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1章
冬支度の贈り物
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「うわぁ! ゲッちゃん、これ貰って良いのかな!?」
「ゲーキョ」
『冬支度に役立てて欲しい』って、ことは私が役に立てても良いのかな?
色々入ってるみたいだし、こんなに貰って良いのかな? 他の人の分……とか? 私以外にもここに誰か住んでるのかな? ああ、でも凄く欲しい!!
荷物を調べていると布に包まれた手紙の様な物があった。
和紙っぽいけど、和紙より丈夫そうな紙が折りたたんで封筒に入っていた。
封筒には外国の人がするみたいな封蝋がしてあって、盾のマークに狼みたいなマークが入っていた。
うわぁ~私のツボにダイレクトにくる。この封蝋素敵!
ちょっと欲しい!!
一番上の物を開けると、『まだ見ぬ君へ』という出だしで始まっていた。
『まだ見ぬ君へ
私はまだ未熟者ゆえ、君の元まで辿り着く事が出来ない。
私にもっと力があれば、会いに行けるのに……そちら側がどうなっているのか、私には見る事も出来ないが、不自由はしていないかい?
これから寒い時期になる。私は都合で春先までは来れない。
君がとても心配だ。どうか、無事でいて欲しい。
冬支度の最低限の物を用意したので、君の役に立てて欲しい。
どうか元気で』
「うわぁ……なんていうか、私が持っていったら駄目な感じがヒシヒシとしてきた~」
これはラブレターの様な? 多分、私以外の誰かがここに住んでいるんじゃないかな……
私にこんな熱烈な愛を囁く様な手紙は似合わない。
でも、こちらのジャングルが、外からは見えない……のだろうか?
黒い土地の方へ出て、ジャングルを見てみると、そこは普通にジャングルで変わりはしなかった。
はてさて? 一体何なのか?
首を傾げていたら、ゲッちゃんが「ゲキョ―!!」と大きな声を出して、声にビックリした瞬間、大きな黒い熊に似た動物がもう突進してくる姿が見えた。
「うわぁぁぁ!!」
私は慌ててジャングルの方へ走り、リヤカーを手に駆けだした……が、重たい。
リヤカーが重たくて、危うく肩を脱臼するかと思った。
でも、熊はこちらのジャングルには入って来れないようで、黒い大地とジャングルの緑の大地の境界線を越えずに、ウロウロしていた。
「ひぃぃ~……」
モフモフ動物は好きだけど、熊は遠目で柵越しに見る物であって、襲い掛かって来るようなヤバいのはノーセンキューだ。
第一、この熊は目が赤いし、顔が二つあるし、めっちゃくちゃ怖い。
私の身長を優に超えていて、コレは絶対に仲良くなれないヤツだとわかる。
「ゲッちゃん逃げよう!」
「ゲーキョ」
私はリヤカーを引きながら、ノロノロと元来た道を帰ることにした。
だって、黒い大地にリヤカーを置いておいたら、あの熊にグチャグチャに踏みつぶされて終わりだろうから、これは私が持ち帰らないと駄目になっていた物だ。
だから、私の物。
良心は痛むけど、でも、あのままだと本当にリヤカーは壊されてたし、中身も駄目にされてたんだもの。もし、持ち主が出てきたら、正直に話すしかない。
早い段階で持ち主が来たら、理由を言って半分貰うか、助けを求めよう。
そんな事を考えながら、私は小屋まで行きの倍以上の時間をかけて帰ってきた。
足はパンパンだし、手も腰も痛い。
汗だくで服も濡れてるし、背中も汗びっちゃり状態。
折角、薪が入っているからお風呂! 温かいお風呂に入る!!
それだけは決めている。
リヤカーの中の物を小屋の中へ運び入れて、無造作に置いていく。
腰も手も足も痛いから、選別したりしている暇はない。
もう、早く入れてお風呂に入りたい! これで頭がいっぱいだった。
リヤカーの中身を全て小屋の中に入れ終わると、カートを少し見えにくい塀に囲まれている裏側に持っていく。
正直に持ち逃げしました……と、言うつもりではあるけど、でも、折角手に入れた物を直ぐに取り上げられたりするのは、少しだけ悔しいかなって……
意地汚いと自分でも思うけど、熊から荷物を守ったんだし、ここまで運んだのだから、少しぐらいは貰いたい。
「はぁー……初めてドロボーしちゃった……」
少し項垂れて、ノロノロと小屋の中に入る。
ゲッちゃんがリヤカーの荷物の上をトントン飛んで歩き回り、ご機嫌な声で「ゲキョキョ」と鳴いている。
食べ物はテーブルの上に置いて、肉の入った四角いガラスケースを見て、少し元気が出た。
二ヶ月ぶりのお肉……ゴクリ。
美味しく頂きたいところだ。あとで料理本を見て、美味しい食べ方で食べよう。
カコンと鉄の様な音がして、荷物を漁ると四角い手の平サイズの缶が入っていた。
赤いイチゴの絵が描いてある缶で中を開けると、四角いキャンディーがぎっしりと入っていた。
一粒指で摘まみ上げると、指が震えてしまって口の中に入れると、甘いイチゴの味が口の中で広がり、涙がポロポロ零れた。
「美味しい、甘い……」
少し前まで、キャンディーなんて何処でも手に入って、有り難がることなんて無い物だったのに、今の私には世界で一番美味しい物に感じられた。
「ゲーキョ」
『冬支度に役立てて欲しい』って、ことは私が役に立てても良いのかな?
