夜明けのムジカ

道草家守

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探掘街の少年2

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「あーこいつは、その」

止める間もなく、ファリンは好奇心一杯の様子でラスに迫る。

「そういえば、ハムサンドいつも一つなのに二つって言ってたな。その美人のぶんか。ズボン履いてるってことは男だよな、うわもったいねえ!」

 子供らしいあけすけな感想をもらすファリンに、面倒なことになったと思いつつ、ムジカは仕方なく紹介した。

「こいつはえーと、スリアンの従兄弟で、エーテル濃度が高くなった土地からスリアンを頼って移住してきたんだってよ。頼まれて面倒見ることになった」

 これはスリアンと話し合って決めた来歴だ。彼女は家族がすでにおらず、こちらに移住してきたため、ばれる心配はないのだという。
 これほど早く使うとは思わなかったため、ムジカの言葉はスリアンの入れ知恵そのままだったが、ファリンは疑わなかったようだ。

「へええ、あの技師の姐さん従兄弟がいたんだ。言われてみると似てるかも? 俺はファリン。ムジカの弟子だ! 兄さん仕事決まってるのか?」
「それは……」

 まずい言い逃れができない。ムジカが焦る間にラスが口を開いた。

「ムジカの補助が俺の仕事です」
「おま、ばか!」

 ムジカが顔色を変えて制止しても、言葉が戻るわけがない。
 案の定、ファリンの表情が一気に不機嫌になった。

「師匠の補助ってことは、探掘やるってことかよ」
「ああ、まあ、な」

 仕方なく肯定すればファリンは怒りか苛立ちのためか顔を真っ赤にした。

「おいらが手伝うって言っても全然受け入れてくれねえのに、師匠はこんな昨日今日来たやつをひいきするのか!」
「それは……」

 仕方がないことだとムジカは思う。
 ファリンは連れて行きたくない理由がある。そしてラスは奇械アンティークであり、一応ムジカが所有者だ。誰にも聞かせたくない秘密である指揮歌を知っても、ラスなら絶対に口外することはないし、なによりムジカが守り切れなくて死なせることもない。

「あたしは弱いよ、ファリン。あんたにはあたしがすごい探掘屋シーカーに見えるのかもしれないけど、全然違う」
「違うんだよ、あんただからおいらは教えて欲しいって思ったんだ。こんな気取った手袋をつけてるようなやつより、俺のほうがずっと役に立つ!」
「ばっ」

 激高したファリンはラスに飛びついたとたん、その手にはまる手袋を抜いたのだ。
 手袋の下には奇械アンティーク特有の球体関節がある。一発で人ではないとばれてしまう。
 さっと血の気が引いたムジカだったが、あらわになったラスの手に青の目を丸くする。
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