悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

ヒロインと悪役

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 二葉ちゃんの話を聞き終わり、俺は少しだけ思う。
 俺の生前の美化が、神格化し過ぎでは無いだろうかと……

「あの、二葉ちゃん。俺、そこまで家族によくしてないんだけど?」
「そんな事ないよ。ミカが居たから、久世家は家族でいられたの」
「父さんも母さんも仕事で忙しいから、一廣くんや二葉ちゃんがテストの結果を見せても、生返事だったでしょ? 二人共、親に褒められたりしないと俺に八つ当たりするじゃん! だから、俺は俺のために、親に二人が褒めて欲しがってるよ! って、アピールしたし、親が疲れて『こっちくんな』オーラ出してた時は、なるべくサポート役に徹して、不機嫌な雰囲気を消したいってだけだったんだよ!」

 そう、俺の行動は全部、俺を守るためのもので、居心地のいい場所を自分で手に入れる事しか知らなかったから、やっていただけなのだ。
 末っ子の守勢術であり、末っ子が可愛がられるといわれる事であり、あざといと言われるところでもある。
 二葉ちゃんたちは俺を過大評価し過ぎなのだ。

「ミカ、ミカには、本当に悪い事をしたって言うだけじゃ足りない。ごめんね、酷いお姉ちゃんで、ごめんね」
「気にしないの。俺、二葉ちゃんの事を恨んでないし、大好きだよ」

 ギュッと二人で抱き合って、お互いに今まで大変だったね、寂しかったねと、言い合っていた。
 ギイィィィと軋むような音を出して、礼拝堂の扉が開く。
 そこにいたのは、なんの表情も表さないルカリオンで、でも長い付き合いの俺には解る。
 あの表情はキレている。それも、ブチ切れ状態だ。

「ルカリオン……?」

 目をパチパチと瞬きして、なんでそんなに怒っているのか? と首を傾げそうになって、ハッと気付く。
 今のこの状況。どう見ても、浮気現場を見られた夫状態では!? 妻かもしれないけど!
 俺がパッと手を離して、二葉ちゃんは目を丸くしてルカリオンを見る。

「ル、ルカリオン様だぁ……」
「あ……」

 そうだ。忘れていたけど、二葉ちゃんの推しはルカリオンだった。
 目をキラキラさせてルカリオンを見ないで欲しい。
 いや、でも、この世界ってヒロインの二葉ちゃんのために攻略対象がいるわけだから、俺が逆に手を引かなきゃいけない存在なのでは?
 
「……食事が、冷める前に来て下さいね」
「ちょっ、待って! ルカリオン!」

 ルカリオンを追って出口まで走ったけれど、扉を閉ざされてしまった。
 扉が閉まる瞬間のルカリオンの目は、怒っているのと困惑と悲しみが入り混じったような目をしていた。
 ちゃんと説明しておかないと、拗れてしまいそう。

「ミカ、なんでルカリオン様が?」
「始めからルカリオンは居たじゃん! 今更気付いたの?」
「だって、ミカしか見えてなかったんだもの」

 二葉ちゃんの心境からすれば、そうだったのかもしれない。
 俺は掻い摘んで、四歳になる少し前からルカリオンと一緒に暮らしてきた事、第一王子を助けたり、攻略対象の性格を改変した事を説明した。

「ねぇ、この世界、ミカがヒロインでいいんじゃない?」
「んなわけ無いでしょ……俺、男だし。それにさ、二葉ちゃんがヒロインなんだから、学園編が始まった事だし、二葉ちゃん学園に来なよ」
「私、回復魔法使えないよ?」
「なんで!?」

 口元を手で押さえて、二葉ちゃんは恥ずかしそうに「だって、キスとか……出来ない」と、至極まっとうな事を言った。
 そうですよね。普通の女の子はそうだよ。
 俺、子供時代にレベルを上げてたからキスはわりとしてたし、投げキッスで回復の中が出来るようになったから、解毒以外じゃキスをするなんて、ルカリオン以外にしてない。

「野ギス、なんでキスが回復なんだよ……」
「ゲームの頃は、こんな事になるなんて思って無かったよね。でも、推しのためなら……少し、頑張れるかも」

 やっぱり、二葉ちゃんの推しはルカリオンか……
 仕方がない、よね。
 ルカリオンのためにも、身を引くのは俺の方だ。
 もう少し前に二葉ちゃんに出会っていたら、まだ手を離す事が簡単……とはいかないけど、心の準備は出来ていたのに、胸の奥がズキズキと痛い。

「協力、するから……」
「うん、でも、まずはこの孤児院から出なきゃなぁ……体も、酷い有り様だし」
「それなら、ヒロインの親戚が一人首都に居るから、話を持って行って引き取ってもらうよ。俺のお金で男爵の爵位を買い取って、貴族になってから学園に来た方が良いよね」

 貴族の一番下の爵位は一代限りの事もあって、お金で買う事も可能なのだ。
 心が健康になれば、二葉ちゃんの体も元のヒロインのように健康体になるだろう。

「あ、そうだ。俺はクロームを避けるために、今はミナって名前で女装しているんだけどさ、二葉ちゃんがそのままミナとして入れ替わればいいんじゃない?」
「え? 上手くいきっこないよ」
「大丈夫。俺も周りの攻略対象も手伝うし」
「でも、それじゃあ……ミカが、悪役になるって事なんじゃ……」
「んー、そこら辺、分からないんだよね。なんか悪役令嬢の座を、他の子に今取られているから」
「何それ!? ミカは悪役令嬢フェルミナ・ドロッセルなのに!」

 令嬢じゃないけど、とツッコミはしたいが、これに関してはどうしようもない。
 俺が偶然とはいえ、ヒロインと同じ髪色に目の色をした姿でうろついていたのだから、ゲーム的な強制力が働いたのかもしれないからだ。

「でも、悪役令嬢が居るなら、ミカはバッドエンドを迎えないで済むのよね?」
「うん……どうかなぁ? もうバッドエンドが確定しちゃっているんだよね」
「ええ!? ミカ、あんた何したのよー!」

 俺は弟が公爵家に生まれて、廃嫡が決まった事を説明し、二葉ちゃんは「追放エンドの平民落ちかぁ」と、ひとまず安心した顔をした。
 元々、貴族でいるより、ベンガルと一緒に魔道具を作ったり、ダンジョンに潜っている方が好きだから、平民落ちエンディングは、非常に助かる。
 ただ、二葉ちゃんの今後の動きで……俺自身がどうなるかが、分からない。
 悪役に戻されるのか、このままなのか、そして好感度を上げていたルカリオンを含めた攻略対象は、どうなるのかも誰も教えてはくれないのだから。
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