色々入ってるみたいだし、こんなに貰って良いのかな? 他の人の分……とか? 私以外にもここに誰か住んでるのかな? ああ、でも凄く欲しい!!
荷物を調べていると布に包まれた手紙の様な物があった。
和紙っぽいけど、和紙より丈夫そうな紙が折りたたんで封筒に入っていた。
封筒には外国の人がするみたいな封蝋がしてあって、盾のマークに狼みたいなマークが入っていた。
うわぁ~私のツボにダイレクトにくる。この封蝋素敵!
ちょっと欲しい!!
一番上の物を開けると、『まだ見ぬ君へ』という出だしで始まっていた。
『まだ見ぬ君へ
私はまだ未熟者ゆえ、君の元まで辿り着く事が出来ない。
私にもっと力があれば、会いに行けるのに……そちら側がどうなっているのか、私には見る事も出来ないが、不自由はしていないかい?
これから寒い時期になる。私は都合で春先までは来れない。
君がとても心配だ。どうか、無事でいて欲しい。
冬支度の最低限の物を用意したので、君の役に立てて欲しい。
どうか元気で』
「うわぁ……なんていうか、私が持っていったら駄目な感じがヒシヒシとしてきた~」
これはラブレターの様な? 多分、私以外の誰かがここに住んでいるんじゃないかな……
私にこんな熱烈な愛を囁く様な手紙は似合わない。
でも、こちらのジャングルが、外からは見えない……のだろうか?
黒い土地の方へ出て、ジャングルを見てみると、そこは普通にジャングルで変わりはしなかった。
はてさて? 一体何なのか?
首を傾げていたら、ゲッちゃんが「ゲキョ―!!」と大きな声を出して、声にビックリした瞬間、大きな黒い熊に似た動物がもう突進してくる姿が見えた。
「うわぁぁぁ!!」
私は慌ててジャングルの方へ走り、リヤカーを手に駆けだした……が、重たい。
リヤカーが重たくて、危うく肩を脱臼するかと思った。
でも、熊はこちらのジャングルには入って来れないようで、黒い大地とジャングルの緑の大地の境界線を越えずに、ウロウロしていた。
「ひぃぃ~……」
モフモフ動物は好きだけど、熊は遠目で柵越しに見る物であって、襲い掛かって来るようなヤバいのはノーセンキューだ。
第一、この熊は目が赤いし、顔が二つあるし、めっちゃくちゃ怖い。
私の身長を優に超えていて、コレは絶対に仲良くなれないヤツだとわかる。
「ゲッちゃん逃げよう!」
「ゲーキョ」
私はリヤカーを引きながら、ノロノロと元来た道を帰ることにした。
だって、黒い大地にリヤカーを置いておいたら、あの熊にグチャグチャに踏みつぶされて終わりだろうから、これは私が持ち帰らないと駄目になっていた物だ。
だから、私の物。
良心は痛むけど、でも、あのままだと本当にリヤカーは壊されてたし、中身も駄目にされてたんだもの。もし、持ち主が出てきたら、正直に話すしかない。
早い段階で持ち主が来たら、理由を言って半分貰うか、助けを求めよう。
そんな事を考えながら、私は小屋まで行きの倍以上の時間をかけて帰ってきた。
足はパンパンだし、手も腰も痛い。
汗だくで服も濡れてるし、背中も汗びっちゃり状態。
折角、薪が入っているからお風呂! 温かいお風呂に入る!!
それだけは決めている。
リヤカーの中の物を小屋の中へ運び入れて、無造作に置いていく。
腰も手も足も痛いから、選別したりしている暇はない。
もう、早く入れてお風呂に入りたい! これで頭がいっぱいだった。
リヤカーの中身を全て小屋の中に入れ終わると、カートを少し見えにくい塀に囲まれている裏側に持っていく。
正直に持ち逃げしました……と、言うつもりではあるけど、でも、折角手に入れた物を直ぐに取り上げられたりするのは、少しだけ悔しいかなって……
意地汚いと自分でも思うけど、熊から荷物を守ったんだし、ここまで運んだのだから、少しぐらいは貰いたい。
「はぁー……初めてドロボーしちゃった……」
少し項垂れて、ノロノロと小屋の中に入る。
ゲッちゃんがリヤカーの荷物の上をトントン飛んで歩き回り、ご機嫌な声で「ゲキョキョ」と鳴いている。
食べ物はテーブルの上に置いて、肉の入った四角いガラスケースを見て、少し元気が出た。
二ヶ月ぶりのお肉……ゴクリ。
美味しく頂きたいところだ。あとで料理本を見て、美味しい食べ方で食べよう。
カコンと鉄の様な音がして、荷物を漁ると四角い手の平サイズの缶が入っていた。
赤いイチゴの絵が描いてある缶で中を開けると、四角いキャンディーがぎっしりと入っていた。
一粒指で摘まみ上げると、指が震えてしまって口の中に入れると、甘いイチゴの味が口の中で広がり、涙がポロポロ零れた。
「美味しい、甘い……」
少し前まで、キャンディーなんて何処でも手に入って、有り難がることなんて無い物だったのに、今の私には世界で一番美味しい物に感じられた。
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