【完結】幼馴染みが勇者になり何故か俺は勇者の番になりました

赤牙

文字の大きさ
22 / 56

22話:魔王と番

しおりを挟む
光に包まれた後、俺は意識が途絶えていたようで気がつけばベッドに横たわっていた。

もしかして…あれは瘴気に当てられて夢でも見ていたのか?

体を起こし辺りを見渡しテオ達を探す。
部屋の中は薄暗くランプの灯がだだっ広い部屋に数個置かれているだけだった。

ゆらゆらと怪しく揺れるランプの灯りに少し恐怖を感じる…

「テオ…ベヌエット様…アレンさん…」

呟くように皆の名前を呼ぶがもちろん返事などない。


「やっと目覚めたな」

声の方へと顔を向けると薄暗い部屋の奥から人影が動いてくる。

「…誰?」

恐る恐る声をかけるが、ガルパス様の最後の言葉を思い出し質問したことを後悔する…

「私かい?君達がずっと会いたがっていた魔王だよ」

近くまで魔王が来ると薄暗い部屋でも顔が見える。
真っ黒な髪を揺らし紅い瞳が俺を見つめる。端正な顔立ちをしているが無表情なので怖い…
その瞳に見つめられると体が金縛りのように動かなくなり俺はベッドで座ったまま固まった。
そんな俺の横へと腰を下ろすと俺の顔を覗き込み品定めするようにジロジロと見てくる。

「今回は男と聞いていたが…まぁ悪くないな。楽しむ前に少し腹を満たさせてもらおうか」

魔王はそう言うと俺の首筋に歯を立てる。

「痛っっ…」

歯を立てられた場所は最初は痛みがあったが次第に痛みは無くなっていった。魔王の喉が上下しているのを見て血を吸われている事を実感する…

俺このまま死ぬんだろうか…

そう思っていると魔王は首筋から離れ口に付いた血を拭いながら満足そうな顔をして俺に微笑みかける。

「素晴らしい…今回の番はガルパスが言っていた通り傑作だな」

血を吸われ少しボーっとしていたが、ガルパス様の名前を聞きテオ達の事を思い出す。
テオ達もここに囚われているのだろうか…

「なぁ…俺をどうするんだ?俺の仲間もここにいるのか?」

「ん?なんだガルパスから聞いていないのか?」

「いや…何も…」

「そうか…お前は私の食糧でもあり番だ。すぐには死なせない。お前の仲間は森を抜けて王都へと戻っている頃だろう」

…なんか色々とツッコミ所が多いぞ魔王。
とりあえずテオ達は無事なのか…でも信用していいのか?

「私の言葉は信用できないって目をしてるね…仲間は無事だ。魔王を倒した勇者達として王都へ返している」

話を聞いた後も俺が疑いの眼差しを向けると魔王はクスっと笑い『勇者』と『番』についても話し出した。

「勇者は私の『番』を育てる為に存在しているんだ。私の食事は勇者の魔力。しかし力の強い勇者を喰らうにはリスクが高く最近は相手にするのが面倒になってな、そこで勇者が現れた時に勇者の大切な人・・・・・・・に呪いをかけるようにしたんだ。それが『勇者の番』なんだよ」

魔王はそう言いながら俺の番の紋を愛おしそうに撫でる。

「勇者の精には魔力が豊富に含まれている。そこで番に勇者の精を注ぎ込ませ体内で溜め込む性質に呪いで作り替えたんだ。お前の血を味わったが本当に素晴らしかったよ」

歯を立てられた首筋を撫でられまた血を吸われるのかと思い恐怖で体が震える。
このまま血を吸われ続ければ俺の死は近い…

「そう怖がるなシモン…すぐに死なせはしないと言っただろ?お前は私の大切な『番』だ。今までの番達も皆寿命を全うして死んでいったぞ」

何処か誇らしげな魔王。
でも、すぐには殺されないのならば、いつかコイツから逃げ出す事もできるかも…

そう考えていると魔王は俺シャツの下から手を入れ肌を触ってくる…

「な、何してるんだよ!」

魔王の手は俺の腹を撫で…胸へと伸びてくる。
恐怖と胸を触られた気持ち悪さに鳥肌が立つ…

「何って…私も数十年ぶりの食事で腹が減っているんだ。あの血だけでは足りないが吸いすぎるとお前が死ぬ。血液以外でもお前の体液ならば食事になるから精液を頂こうと思ってるんだが…ダメか?」

「…ダメだって断れるのか?」

「ふふ。無理だな」

じゃあ聞くなよ!

睨みつける俺を魔王はベッドへと押し倒す。
体が上手く動かせない俺は魔王にされるがまま服を脱がされていった…
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悪役令息に転生したので婚約破棄を受け入れます

藍沢真啓/庚あき
BL
BLゲームの世界に転生してしまったキルシェ・セントリア公爵子息は、物語のクライマックスといえる断罪劇で逆転を狙うことにした。 それは長い時間をかけて、隠し攻略対象者や、婚約者だった第二王子ダグラスの兄であるアレクサンドリアを仲間にひきれることにした。 それでバッドエンドは逃れたはずだった。だが、キルシェに訪れたのは物語になかった展開で…… 4/2の春庭にて頒布する「悪役令息溺愛アンソロジー」の告知のために書き下ろした悪役令息ものです。

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 希望したのは、医療班だった。  それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。  「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。  誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。  ……けれど、婚約者に裏切られていた。  軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。  そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――  “雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。 「君の料理が、兵の士気を支えていた」 「君を愛している」  まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?  さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。 死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。 君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。

処理中です...