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サクヤが本屋へ出かけてしばらくしてから、ニナとピーターは遅い朝食をとっていた。ピーターは新聞紙をぱらぱらとめくり、ニナは台所で二人分の紅茶を入れるため、マグカップにお湯を注いでいた。
出窓からは温かな日差しが降り注ぐ。綺麗な水色の空が、絶好の洗濯日和を知らせていた。
「ニナ、サクヤはどこへ行った? 」
ピーターは今開いた新聞をすぐ閉じ、声をかけた。
「トムとちょっと出かけるって、慌てて飛び出して行ったわ。どこに行くのか聞く暇もなかった。寝坊したみたいね。その後図書館に寄って来るって」
ニナは軽く歌を口ずさんでいる。ごぼごぼっとポットから勢いよくお湯が出るのを、満足そうに見ながら。
ピーターは彼女を少し見つめてから、低い声で言った。
「サクヤがアルバートに会った」
「何ですって? 」
ニナが勢いよく振り返った。あわてて片手に持っていたマグカップを脇へ置く。
「先程Tブックストアのブランカから連絡があった。今日彼のサイン会があったらしい。そこにサクヤがトムと一緒に来ていた」
「何故? 」
「それがわからない。アルバートは気味悪がっている。自分の事がばれたんじゃないかってね。彼は三十九人目だったと盛んに繰り返しているらしい。まあこれは偶然だと思うが」
三十九人目、と聞いてニナの顔が青くなった。
「・・・それで、ピーター。何なの。何が言いたいの」
「落ち着け。僕はまだ何も言っていない。サクヤが偶然彼のファンでサインをもらいに行っただけ、又はトムの付き添いだっただけ、とも考えられる。トムはアルバートのファンらしいからな。それならサクヤが僕等に行き先を言わなかった事も、アルバートの著作を一冊も持っていない事も理解できる。しかし、これが偶然でないとしたら、あまりに怪しい行動とも取れるんだ」
ニナの顔が青から赤色に変わった。
「つまりあなたはサクヤを疑ってるの? 」
ピーターは大きくため息をついた。
「客観的に物事を判断しているだけだ。ニナ。僕等は監視役なんだ」
「兼母親よ」
「ニナ! 」
「分かってるわよ! 」
少しの間、二人は睨み合った。しかしすぐに、ニナの方から目をそらした。髪を神経質そうにかきあげる。
「・・・サクヤはどうするの」
「何も聞かない。あれこれ詮索すると却って怪しまれる。ただ、サクヤの今後の行動はもっと綿密に監視しなければいけない」
「そう・・・。そうね。様子をしばらく見て、アルバートには私から連絡しておくわ。でも、彼、大丈夫なの? 」
「彼もプロだ。動揺したとは言え、執筆は続けるだろう」
ニナはため息をついて後ろを向いた。
「・・・ごめんなさい。ちょっと興奮しただけよ」
そっと涙をぬぐう。ピーターは立ち上がり、後ろから優しく彼女の両肩をつかんだ。
「大丈夫だよ。偶然という事もあり得るんだから。39の著者を調べ上げるなんて、我々でも容易な事じゃない」
ニナは黙って数回、頷いた。おかっぱの髪が、はかなげに揺れた。
出窓からは温かな日差しが降り注ぐ。綺麗な水色の空が、絶好の洗濯日和を知らせていた。
「ニナ、サクヤはどこへ行った? 」
ピーターは今開いた新聞をすぐ閉じ、声をかけた。
「トムとちょっと出かけるって、慌てて飛び出して行ったわ。どこに行くのか聞く暇もなかった。寝坊したみたいね。その後図書館に寄って来るって」
ニナは軽く歌を口ずさんでいる。ごぼごぼっとポットから勢いよくお湯が出るのを、満足そうに見ながら。
ピーターは彼女を少し見つめてから、低い声で言った。
「サクヤがアルバートに会った」
「何ですって? 」
ニナが勢いよく振り返った。あわてて片手に持っていたマグカップを脇へ置く。
「先程Tブックストアのブランカから連絡があった。今日彼のサイン会があったらしい。そこにサクヤがトムと一緒に来ていた」
「何故? 」
「それがわからない。アルバートは気味悪がっている。自分の事がばれたんじゃないかってね。彼は三十九人目だったと盛んに繰り返しているらしい。まあこれは偶然だと思うが」
三十九人目、と聞いてニナの顔が青くなった。
「・・・それで、ピーター。何なの。何が言いたいの」
「落ち着け。僕はまだ何も言っていない。サクヤが偶然彼のファンでサインをもらいに行っただけ、又はトムの付き添いだっただけ、とも考えられる。トムはアルバートのファンらしいからな。それならサクヤが僕等に行き先を言わなかった事も、アルバートの著作を一冊も持っていない事も理解できる。しかし、これが偶然でないとしたら、あまりに怪しい行動とも取れるんだ」
ニナの顔が青から赤色に変わった。
「つまりあなたはサクヤを疑ってるの? 」
ピーターは大きくため息をついた。
「客観的に物事を判断しているだけだ。ニナ。僕等は監視役なんだ」
「兼母親よ」
「ニナ! 」
「分かってるわよ! 」
少しの間、二人は睨み合った。しかしすぐに、ニナの方から目をそらした。髪を神経質そうにかきあげる。
「・・・サクヤはどうするの」
「何も聞かない。あれこれ詮索すると却って怪しまれる。ただ、サクヤの今後の行動はもっと綿密に監視しなければいけない」
「そう・・・。そうね。様子をしばらく見て、アルバートには私から連絡しておくわ。でも、彼、大丈夫なの? 」
「彼もプロだ。動揺したとは言え、執筆は続けるだろう」
ニナはため息をついて後ろを向いた。
「・・・ごめんなさい。ちょっと興奮しただけよ」
そっと涙をぬぐう。ピーターは立ち上がり、後ろから優しく彼女の両肩をつかんだ。
「大丈夫だよ。偶然という事もあり得るんだから。39の著者を調べ上げるなんて、我々でも容易な事じゃない」
ニナは黙って数回、頷いた。おかっぱの髪が、はかなげに揺れた。
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