悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

久世家 side二葉

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 久世家の家族とって、末っ子の三香みよしは不思議と家族の流れを回す大事な歯車のような存在だった。
 忙しい両親は子供たちの話を聞き流し気味だが、三香が『一廣いちひろくん凄いよね!』『二葉ふたばちゃん偉いね!』と、兄と姉が両親に聞いてほしい大事な部分を拾って、両親にアピールし、両親は兄や姉の頑張りを聞き逃さずに、褒めたり関心を持つ事が出来た。
 その上、両親が疲れていたりイラついていると、声を掛けたり、家事を手伝って一人の時間を作ってくれる気の利いた子供だった。
 けれど、自分の事はアピールする事が無い。
 三人の子供の中で、一人陽だまりで笑っているような存在。
 
 三香が交通事故に遭い病院に搬送された。そう二葉からの連絡を受けて、家族が病院に駆け込んだ時、三香はこの世を去った後だった。
 声を噛み殺して泣く父親と、叫ぶように泣く母親、そしてまだ体温が残っている三香の手を握って、声を掛けようとしては押し黙る一廣の姿。
 二葉は手に三香のスマートフォンと自分のスマートフォンを握り締め、これは悪い夢だと自分に言い聞かせていた。
 弟を殺してしまった、そんなのは、悪い夢なのだと。


 『野バラのkissで貴方を癒す』のコラボ商品を三香に買いに行かせた後で、二葉のスマートフォンに通知が届いた。
 それは野ギスの運営からで、メンテナンスが延長した事のお詫びに無料ガチャチケットが一枚貰えるというもの。二葉はメンテナンス後に導入された新しいガチャを回し、見事に惨敗した。
 三香に『ガチャチケ回せー!』とメッセージを送り、『帰ったらね』と返される。
 今すぐに回すのよ! と、メッセージを返そうとしたが、二葉はその手を止めた。
 どうせなら、コラボ商品よりも課金させた方が良いのでは? という考えで、二葉は三香を追ってマンションを出た。
 スマートフォンで三香と喋りながら、あと少しで信号待ちをしている三香を見付ける。

「鬼! 悪魔! 人でなし!」

 キャンキャンと三香がスマートフォンに向かって吠え、二葉は鉄拳制裁のつもりで走ってそのままの勢いで、三香を叩くはずだった。
 しかし、十二月の寒さに道路の一部が凍っていて、二葉は足を滑らせた。
 ヤバい! そう思った時には、三香の背中に二葉はぶつかり、目の前で三香は車に撥ねられた。
 
「ミカ……? うそ、でしょ……」

 その場にへたり込んで二葉は茫然と、地面に広がる赤い染みを見ていた。
 家族が三香の死の原因が二葉にある事を知ったのは、葬儀も終わり、四十九日が過ぎる少し前。
 事故の加害者との話し合いで、弁護士が信号付近の防犯カメラを持ち出した事だった。
 防犯カメラには、二葉に突き飛ばされる三香の姿が映し出され、家族は二葉を見知らぬ人を見るような目をした。
 二葉がどんなに、足を滑らせただけで殺す気は無かったと言っても、聞く耳を持ってくれない。
 一廣は毎日のように『三香を返せ!』と言い続け、二葉は謝り続けた。

「三香が居なくなって、あの子がどれだけ家族にとってなくてはならない存在だったか……」
「あの子が居ないと、二葉が本当に自分の娘だったのかすら分からない」

 両親の言葉に、今まで三香を通してしか、自分を見てくれていなかった両親に二葉は気付いたが、もう何もかも遅いのだと諦めた。
 
「三香の部屋はなんなんだ? 全部、お前の玩具だらけ! 三香をなんだと思っていたんだ!」

 一廣の言葉は、二葉も反省するしかない。
 野ギスのグッズで三香の部屋は埋めていたし、今まで散々いいように三香を利用したのは自分だからだ。
 
 そして、三香の一周忌。
 三香の墓の前で、二葉は兄の一廣に殺された。
 泣きながら二葉をナイフで刺し続けた一廣に、二葉は「ごめんなさい」と言葉を残して死んでいった。
 
 再び目を覚ました時、二葉は『フラウ』という少女に生まれ変わっていた。
 子供の頃に海難事故に遭い、孤児となって幾つかの孤児院や教会を転々として生きる事になったのは、とても問題児だったからだ。
 よくいえば『お転婆』悪くいえば『変わり者』。
 前世の記憶が何処か混じっているからか、突飛とっぴな言動が多かったせいもある。
 手に負えない悪童__それが二葉の転生後。

 それが一転してしまうのは、二年前の事だ。
 新しい孤児院に移されるために乗った馬車が横転し、若い男性が下敷きになったのを見た瞬間、前世を思い出してしまった。
 一夜にして髪は白くなり、礼拝堂で神様に向かって謝り続ける。

「ごめんなさい、ごめんなさい、いちひろくん、みか、ごめんなさい」

 神様がいるなら、どうか私を許して__そう毎日願っていた。

 だから、目の前に死んだはずの弟が、こうして自分と隣り合って座って喋って居る事に、二葉は戸惑いを隠せない。
 けれど、「二葉ちゃん」と呼ぶ声は姿かたちは変わっても、弟の三香でしかなかった。
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