朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語

六倍酢

文字の大きさ
33 / 214
第三章

33

しおりを挟む
「あたしは留守番なのか?」
「うちもか?」

 ブランカとバスティが尻尾をパタパタさせていた。
『連れてけ』の合図だが、今回は一人の依頼。

「二人は家の掃除を手伝っててくれ」
 ミュスレアの家兼ギルドハウス、大家も不明の謎の丸太小屋。
 アドラーもブランカも此処に一緒に住んでいる。

 ミュスレアが生まれた頃にはもうあったというが、小屋のわりに広かった。

 使ってない部屋が幾つかあり、そこを使えるように掃除をする。
 納屋もあったが、これはギルドのラウンジ兼受け付けにしてしまう。

 一から作るギルドハウスだ。

「掃除とにゃ……」
 バスティが猫に戻った。

「バスティ、サボるなよ。リューリアにはメシを抜いても良いって言ってあるからな」
「んなっ!? あたしは頑張るよ!」
 ブランカが右手をあげた。

 ギルドの食事は全面的にリューリアが作る。
 美味しい家庭料理に魅了された竜の娘は、リューリアを群れで自分より上位と位置づけていた。

「ブランカにはもう一つあるんだ。ミュスレアさーん、ちょっといい?」
「はいはい、何の用?」

 やってきたミュスレアに頼む。
「ブランカに剣の使い方を教えてやってくれないか。あと、手加減の仕方」
「わたしも手加減は苦手だけど……」

「武器なんて使ったこともないそうだ。ゆっくりで良いから、まあ大怪我をさせない方法をね」
「ふーん、分かった。おいで、ブランカ」

 ミュスレアは面倒見の良い長女、人懐っこい竜とはあっさり仲良くなった。
 ブランカも食事係の姉には素直に従う。
 代わりに弟が群れで一番下に位置づけられたのだが……。

「それじゃ、行ってきます」
 アドラーは、美味しいはずのクエストに出発した。


「おっさんが本部の監視人?」
 待っていたのは五人組の小さなパーティだった。

「監視というか、見届けと護衛だけど……」
 おっさん呼ばわりされたアドラーは少し傷ついた。

 前世の記憶もあるが、何もかも違う世界に生まれれば、地球でのことはまるで長い映画のよう。
 懐かしいと言うよりも遥か彼方の出来事に感じる。

 それにこの世界ではまだ二十を幾つか過ぎたところだが、待っていた新規ギルドの面々は若かった。

「俺らの護衛なんて出来んの? 腕は確かか?」
 ついでに団長は生意気だった。

「たぶんね。ほら、ギルド本部のお墨付きだよ」
 アドラーは貰ったばかりの鉄十字の胸章を見せた。

「それ、金さえ出せば取れるやつだろ?」
 ぐぅの音も出なかった。

「まぁいいや。今日が伝説になる”アガラン黒衣団”の立ち上げだからな。足引っ張らないでよ?」

 17歳の団長アガランは自信に満ちあふれていた。

「坊っちゃんがすいません。よろしくお願いします」
 別の男の子がアドラーに謝ったが、アガランはそれを咎める。

「坊っちゃんじゃねえ! 今日から団長って呼べって言ったろ!」
 三人の男の子と一人の女の子が、「はい、団長」と声を揃えた。

『テレーザさん……また厄介そうな仕事を……。いやいや、3日で金貨一枚だ。みんなの胃袋の為にこれくらい!』
 アドラーは気合を入れ直す。

 道々、それぞれの役割や出身などを聞く。
 小部隊において、それらはとても重要なことだとアドラーは理解している。

 黒い鎧にロングソードを背負ったアガランは、良く喋った。

「いちおうさ、冒険者の養成学校とやらにも通ったのよ。俺は小さい頃から家の客人から剣の手ほどきを受けてっから、必要ないかと思ったけどね。まあ養成学校でも筋が良いって褒められてさ、それならいっちょ旗を揚げるかってな」

 アガランの父親はライデン市近郊の村の大地主で、その費用をぽんっと出したと語った。

 付き添いの四人の内、二人はアガランの家に代々仕える者の子弟。
 一緒に養成学校にも通った。

 残りの二人、女の子は15歳でサーリといった。
 アガラン家の小作人の娘だが、精霊が見えるということで連れてこられた。

「やっぱ魔法使いって必要じゃん?」とはアガランの言葉。

 サーリは慣れない山道を一生懸命に歩く。
「アガラン様のお陰で、小作料が安くなったと父も母も喜んでました」
 健気なこと言い、おっさんのアドラーは涙を堪える。

 最後の一人はサーリの二つ上の兄でハーストといった。
 次男だそうで、これまた。

「妹が心配だから……」と、アドラーの涙腺を決壊させる。

「心配すんな! お前の妹に手を出したりはしねーよ。正式な団になったら、村の若い者を集めて一気に頂点てっぺん目指すんだからな!」

 若く希望に溢れる冒険者団の卵であったが……。

『し、素人の集まりじゃないか、恨みますよ。テレーザさん!』

 これから向かう小さなダンジョンが、彼らに見合った安全な場所であることを、アドラーは心の底から願った。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...