やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

生きる事

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 季節は夏真っ只中。
私は小屋のクローゼットにあった服を拝借して、着るようになっていた。
やはりファンタジー世界かも? という様な服で、麻のシャツを腕まくりして、小鹿色のズボンも紐で絞って足のくるぶしまでまくり上げた。
靴は革のサンダルがあったからそれを履いている。

 自分のTシャツは寝る時用にしている。
扇風機すらなく、寝苦しい夏の夜はTシャツにパンツで寝ているからだ。
それに、外に行く時は長袖じゃないと草で腕を切ったりするから、どうしても半袖とかでは無理なのだ。

「今日こそは……お肉を……いや、魚! 魚にしよう!」

 この小屋を家探しして、釣り竿を見付けた私は川を目指す。
もう貯蔵庫にある保存食は小麦粉くらいで、後は食べれるか分からないチーズのオイル漬けや魚なので、自分で食べれる物を探すしかない。
何日も小麦粉を水で溶いてパンケーキもどきを作ったけど、不味い。
せめてジャムは残しておくべきだったと、今更後悔しているところだったりする。

 本当はお肉が食べたい!
でも、動物を殺すなんて私には無理。
パックのお肉にされた状態でなら食べれるけど、生きていたのを自分で処理するって想像しただけで、「あ、絶対無理」と思ってしまった。

 魚ぐらいなら大丈夫かもしれない。
魚には痛覚とかないって聞くし、動物を殺すよりは心が痛まない。

 ナイフ一本と、釣り竿にバケツ。
私の装備はこんなところだ。助けが来るまでは生き延びるのが第一である。
異世界かもしれない、外国かもしれない。そういった事を色々考えたけど、とにかく誰かが来るまでは生き延びよう。
一生一人だったら……と、考えもするけど、とにかく生きる事。

 生きているとお腹は空くし、誰にも頼れないなら自分が頑張るしかない。
小屋を出ると「ゲーキョ」と声がする。
相変わらず、ゲキョゲキョ鳴く、体が真っ青なスカイブルーに白い線の入った奇妙なオウムに似た鳥は私の周りを飛び回る。

「ゲッちゃん、今日も元気そうだね」
「ゲーキョキョ」

 もうこの鳥の鳴き声にイラついたりもしなくなった。むしろ、少し間抜けな顔は可愛いし「ゲッちゃん」と名前も付けてあげた。
この世界で私の唯一の友の様な存在になりつつある。
実は、ゲッちゃんに「川とか無いかな?」と冗談半分で聞いたら、ついて来いと言うように川まで先導してくれたり、「何か食べれる果物無いかな?」と聞いたら、やはり食べれる木の実の所まで連れて来てくれたりした。

 ゲッちゃんはマジでお役に立つ鳥だった。
最初の頃は八つ当たりしてゴメンよと、心の底から思っている。

 川につくと釣り竿の先に朝作った不味いパンケーキもどきを小さく付けて、ポチャンと川に投げ入れる。

「ハァー……お腹空いた」

 釣れます様にと思いつつ、目を閉じて瞑想する。
釣りは動いてはいけないとお祖父ちゃんが言っていた。
『李都は騒ぐから魚が逃げるんだぞ?』
なので、私は黙して語らず、釣り竿を持ったまま座り込む。

 この世界、異世界だとしたら私を探してくれている人とかいたりして……
聖女様とか勇者様とか……流石にこのガサツな私に聖女様は無いな。うん。
勇者だったら、少しは体を鍛えた方が良いのかな?
必殺技とかあったら面白いよね。
こう、手からグワーッて何か出るとか……あれ? それは魔法使いか?
勇者だと剣とか? なんとか斬りって言いながら斬るんだろうなー……あっ、それは恥ずかしいかも?

 ピンピンと、釣り竿に反応があって、「よっしゃ!」と勢いよく釣り竿を引き上げると私の手の平くらいの小さな小魚が釣り針の先に掛かっていた。

「やったー!」

 ビチビチビチビチ……
ビチビチ……ビチビチ……

「無理ぃぃぃ!!!!」

 捕まえようと手は構えるけど、どうやって捕まえるの?
むしろ、針ってどうやって取るの?

「ひぃぃ」

 おっかなびっくりしつつ魚を突くと、ビチビチと動いて「ぎゃぁぁぁ」と声を上げた私をクラスメイトの子達が見ていたら、きっと笑うだろう。
私は、お転婆娘というカテゴリーでお調子者という風だから、こんな女の子っぽいところがあるなんて、思わないだろうから。

 ぐうぅぅ~と、お腹が鳴り、私は下唇を噛みしめる。

「私は、生きるんだ!」

 魚を捕まえて、針を取り出そうと動かしているうちに、魚の口がだらんと開いて血が出て、魚はいつの間にか死んでしまっていた。
バケツに水を入れて釣った魚を入れると、ぷか~と死んだ魚は浮き上がり、私はそれを見て泣きながら、また釣り竿にパンケーキもどきを付けて、釣りを再開する。

「お母さん……会いたいよ……」

 お料理上手なお母さんの手が、魔法使いの様に野菜も魚もお肉も全部お料理として形を作っていた物全てが恋しかった。
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