむくれているミサオ。
「私、この女嫌い」
「まあ、そう言わずにさあ」
矢那がホローに入る。
「ミサオちゃん、この際、好きだの嫌いだの言ってられないよ。わかるよね?」
「ええ、まあ。そうだけど」
何にしても、二人に合って話してみないことには何も始まらないのだ。
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