やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

新年

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 タンタンタン……
ナイフでは出来なかったというか、やり辛かった、鶏肉のミンチ肉が包丁なら簡単に出来る!
氷の熊から落ちた包丁の切れ味はそれなりで、鶏肉を包丁で上から叩く様に切っていくとミンチ肉が出来て、塩コショウを混ぜて少しだけ小麦粉とエバーナの実を入れてよく混ぜ込む。

 オリーブ油をフライパンにひいて、熱が通ったところで丸く平たくしたミンチ肉を置いて焼けば、鶏肉ハンバーグの出来上がり!

「ふぁぁ~美味しそうな匂いがする~」
「ワフーン」
「デンちゃんのは、タダの鶏肉ミンチだよー」
「ヘッヘッヘッ、ワフッ!」
「ふっふっふっ、勝利の後のご飯は最高だとは思わないかね? デンちゃんや」

 一夜明けて、もう氷の熊も出ないようで安心した私達は、お正月のお祝い料理をすることにした。
薄切りのベーコンをフライパンの余熱で焼いて、ハンバーグの上に乗せる。
うーん。贅沢。
ビルズ芋を茹でてマッシュポテトにして、塩コショウを少し混ぜてハンバーグの横に置けば完成。
あとは、ビルズ芋を適当に切った物とハスナキノコを入れて、水とソーセージの輪切りにハーブソルトを入れて、ぐつぐつ煮込み、水でこねた小麦粉を丸くして入れ込んで、お餅っぽく見立ててみる。

「ゲッちゃんには木の実の盛り合わせだよ~」
「ゲキョ」

 ゲッちゃん用には木の実をお皿に入れて、デンちゃんにはハンバーグの塩コショウ抜きにジャーキーを添えてだす。
「いただきまーす!」と、声を出してお正月の贅沢メニューを口に運ぶ。

「んまーっ!」

 やっぱり、エバーナの実を入れて正解だった。パサパサな鶏肉もしっとりして、小麦粉のおかげで肉崩れもしない。
贅沢を言うなら、目玉焼きを乗せたり、ハンバーグに卵を入れたかった。
いやいや、贅沢は敵だ。

 でも、今年こそ卵を手に入れたい。
木ではしごを作れないかなぁ……でも、釘が無いし、蔓や紐じゃ固定するのは難しそう。
鳥の卵を木の上から盗る方法……今年の課題にしよう。

「はぁ~、それにしても包丁便利。包丁があれば解体作業もやりやすいよね~」

 また氷の熊みたいなのが出てきたら困るから、それの対策もしないといけないかも?
うーん。今年は色々と初日から課題が多そうな気もするけど、今日はお祝いだし、考えるのは止めておこう。

 それにしても、この世界ってもしかすると、ゲームみたいな感じなのかな?
モンスターを倒すとドロップアイテムが落ちるとか……あ、だとしたら、今まで私が倒した鳥やウサギからドロップアイテムが無い説明がつかないか。

「ステータス!」

 シーン……
知ってたよ? ちょっと言って見たかっただけだよ……
マンガとかみたいには上手くいかないらしい。私に厳しい世界だ。

「ワフッ!」
「え? デンちゃんもう食べ終わっちゃった? もう無いよ。こっちは味付きだからだーめ」
「ワオン!」
「いい声出しても、駄目なんだなー」
「クゥーン、フゥーン」

 私はスープを飲み干すと、「ご馳走様でした!」と食器を片付ける。
鹿の蛇口を捻って水で洗うのも慣れてきたけど、でも冬場は水が冷たい。心臓がキュッて痛くなる。

「ワフッ!」

 ガリガリと玄関のドアを開けろと騒ぐデンちゃんに、私もタオルで手を洗うと、ケープを羽織ってリュックサックとナイフに魔法の剣を持って、玄関を開ける。

「ゲッちゃんも一緒に行く?」
「ゲーキョー……」
「そっか、行かないのか」

 声の具合からしても、網籠の中から動かないゲッちゃんは動かないようだ。
デンちゃんと一緒に玄関を出て外に行くと、山吹色の太陽が明るく照らしていて雪がキラキラと輝いていた。

「昨日まで、朝も昼も曇ってたのにねー……新年凄ーい!」
「ワフッ!」
「おわっ! 乗せてくれるの? やった!」
「ワフワフッ!」

 デンちゃんにお尻を鼻で持ち上げられて、背中に乗せる様な仕草をするので試しに背中に乗ってみたら、氷の熊退治の時の様に乗せてくれて、雪の上を走り回る。

「凄いね! あっ、でも首輪みたいなの欲しいね」

 飛び跳ねられると、流石にバランスが悪い。
持つところが欲しい。でも、馬みたいで面白い……いや、これは牛に乗るロデオの方が近いだろうか?

「デンちゃん、ここでストップ。止まって~」
「ワフッ?」
「氷の熊の死体を見に来ただけだから」
「ワオン」

 デンちゃんに降ろしてもらって、「遊んできていいよー」と言うと、デンちゃんは元気に雪の上を飛んだり跳ねたりしながら、周りで雪遊びをしている。
元気なワンコだ。

「さて、一応確認はしないとね」

 氷の熊が何なのかはわからなかったけど、死体を確認して動物なのか、魔法で作られた何かなのかを調べないといけない。
モンスターかもしれないけど、今後の対策の為にも、剣を鞘から出して、氷の熊の欠片を剣先でツンツンと突く。

 動物みたいに弾力も無ければ、本当に氷という感じ。
内臓とかも無いし、他に何か落ちているかと思ったけど、氷の死体だけでこれといった物も無い。

 ガリゴリガリゴリと横で音がして、「んっ!?」と、思ったらデンちゃんが氷の熊をガリボリ食べていた。

「コラッ! お腹壊すよ!」
「ワフッ!」

 ボリボリと食べていて、美味しいのかなぁ? と、小さな欠片を口に入れると冷たい氷という感じで無味。
水の味!!
 
 でも、これ口の中でなかなか溶けない。
あっ、持って帰ろう。ガラス瓶に入れておけば夏場に氷代わりになるかも!
夏暑くて寝苦しかったし、熱を出した時、氷欲しかったから、これなら良いかも?

「デンちゃん、お家にいったん戻って、また来るよ」
「ワフ? バリゴリ……」
「お利口さんだから、氷を食べるのを止めて、言う事を聞こうね?」
「クウーン」

 デンちゃんに乗せて貰って、一旦小屋に帰り網籠を持って戻って、大量の氷を持ち帰った。
使える物は使わねば、そして、手に入れられるものは手に入れなければ、この大自然では生きていけない。

 サバイバルな私に遠慮の文字は無い!
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