【アルファポリス恋愛小説大賞奨励賞いただきました】三人

浅野新

文字の大きさ
8 / 15

しおりを挟む
休日前のクラスは好きだ。皆が何となくそわそわしてる。教室内ではこれから休みだと言う楽しい予感に浮き立って、誰もが幸福そうに顔を輝かせている。友達との約束、カラオケの計画、例えバイトの予定であっても。

俺もそんな明るい雰囲気を心から楽しんでいた。

「曜」
 聖司がノートを持ってやって来た。数学の宿題用に貸してやった物だ。俺にノートを手渡しながら彼は笑った。
「嬉しそうだね」
「そうか? 」

 俺はできるだけそっけなく言った。つい笑みがこぼれそうになるのをこらえながら。さくらと初めて一緒に行く遊園地。

「きっと楽しいよ」
 何が、と尋ねた。聖司は完璧すぎる笑顔で答える。

「遊園地に行くんだろ」

 俺は思わず聖司を見上げた。
 聖人君子の微笑み。

 知ってたのか。
 なのに何で。

 笑ってられるんだよ。
 
 聖司はいつもそうだ。
 俺がさくらと、どこでどう過ごそうが嬉しそうな顔をする。良かったね、なんて空気を含ませて。
最初は負け惜しみかと思っていたが。
 
 さくらが俺を呼ぶ時は「曜」で、聖司は「聖司君」だと言う事や、祝日がある時は俺が聖司より先に予定を作ってさくらと一緒に過ごすという事や、その他もろもろのささやかな優越感がこいつの笑顔の前で全て崩れ去ってゆく。

 俺が思わず睨みつけると、聖司は困った顔をした。

「怒るなよ。聞いたんだよ、僕が」

 彼が、ぼくが、の部分をわざとゆっくりと言ったのは俺でも分かった。誰をかばっているのかも。

またこの感覚だ。
頭では分かっているのに、胸の奥がざわり、とする。

聖司は構わず話し続ける。とても楽しそうに。
「で、実は欲しいグッズがあって。買ってきて欲しいんだけど__」

 さくらに頼めよ、と言いかけて俺は口をつぐんだ。
 俺に、遠慮しているのか。

 俺がさくらと出かけるのに。
 お前じゃないのに。

 やっぱり駄目か、と彼は苦笑した。
「曜、わかったよ、もう聞かないから」

 何で笑ってられるんだよ。
 俺は、聖司、
 おまえのこともわからない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

偽りのの誓い

柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する 人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

処理中です...