やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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2章

冬の雪だるま

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 お屋敷の庭でビブロースさんとチェチェリンさんが雪だるまを作って笑い合っていて、なんだか凄くいい雰囲気だったから「恋人?」と言ったら、後ろからイクシオンに抱きしめられて「なにが?」と聞かれて、窓の外を指さす。

「ああ、あの二人か」
「なんだか、凄くいい感じじゃない?」
「ビブロースは女性は全て妹の様に思っている節があるから、進展はないぞ」
「ええーっ! 番とかは?」
「一応、あの二人は番だが、ビブロースが線引きしている」
「ええ~っ、チェチェリンさんに幸せになって欲しい」

 あんなに優しい目でチェチェリンさんを見つめているし、チェチェリンさんも幸せそうに笑ってるのに? ええーい! ビブロースさん、自分の気持ちに正直に行け―!
窓に張り付くと、イクシオンに窓から引き剥がされる。

「そんなに張り付いていると、あっちに気付かれるぞ?」
「それは不味い。でも、いい雰囲気だと……あっ!」

 チェチェリンさんが、ビブロースさんに頭を下げる様にジェスチャーして、頭の上の雪を払って笑うとビブロースさんが目を閉じて、チェチェリンさんにキスをした。
バッと後ろのイクシオンを見ると、イクシオンも驚いた顔をしていて、ニッと口元を緩ませる。

「見た?」
「ああ、どうやら進展はあったようだな」

 また窓の外を見ると随分長くキスをしているのか、まだキスをしていて、チェチェリンさんがビブロースさんの胸を小さく叩いている所で…‥‥私の目の前が真っ暗になった。

「リトはここまでだ。これ以上は、不躾になってしまうだろう?」
「はぁーい。手を放してー目が見えない~」
「そうだな……少し目を瞑っていて」
「なにかするの?」
「変な事じゃないから、安心しろ」

 目を瞑って、なにかなー? と、カポンと小さな缶のような音がして、唇に何かを押し当てられる。

「リト、あーん」
「あーん……んっ、甘い!」
「目を開けて良いぞ」
「これ、飴玉?」
「ああ。昨日、リトが腰が痛くて動けない時に、移動販売屋が来てな。それで買っておいた」

 昨日は、イクシオンにエッチな事を散々されて腰が痛かったんだよーっ!! イクシオンのせいだと言いたい。
 ちなみに移動販売屋さんは雪の中でもソリを使って、物を売っている根性逞しい販売屋さんで、週に一回くらい冬の間巡回している人達のことである。

 まぁ、喉が少しかすれてはいたから、素直に飴は嬉しい。
イクシオンが雪だるまの絵が描いてある手の平より少し大きめの缶を手にのせてくれて、缶の文字を見れば『スノーキャンディー』と書いてあった。

「この飴は雪の様に溶けていくのが売りらしいぞ?」
「ん、確かに、サラサラ―ッて溶けるの早いかも? 何だか甘くてほわんと花みたいな味」
「ああ、花の蜜で作っている飴らしいからな」

 甘くて美味しい。
イクシオンが私の頬っぺたを指でつんつんしながら笑って、キスをしてきて舌先で口の中を舐めてから口を離し「甘いな」と舌で唇を舐めた。

「キスしなくても、飴あるのに」
「キスがしたかっただけだから、飴はついでだよ」

 抱きしめられて抱きしめ返して笑っていると、窓の外を見ればいつの間にかビブロースさんとチェチェリンさんは居なくなっていて、雪だるまが二つ仲良く寄り添っていた。

「イクス、春にはビブロースさん達の結婚式があるかもしれないね」
「そうだと良いが、まずはヒメの出産の方が忙しいだろうな」
「うん。赤ちゃん何匹生まれるかな?」
「あのサイズの犬なら、二、三匹だろうな」
「はわ~っ、可愛いだろうなぁ」

 きっと可愛い赤ちゃんが生まれるに違いない。
目指せ、モフモフ王国!! ボン助の子孫計画!!
ボン助も姫ちゃんも、この世界の犬じゃないから、子孫が残せないのは寂しいかな? と、思っていたんだよね。
楽しみだなぁ。赤ちゃんのモフモフの毛は柔らかくて触り心地もいいんだよね。

「リト自身は、子供に関してはどうなんだ?」
「うん? 赤ちゃん? 楽しみにしてるよ? ボン助に似ても姫ちゃんに似ても可愛いのは間違いない!」
「いやそうではなくてな、オレとの子供だ」

 イクシオンとの子供? きっとイケメンなイクシオンの遺伝子が入ればそれはそれは可愛い狼耳と尻尾の子供が生まれると思う。
いや、その場合、母親は私になるのかな? いや、私か……私?

「ふっ、わぁーっ!! わ、私の」
「あれだけ愛し合っているのに、そこまでは考えていなかったのか?」
「は、はひ……。だって……エッチはそういうのが前提とは、分かってるんだけど……考えてなくて……はわわ……~っ、イクスは、欲しい?」

 恥ずかしくてモジモジしながら、イクシオンを上目遣いで見ると、優しい目で見つめられて「いつだって望んでいるし、リトと家族を作りたいと思っているよ」と耳元で囁かれる。
王様から狙われたりなんだりしてるから、そういうのは望んでいないのかなー? とか、勝手に思っていたんだけど、違ったみたいで……

「私も、イクスの赤ちゃん、欲しいよ……?」
「一ヶ月以上は一緒にいるのだし、子作りに励んでみようか?」
「はわっ、赤ちゃんは授かりものだから、出来るかはわからないよ?」
「子供が出来るまで励めばいい」
「ううっ、お手柔らかにお願い、します……」

 こういう話し合いは夫婦でも大事だとは思うけど、実際に口に出して相談するのは恥ずかしい~っ!!
イクシオンにお姫様抱っこされて、ベッドの上にポフンと寝かされた。

「イ、イクス、今とは言ってないよ?」
「エイゾウ様が『思い立ったが吉日』という言葉を教えてくれたぞ? やろうと思った時が一番いい日で、子供も出来やすい日だとか言っていたからな」

 お祖父ちゃーんッ!! どういうことわざを教えているんだーっ!!

「その言葉は違うのー! やろうと思った時に直ぐにやった方が、後あとやるよりもいいから、その日にやった事が良い日だったって、事だからぁ~!!」
「なら、大差ないだろう? 今日して子供が出来たら、今日が良い日ということだろう?」

 そう、なのかなぁ?
ううーんと、悩んでいる間に、ポイポイッと服を剥ぎ取られて、子作りという名のエッチで夕飯も食べずに、次の日にヨロヨロしながら「お腹空いたよぅ~」と半べその私が居た。
エッチの体力消耗激し過ぎる……
私の体がもたないよぅ~っ!! 
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