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第三章
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しおりを挟む「なぜだ、なぜ入団希望者が来ない!?」
アドラーは、ギルド本部の掲示板の前で苦悶していた。
『太陽を掴む鷲団 人員募集!
アットホームな職場です! 未経験者歓迎!
やる気さえあれば大丈夫! 一緒に夢を追いかけませんか』
アドラー自信作の勧誘に、何の反応もなかった。
それどころか『借金を掴む鷲』『人外募集ギルド』『獅子の餌』などと、落書きまでされる始末。
アドラー、ミュスレア、ブランカのスリートップは悪くない。
あと3人か4人ほど手練が集まれば、大きなクエストも受けることが出来るし、ギムレットの団との戦いにも目処がつく。
『いっそ、宣伝をもっと広範囲に。のぼり、ポスティング、ちんどん屋、折り込みチラシ……いや、それではなあ』
アドラーは、贅沢にも即戦力を欲しがっていた。
だが現状はベテランどころか新人すら寄ってこない。
「アドラーさん、ちょっと良いですかー?」
「はいはい何でしょう、テレーザさん」
受付嬢のテレーザが手招きしていた。
「なにか良いクエストでも入りました?」
アドラーは期待を込めて美人の受付嬢を見つめる。
団長の主な仕事は、もちろん団のトップとして取りまとめること。
そして一番重要で手間がかかるのが、団員の確保と維持。
腕の立つ冒険者を集め、なおかつ維持するのはとても難しい。
時には寄生虫のように保証された報酬だけ受け取る団員を、除名したりもせねばならぬ。
そしてアドラーには、この弱小ギルド全員を食べさせる義務があった。
幸いな事に、今のところ報酬で文句を言う団員は居ない。
ただしみんなよく食べた。
アドラーは、『団長……お腹空いたよう……』という悪夢だけは絶対に避けたかった。
「うーん、無くもないですが、その前に冒険者ランクの件です」
以前、アドラーが申請した冒険者ランクの審査が済んだ。
上から、星・剣・十字・枝・葉の五階級。
その中で金銀銅鉄の4つに別れる。
更にその上にはマイスタークラスがあるが、基本となるものだけで二十ランク。
最上位は金星級、最下位が鉄の葉級になる
「例の魔狼でしたっけ? あれだけの大物は珍しいので、一気に金枝級まで昇進させようって話だったんですが……」
「何か他に条件でも?」
言い淀んだテレーザにアドラーは聞いた。
「いえ逆です。審査対象になってませんが、先日の竜の羽です。本部長も立ち会ったので、更に一ランク上げて鉄十字級まで許可しても良いと」
「ほう、それは有り難いですね!」
話を合わせたが、アドラーには各級のレベルがどんな物かさっぱり。
「一応聞きますが、鉄十字級ってどんな感じですか?」
「余り取る人が居ないのですけど……」と、テレーザは身も蓋もない前置きをしてから始めた。
「個人の能力としては一流クラスというのが十字級。さらに特別な能力があれば剣級、大きな功績を残せば星級になります」
思ったよりもふわっとした条件だった。
それでも評価して貰えたことに、アドラーは感謝した。
「ありがとうございます。謹んでお受けします」
「あ、そうですか。なら銀貨十枚です」
「はい?」
「登録手数料と胸章の実費ですね。まあ金十字でも本物の金を使ってる訳ではないのですが……って、アドラーさん! 何処行くのですか!」
「お金を取るなんて聞いてませんよー!」
「言いましたよ! ギルド本部の貴重な収入源ですから、ばっちり払ってがんがん宣伝して下さい!」
冒険者ランクを申請する者がほとんどない、その理由をアドラーは思い知った。
今のところ、四千とも言われるライデンの冒険者で、ランクを持っているのは二百人ほど。
ライデンでの上位は銀剣級が二人、エスネとグレーシャだった。
さらにその上に、一人だけマイスタークラスが居る。
「お金に余裕がある時にまた来ます!」
銀貨十枚はギルドの3日分の食費だ。
「十字級となれば、本部の指定クエストも受けることが出来ますよ?」
「詳しく教えて下さい」
アドラーは受付に舞い戻った。
「えーっと、指定クエストは、本部が直接下ろす依頼です。お手伝いみたいなのも多いですが、質を維持する為に十字級以上の冒険者が条件です」
「良いクエストがあるんですか?」
「もちろん! さっき呼んだのもそれですよ?」
『さあどうします?』といった表情にテレーザはなった。
「……せめて、先に依頼の中身を教えてください。うちの事情、ご存知でしょう?」
アドラーは精一杯の弱った顔をして頼み込んだ。
「ほんとは秘密ですよ?」
テレーザは小さな声でそっと教えてくれた。
・新設ギルドの試験
・その評価と護衛
・3日予定
・一日銀貨20枚
・全員を生きて戻すこと 成功報酬に銀貨60枚
「3日で金貨1枚? 滅茶苦茶美味しいじゃないですか」
「新人さんのギルドです。死人なんか出すわけにいきませんから」
テレーザはさらっと怖いことを言った。
「このギルドに付いて行くのですか?」
「そうです。グラーフ山の小ダンジョンに潜ってもらいます。冒険者になれそうかの評価がお仕事です」
「それで、受けるには……?」
「十字級以上の冒険者が条件です」
アドラーは財布の中身を数える。
ギルド全員の食費を除いても銀貨十枚は出すことができる。
「うぅ……分かりました。鉄十字級で、お願いします」
「はい、毎度ありー! クエスト受注もありがとうございます!」
テレーザは机上のベルを二度鳴らす。
『せっかくだ。ライデンの新人レベルを確認しておくのも良いだろう』
報酬も良く団長としての見識も広がる、なかなか良いクエストに思えた、この時までは。
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