やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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2章

祖父・父 VS 婿

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 日本から異世界へ、私の家族がお引越ししてきました。
公爵家へようこそ? アンゾロさん達が荷物をとりあえず、客間の方へ運んでくれて、お父さんと向かい合う様にテーブルに座るイクシオンと私。
お母さんとお祖父ちゃんは、ボン助と姫ちゃんを顔合わせさせていたり、ゲッちゃんをお祖父ちゃんが「ブルータス元気にしてたか」と、よしよしと撫でている。
デンちゃんはお父さんの周りをウロウロして、へっへっへっと尻尾を振っている状態。

「それで、李都……いつ結婚したんだ?」
「あ、うん。十八歳になって一ヶ月ちょっとで結婚式して、結婚したよ」
「ご招待せず、申し訳ありません。何分、そちらとこちらでは時間の流れが違う様でしたので……」

 お父さんがイクシオンをチラッと見てから、アーデルカさんが入れた紅茶を静かに飲む。
うーん。お父さんの顔ってなかなか表情が読めないんだよね。

「李都、時間のズレに関しては、ブルータスが関係しとる」
「そうなの? でもお祖父ちゃん、ゲッちゃんに変な名前つけないで」
「なにを言っとる。ワシが先にブルータスと付けておったんだから、ブルータスだ」
「むぅ。ゲッちゃんはブルータスの方が良い?」
「ゲーキョ?」

 小首を傾げてゲッちゃんはお祖父ちゃんの肩に乗って、何だか嬉しそう……でも、賢者を導いたり神子を導く鳥なんだから、この世界に来ていた賢者のお祖父ちゃんが、先に名前を付けててもおかしくはない。ブルータスで呼んだ方が良いのかな?
うーん。でも、もうゲッちゃんで私は定着しちゃってるし、公爵家でもゲッちゃん呼びなんだよね。

「ブルータスは、一緒に居る時は時を一緒に刻ませるが、世界が離れると賢者や神子との時間にズレを起こさせる」
「へぇー。ゲッちゃんってば、タイムウォッチみたいな鳥なんだね」
「ゲキョーゲキョー」

 のんびりとゲッちゃんがお祖父ちゃんの肩を左右に移動して、私の方へ飛んでくる。

「ブルータス……」
「ゲーキョ?」
「ゲッちゃん」
「ゲキョキョ」
「うん。ゲッちゃんはゲッちゃんだよね」
「ゲーキョ」

 この子はゲッちゃん。ブルータスでもあるけど、ゲッちゃんと名付けたんだから、ゲッちゃんでいい。
うん。私と一緒にサバイバルした家族なんだから、今更だよね。
本名はブルータス。愛称はゲッちゃんでいい。

「イクシオン君だったか? 君は幾つだ?」
「はい。二十七歳です。もうすぐ二十八です」
「公爵というが、若いな……」
「お父さん! もう、感じ悪いから少し言葉のトゲトゲ抜いて」
「リト、大丈夫だから」
「イクス、お父さんが失礼な感じでごめんね?」

 私が一人娘なのもあるだろうけど、お父さんは少し言葉にトゲがある気がする。
まぁ、いつもこんな風と言えば、こんな風でもあるんだけどね。
ただ、デンちゃんがお父さんにべったり甘えていて、尻尾をブンブンで膝に手を乗せているし、イクシオンの尻尾も左右に揺れているんだよね。
お父さん、動物に好かれやすいんだろうか?
それはそれで少し羨ましいけど。

「李都の婿は名前からして、王家の坊ちゃんだろ? 次男坊なのか?」

 お祖父ちゃんがお父さんの隣りに座って、アーデルカさんがお茶を直ぐに淹れてくれる。流石、アーデルカさんの動きは無駄が無い。

「ええ。一応、次男という事になっています」
「なんだか、含んだ言い方だな」

 お父さんとお祖父ちゃんがイクシオンをジッと探る様な目を向けて、イクシオンは少し眉を下げて微笑む。
知らないとはいえ、これは凄く恥ずかしい……ちゃんと、ここに来る前にイクシオンの事情を話しておけばよかった……勝手にこういうプライベートは喋るべきじゃないとは思ってたけど、家族には打ち明けるべきだったかも。

「お父さんもお祖父ちゃんも、イクスに失礼な感じにしないで! イクスは王族だけど、イクスは王家とは関係ないの!」
「しかし、王家という時点で、李都を騙しているかもしれない」
「そうだぞ。召喚して、神子を手に入れる為に、番だと騙したかもしれんだろ?」

 ダンッとテーブルをイクシオンが拳で叩き、こめかみに薄っすら青筋が浮かんで、眉間にしわを寄せてヴ―ッと小さく唸り声を口から出す。
部屋の気温が一気に下がった気がする。

「オレの番への愛を侮辱する事は、例え__賢者でも許さないッ」

 イクシオンのシルバーアメジストの瞳が銀色にゆらっと光り、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。
それと同時にキュンッと胸が高鳴ってしまったのは内緒である。うーん。イケメンの旦那様格好いい。
お父さんが、ふぅと息を吐き、お祖父ちゃんが両手をテーブルの上で組んで、その上に自分の顎を乗せる。

「なるほど、李都の婿は次男ではなく、『王』か……なんでまた、王が公爵なんてやっているんだか」
「むっ、お祖父ちゃん失礼だよ! イクスは、獣人の国は、獅子族の王様に王家を盗られたの! イクスは王家のたった一人の血筋だけど、王座に興味は無いし、お兄さんの王様に命を狙われてる様な人なの! 私の番の匂いを辿って賢者の森に入れないのに会いに来てくれたり、瀕死でも来ようとしてくれたの! 疑ったりしないで!」

 私がお祖父ちゃんとお父さんを睨みつけると、イクシオンが私の頬に優しく触れる。

「リト、すまない。オレが感情を抑えきれない為に、言い争わせてしまって……泣かないでくれ」

 イクシオンの手が頬を包み込むと、私は怒りながら涙を流していたらしい。涙を手で優しく拭きながら、私のおでこにキスをして、お父さんとお祖父ちゃんに「申し訳ありません」と悪く無いのに頭を下げた。
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