悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

文字の大きさ
46 / 73
二章 学園生活

従者と主人

しおりを挟む
 話を終えると礼拝堂から出て、庭になっている広場に行く。
 そこでは長い机の上に白いテーブルクロスが掛けられ、木の器にはスープ、パン、ジャガイモを潰したものに、ニンジンが入ってオレンジ色をしたものと、ほうれん草を入れて緑色にしたものが並んでいた。
 孤児院の子供達が、全員が揃うのを待ち、食べるのを今か今かと興奮気味でいる。

「フタバ、遅いよー」
「フタバの席はここだよ!」

 二葉ちゃんに子供たちが駆け寄り、食事に誘う。
 二葉ちゃんの心が俺への罪悪感と一廣くんへの恐怖で挫けていたのを、二年間支えてくれたのは、あの子供たちなのだろう。
 「ありがとう」と笑う二葉ちゃんに、子供たちは驚いた顔をした後で、嬉しそうに笑いかけていた。
 その様子を見て、俺もホッと息をつく。

「遅かったですね」
「ルカリオン……ごめん。あの、話がしたい」
「……分かりました」

 ルカリオンが俺の手首を掴んで先に歩き始める。
 ピリピリと苛立ったような空気をまとい、不機嫌さを隠そうともしていない。
 サラッとした尻尾の先が、触れるのを拒むように下にさがっている。
 孤児院の裏にある雑木林まで来ると、ルカリオンは立ち止まった。

「で、話はなんです? わたしと別れたい、ですか?」

 突き放すような口調に、胸がズキリと痛む。
 まだ自分の中でもグラつく心は、別れた方が良いというものと、ゲームの攻略対象といっても色々変えられた人生なのだから、俺と一緒の未来もあるかもしれない……そんな淡い期待もある。
 どうして、数いる攻略対象の中でルカリオンを好きになったのだろう。他の攻略対象者なら二葉ちゃんと被らなかったはずだ。

「何故、あなたが泣くのですか? 泣きたいのは、わたしの方です……!」

 気付かないうちに涙が零れて、ルカリオンの顔がぼやけて見えなくなっていた。
 口を開くと、喉の奥が痛くて声は嗚咽になる。
 ルカリオンと二葉ちゃんのために、俺が身を引けば良いだけ、それだけの話。
 
「ルカリオン……ごめん、好きになって、ごめんね」

 ようやく出た言葉はすぐに涙声になって、掠れていく。
 二葉ちゃんとこれからルカリオンが一緒に過ごしていけば、いつか捨てられるのは俺だ。
 だから、ルカリオンが手を離す前に、俺が手を離してあげなきゃいけない。
 だって、俺はルカリオンの主人でルカリオンは従者だから、主人を裏切る事は忠誠心を重んじる獣人にとって、マイナスにしかならないだろう。
 
「わたしより、あの少女を選ぶのですか? そんな事……わたしは認めないっ!」

 首を振れば、噛み付くようなキスで唇を塞がれた。
 俺が二葉ちゃんを選ぶんじゃなくて、ルカリオンが選ぶんだよ。まだ好感度が出会ったばかりで低いだけ。
 二葉ちゃんの事だから、すぐルカリオンの好感度も上がるはず。
 涙と一緒に嗚咽も唾液も呑み込んで、二人の幸せを願える人間でいたい。そう思った。

 服の中に入り込む手の温かさと、肌に噛み付く痛さと口の中の熱。
 慣らすことなく無理やりの挿入に、身を縮こまらせて泣いても、聞き入れてもらえなかった。
 乱暴に抱かれているはずなのに、その抱き方は壊れ物を扱うようにどこか丁寧で、ルカリオンらしい優しさがあったのも事実で……
 いつの間にか、痛みは快感に変わって、泣き声も嬌声になっていく。
 どのくらい交わっていたのか、気付けば馬車の中でルカリオンに抱きしめられたまま揺られていた。

「あ……」
「気付きましたか? もうすぐ学園に着きますから、まだ休んでいて下さい」

 顔を上げてルカリオンを見る事は出来なかったけれど、どこか怒ったままだという事は分かる。
 いつもより体が痛いのは、馬車に揺られているせいか、それとも昨日に続き今日もしたからなのか、いきなり挿入されて乱暴にされたからか……全部なのか。
 部屋に着いたら寝てしまいそうだ。
 でも、二葉ちゃんのためにも、やる事が山積みで、他の人の協力も仰がなくてはいけない。
 二葉ちゃんに挨拶をせずに帰ってきてしまった。
 小さく溜め息を吐いて、ルカリオンの腕の中で頭を擦り付ける。
 その俺の頭の上で、ルカリオンの溜め息も漏れていた。 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...