やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

文字の大きさ
12 / 167
1章 

冬支度の贈り物

しおりを挟む
「うわぁ! ゲッちゃん、これ貰って良いのかな!?」
「ゲーキョ」

 『冬支度に役立てて欲しい』って、ことは私が役に立てても良いのかな?
色々入ってるみたいだし、こんなに貰って良いのかな? 他の人の分……とか? 私以外にもここに誰か住んでるのかな? ああ、でも凄く欲しい!!

 荷物を調べていると布に包まれた手紙の様な物があった。
和紙っぽいけど、和紙より丈夫そうな紙が折りたたんで封筒に入っていた。
封筒には外国の人がするみたいな封蝋がしてあって、盾のマークに狼みたいなマークが入っていた。
うわぁ~私のツボにダイレクトにくる。この封蝋素敵!
ちょっと欲しい!!

 一番上の物を開けると、『まだ見ぬ君へ』という出だしで始まっていた。

『まだ見ぬ君へ
私はまだ未熟者ゆえ、君の元まで辿り着く事が出来ない。
私にもっと力があれば、会いに行けるのに……そちら側がどうなっているのか、私には見る事も出来ないが、不自由はしていないかい?
これから寒い時期になる。私は都合で春先までは来れない。
君がとても心配だ。どうか、無事でいて欲しい。
冬支度の最低限の物を用意したので、君の役に立てて欲しい。
どうか元気で』

「うわぁ……なんていうか、私が持っていったら駄目な感じがヒシヒシとしてきた~」

 これはラブレターの様な? 多分、私以外の誰かがここに住んでいるんじゃないかな……
私にこんな熱烈な愛をささやく様な手紙は似合わない。
でも、こちらのジャングルが、外からは見えない……のだろうか?

 黒い土地の方へ出て、ジャングルを見てみると、そこは普通にジャングルで変わりはしなかった。
はてさて? 一体何なのか?
首を傾げていたら、ゲッちゃんが「ゲキョ―!!」と大きな声を出して、声にビックリした瞬間、大きな黒い熊に似た動物がもう突進してくる姿が見えた。

「うわぁぁぁ!!」

 私は慌ててジャングルの方へ走り、リヤカーを手に駆けだした……が、重たい。
リヤカーが重たくて、危うく肩を脱臼するかと思った。
でも、熊はこちらのジャングルには入って来れないようで、黒い大地とジャングルの緑の大地の境界線を越えずに、ウロウロしていた。

「ひぃぃ~……」

 モフモフ動物は好きだけど、熊は遠目で柵越しに見る物であって、襲い掛かって来るようなヤバいのはノーセンキューだ。
第一、この熊は目が赤いし、顔が二つあるし、めっちゃくちゃ怖い。
私の身長を優に超えていて、コレは絶対に仲良くなれないヤツだとわかる。

「ゲッちゃん逃げよう!」
「ゲーキョ」

 私はリヤカーを引きながら、ノロノロと元来た道を帰ることにした。
だって、黒い大地にリヤカーを置いておいたら、あの熊にグチャグチャに踏みつぶされて終わりだろうから、これは私が持ち帰らないと駄目になっていた物だ。
だから、私の物。

 良心は痛むけど、でも、あのままだと本当にリヤカーは壊されてたし、中身も駄目にされてたんだもの。もし、持ち主が出てきたら、正直に話すしかない。
早い段階で持ち主が来たら、理由を言って半分貰うか、助けを求めよう。

 そんな事を考えながら、私は小屋まで行きの倍以上の時間をかけて帰ってきた。
足はパンパンだし、手も腰も痛い。
汗だくで服も濡れてるし、背中も汗びっちゃり状態。
折角、薪が入っているからお風呂! 温かいお風呂に入る!!
それだけは決めている。

 リヤカーの中の物を小屋の中へ運び入れて、無造作に置いていく。
腰も手も足も痛いから、選別したりしている暇はない。
もう、早く入れてお風呂に入りたい! これで頭がいっぱいだった。

 リヤカーの中身を全て小屋の中に入れ終わると、カートを少し見えにくい塀に囲まれている裏側に持っていく。
正直に持ち逃げしました……と、言うつもりではあるけど、でも、折角手に入れた物を直ぐに取り上げられたりするのは、少しだけ悔しいかなって……

 意地汚いと自分でも思うけど、熊から荷物を守ったんだし、ここまで運んだのだから、少しぐらいは貰いたい。

「はぁー……初めてドロボーしちゃった……」

 少し項垂れて、ノロノロと小屋の中に入る。
ゲッちゃんがリヤカーの荷物の上をトントン飛んで歩き回り、ご機嫌な声で「ゲキョキョ」と鳴いている。

 食べ物はテーブルの上に置いて、肉の入った四角いガラスケースを見て、少し元気が出た。
二ヶ月ぶりのお肉……ゴクリ。
美味しく頂きたいところだ。あとで料理本を見て、美味しい食べ方で食べよう。

 カコンと鉄の様な音がして、荷物を漁ると四角い手の平サイズの缶が入っていた。
赤いイチゴの絵が描いてある缶で中を開けると、四角いキャンディーがぎっしりと入っていた。
一粒指で摘まみ上げると、指が震えてしまって口の中に入れると、甘いイチゴの味が口の中で広がり、涙がポロポロ零れた。

「美味しい、甘い……」

 少し前まで、キャンディーなんて何処でも手に入って、有り難がることなんて無い物だったのに、今の私には世界で一番美味しい物に感じられた。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

処理中です...