31 / 214
第三章
ギルドは人集めが一番大変
しおりを挟むアドラーは、ライデン市へ帰る。
一人と1匹でオーロス山へ向かったはずなのに、今は5人と1匹に増えていた。
その前に、「ドリーさんを忘れるところだった」
アドラーは、人類の最前線になった最果ての冒険者砦に慌てて舞い降りた。
ついでに冒険者達に敵の詳細やエルフ達の行方を伝える。
伝えることが多すぎて、結局一晩泊まった。
その夜、アドラーはやっとミュスレアと話す時間が持てた。
「ギルド、どうなったの?」
アドラーは、ミュスレアが離れていた間に起きたことを話した。
「4ヶ月先には、ギムレットのところとシュラハト――ギルド会戦――ねえ。それまでに6人集まるの?」
ミュスレアの目は『さっさと言え』と催促していた。
「まだ二人だけど……それにギムレットに勝っても、まだ300枚の借金が残るけど……」
慎重派のアドラーはもって回った言い方をしたが、短気なクォーターエルフには耐えられない。
「もう、違うでしょ。アドラーは、わたしにどうして欲しいの?」
「……出来れば帰ってきて欲しい」
「もう一声!」
「うーん? 一緒に戦って欲しいなって。ミュスレアは強いから……」
ミュスレアは露骨にがっかりした顔をしたが、返事は前向きだった。
「ふーん、まあいいわ。ギムレットとグレーシャは、わたしも一発殴ってやりたいからね! それとそこの二人、早く寝なさい!」
ミュスレアは、隠れて聞いていた妹と弟を叱りつけた。
軽い足音が二人分、パタパタと遠ざかっていく。
「ライデンに戻れるって!」
「やったねリュー姉!」
二人の声は、アドラーの耳にまで届いた。
アドラーの話を聞いた冒険者らは、にわかには信じられぬといった様子だった。
数千や数万の群れをなす魔物など、見たことも聞いたこともなかったから。
だが、突如舞い降りた飛竜の群れのインパクトが勝った。
冒険者達は、充分な備えと警戒をすると約束した。
アドラーはドリーを引き取ってから、再び早朝の空を竜で飛んだ。
「さて、戻ってきたわけだが。キャルルはまた学校な」
「なんで!? ボクもギルドに入れてよ!」
アドラーは、なるべく元の日常に戻そうとしていた。
ミュスレアはギルドに復帰。
これで攻撃役ばかりが3人の偏った編成になる。
さらにリューリアが新しくギルドに加わった。
新生”太陽を掴む鷲”団、最初のヒーラーだった。
「いいの、本当に?」
アドラーは何度も念を押したが、彼女の意志は固かった。
「あと5ヶ月でギルドが潰れるかでしょ? なら一人でも居たほうが良いじゃない。それにギルドって言っても事務も会計も居ないし、わたしがやってあげるわ」
「本当に良いの?」
もう一度、アドラーは聞いた。
「あのね、アドラー。他のところで、5ヶ月後に夜逃げするかも知れないけど雇って、なんて言える訳無いでしょ! しかもギルドの拠点はわたしの家よ? もちろん追い出す気なんてないわ、アドラーもバスティもブランカもここに住みなさい。困った時は助け合うのよ!」
『まだ文句ある?』と睨んだリューリアに対して、アドラーは全面降伏した。
3姉弟の真ん中は、とてもしっかり者だった。
そして末っ子は……。
「だから、ボクも働くから! ギルドに入れてよ!」
駄々をこねていた。
アドラーはもちろん二人の姉も、キャルルを入れるつもりはない。
「あんた、何も出来ないじゃない。わたしは傷の手当も出来るし、初級の回復魔法も使える、それに簿記会計の三級も持ってるのよ?」
リューリアは弟に容赦がない。
「うっ……けど……ギルドの弟子に10歳くらいでなるのって普通じゃん? ねえ兄ちゃん、良いだろ?」
「うちは冒険者ギルドだからなあ……」
技術の秘匿と継承を目的に、徒弟制を組むのが本来のギルド。
だが冒険者や傭兵などは、ある程度の戦力、つまり技術を持った者の集団経営組織。
むしろカンパニーに近い。
「まだ中等学校が1年あるんだろ? それが終わってからで良いじゃないか」
アドラーは先送りしようとした。
「そしたらギルドに入れてくれんの?」
「うーん……最近は、冒険者養成学校ってのもあるそうだぞ?」
さらに先送りしたアドラーに、キャルルが切れた。
「もう良いよ! 兄ちゃんのバカ! リューねえのブス!」
キャルルは家を飛び出した。
「クソガキめ。ま、お腹が空いたら戻ってくるわよ」
姉は冷たかった。
森に逃げ込んだキャルルよりも、アドラーにはやることがある。
せいぜい野うさぎくらいしか居ない”魔女の籠もる森”は、普段からキャルルの遊び場でもあった。
「ちょっと出かけてくるね。ギルド本部へ」
アドラーは一言断ると、今回唯一の戦利品――竜の羽――を取り出した。
ギルド本部では、テレーザ以外にも数人の男が待っていた。
一人はギルド本部の長、そして一人は”宮殿に住まう獅子”の東部方面総団長のバルハルト。
「早かったな」
バルハルトは、相変わらず威厳のある声だった。
「ちょっと特急便を使ったものでね」
アドラーは布にくるんだ羽を机の上に置いた。
「す、凄い……! なんでしょう、見たことないです。けどとても綺麗……」
人の腕ほど長さがある銀羽に、テレーザは感嘆の声をあげた。
見届人になったギルド本部の者達からもざわめきが上がる。
一人が「では、本部の研究室で検査して……」と言ったが、バルハルトが遮った。
「それには及ばぬ。これは本物である。それがしが王宮で見た物と寸分、いやこちらの方が大きいな」
バルハルトがアドラーをじっと見る。
警戒半分と興味に称賛まで入り混じった瞳だった。
「貴公がこれ程とはな。いったい……いや、無粋であったな。良かろう、シュラハトは、わしの誇りにかけて執り行う!」
アドラーは、第一段階をクリアした。
「ところでおぬし、これを売るつもりはないか?」
バルハルトがアドラーに聞いた。
「いや、自分で持っておきますよ」
ひょっとしたら、ブランカにとって祖母の形見になるかもとアドラーは思っていた。
「そうか、残念である。金貨で20、いや40枚は出すのだが……」
アドラーは、いざとなったら売ろうと決めた。
シュラハトは、一対一を十連戦。
リューリアに戦闘能力は無く、少なくともあと二人はエース級が必要だったが、未だアドラーにあてはなかった……。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる