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4章
膝枕
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「異世界から来た【聖女】らしい」
ソファの上で朱里の膝枕に頭を乗せてルーファスが朱里の顔を見上げながら告げる。
「【聖女】・・・?何だか神々しい感じの女の人だね?」
朱里が少し首をかしげながら言うが、ルーファスは先程の魔法通信で紹介された【聖女】ありすを思い出し、苦笑いする。
「いや、あれは何というか・・・言葉にし辛いタイプの少女だったな」
「女の子なの?【聖女】っていうから、大人な女性で何でも包み込んじゃう人を想像したよ」
ルーファスは朱里の顔に手を伸ばすと、朱里がその手に頬を乗せて押し付ける。
「ルーファス、信用出来そうなの?その魔族の人達は」
少し心配そうに朱里の瞳が揺れながらルーファスを覗くと、ルーファスは安心させるように朱里に笑いかける。
「テンの見立てでは嘘は言っていないようだ。しかし、最近は色々とバカな奴等を見過ぎていたせいか信用出来る程の心の広さが無いからな。用心に用心を重ねて慎重に動くつもりだ」
実際、朱里と出会ってから人の好さそうな人間でも少しの打算で危険人物に変わる事を身に染みて理解しているので、今回は初めから高圧的な態度で脅しを掛けての交渉になりそうだとルーファスは思っている。
【魔王】の称号を持つ青年もまだ【魔王】と呼ぶには若すぎて、ルーファスに言わせれば『子供』でしかない。
『子供』を裏で操る大人が居ないとも限らない。
【魔王】と【聖女】より他に付いてくるであろう人物を怪しんで動くべきか・・・、ルーファスは「ふむ」と考える時のクセで声を出す。
「ルーファス、無茶はしないでね?この交渉、私と【聖女】しかメリットの無い交渉だから、いつでも交渉切り止めて帰ってきてね」
お互いに【病魔】対策のポーションは作れる上に朱里と【聖女】以外にメリットがない交渉でしかない。
逆に言えば、朱里は【病魔】対策のポーション数本あれば対応できるレベルだが、相手の【聖女】は常に体に負担が掛かっている以上、朱里の作るポーションは大量に必要かもしれない。
歩に合わない交渉にならない様に、交渉はポーション同士の交換とはいかないだろう。
あちら側に色々と色を付けて貰わなくては話にもならない。
・・・が、本当に朱里のちょっとした病や瘴気の様な体に害が出る物を【聖女】のポーションで消せるなら、多少の不利な交渉でも進めるしかないとも思っている。
ルーファスにとって一番優先する事は番である朱里でしかない。
「とりあえず、安全の為にも様子見で船に1日泊まる事になると思う。【刻狼亭】は警備を厳重にしておくが、アカリにはその間、従業員の宿舎の方に移ってもらうが良いか?」
「それは構わないけど、なんで宿舎?」
朱里が首をかしげるとルーファスは薄く笑う。
「うちの従業員の噂を知っていれば、従業員の巣窟である宿舎に攻撃を仕掛けた時点で終わりだからな」
朱里が少し首をひねって「ハガネは宿舎に火を点けたんだよね?」と聞くと「アレも一応、従業員だからな」とため息を吐く。
「ハガネはアレはアレで東国の【幻惑】使いで腕の立つ男だからな。うちの従業員になった時点で『家族』認定されている分、身内に甘いオレ達が隙を突かれた・・・という感じだな。まぁ、『家族』が何かやらかしても『家族』だから許してやっているのもあって、アイツは今もここに居られるんだよ。でなければ、今頃、海底に沈めているさ」
ルーファスが眉間にしわを寄せると朱里も眉を下げて笑う。
「ハガネって何だかんだで愛されているよね」
「どうだかな?オレには厄介な男としか思えないが」
ルーファスの手にキスをしながら朱里がルーファスの髪を手で撫でつける。
そんな朱里を眺めながらルーファスが目を細める。
「アカリの方が【聖女】らしくて頷けるんだがな」
「【聖女】なんて柄じゃないよ。まぁ、この世界で病弱な所は似てるかもしれないけど・・・異世界からきた人間って皆この世界では病弱なのかな?」
朱里が小さく首を振りながら、はにかむのを見てルーファスはやはり自分の番は【聖女】だな。と、ほくそ笑む。
「アカリや【聖女】の能力自体が引き起こしている体質だからな。他の異世界人は逆に死ににくいぐらいだ。東国の【勇者】は能力全開放という能力持ちだったらしいしな。死んでも蘇ったなんて伝承も残っている」
朱里が小さく「ずるい」と言うとルーファスが苦笑いしながら目を閉じる。
「あ、ルーファス。船で【聖女】と過ごしても、浮気しちゃ・・・嫌だよ?」
ルーファスが目を開けて朱里を見ると少し目を逸らしながら頬を赤くしている。
おそらく言ってみたかっただけという事がありありと顔に出ているのにルーファスは半目になる。
「オレはアカリの番だから他の人間に目が行くことは無い。それに【聖女】は【魔王】の番だろうな。まぁ、あの様子だと『番の義』も終わって無さそうだが」
クククッとルーファスが笑えば朱里がルーファスの額に顔を寄せておでこにキスを落とす。
「ルーファスってたまに意地悪な事言うよね」
「そうか?まぁ、あの【魔王】を見ていると、番を目の前にしてよく我慢出来ると感心もしているが。番じゃないのにああも必死さを出しているとしたら純情な奴だと揶揄いたくもなるな」
朱里がルーファスの頬を指でつんつんと突きながら困った顔で笑っている。
「意地悪しないの。4日後に交渉があるんだよね?私は何かする事ある?」
「そうだな。とりあえずは何があってもいい様に従業員には武装させておくから、アカリは製薬の奴等の残りと怪我人が出た時用にポーションを用意して待機しててくれ。なるべくそうならない様に、島の大砲を海に向けているが、上陸されてからでは武力が物を言うからな。従業員の近くに居る事。それぐらいだ」
ルーファスが真剣な目で朱里を見つめているのを見て、朱里が頷いて笑う。
「はい。マグノリアとテッチが無茶しないようにルーファスは気を付けてね。あの二人、製薬の事になると我を忘れるから」
「ああ。わかっている」
朱里の膝枕を堪能しながらルーファスは4日後の事に「ふむ」と考え込みながら目を閉じた。
ソファの上で朱里の膝枕に頭を乗せてルーファスが朱里の顔を見上げながら告げる。
「【聖女】・・・?何だか神々しい感じの女の人だね?」
朱里が少し首をかしげながら言うが、ルーファスは先程の魔法通信で紹介された【聖女】ありすを思い出し、苦笑いする。
「いや、あれは何というか・・・言葉にし辛いタイプの少女だったな」
「女の子なの?【聖女】っていうから、大人な女性で何でも包み込んじゃう人を想像したよ」
ルーファスは朱里の顔に手を伸ばすと、朱里がその手に頬を乗せて押し付ける。
「ルーファス、信用出来そうなの?その魔族の人達は」
少し心配そうに朱里の瞳が揺れながらルーファスを覗くと、ルーファスは安心させるように朱里に笑いかける。
「テンの見立てでは嘘は言っていないようだ。しかし、最近は色々とバカな奴等を見過ぎていたせいか信用出来る程の心の広さが無いからな。用心に用心を重ねて慎重に動くつもりだ」
実際、朱里と出会ってから人の好さそうな人間でも少しの打算で危険人物に変わる事を身に染みて理解しているので、今回は初めから高圧的な態度で脅しを掛けての交渉になりそうだとルーファスは思っている。
【魔王】の称号を持つ青年もまだ【魔王】と呼ぶには若すぎて、ルーファスに言わせれば『子供』でしかない。
『子供』を裏で操る大人が居ないとも限らない。
【魔王】と【聖女】より他に付いてくるであろう人物を怪しんで動くべきか・・・、ルーファスは「ふむ」と考える時のクセで声を出す。
「ルーファス、無茶はしないでね?この交渉、私と【聖女】しかメリットの無い交渉だから、いつでも交渉切り止めて帰ってきてね」
お互いに【病魔】対策のポーションは作れる上に朱里と【聖女】以外にメリットがない交渉でしかない。
逆に言えば、朱里は【病魔】対策のポーション数本あれば対応できるレベルだが、相手の【聖女】は常に体に負担が掛かっている以上、朱里の作るポーションは大量に必要かもしれない。
歩に合わない交渉にならない様に、交渉はポーション同士の交換とはいかないだろう。
あちら側に色々と色を付けて貰わなくては話にもならない。
・・・が、本当に朱里のちょっとした病や瘴気の様な体に害が出る物を【聖女】のポーションで消せるなら、多少の不利な交渉でも進めるしかないとも思っている。
ルーファスにとって一番優先する事は番である朱里でしかない。
「とりあえず、安全の為にも様子見で船に1日泊まる事になると思う。【刻狼亭】は警備を厳重にしておくが、アカリにはその間、従業員の宿舎の方に移ってもらうが良いか?」
「それは構わないけど、なんで宿舎?」
朱里が首をかしげるとルーファスは薄く笑う。
「うちの従業員の噂を知っていれば、従業員の巣窟である宿舎に攻撃を仕掛けた時点で終わりだからな」
朱里が少し首をひねって「ハガネは宿舎に火を点けたんだよね?」と聞くと「アレも一応、従業員だからな」とため息を吐く。
「ハガネはアレはアレで東国の【幻惑】使いで腕の立つ男だからな。うちの従業員になった時点で『家族』認定されている分、身内に甘いオレ達が隙を突かれた・・・という感じだな。まぁ、『家族』が何かやらかしても『家族』だから許してやっているのもあって、アイツは今もここに居られるんだよ。でなければ、今頃、海底に沈めているさ」
ルーファスが眉間にしわを寄せると朱里も眉を下げて笑う。
「ハガネって何だかんだで愛されているよね」
「どうだかな?オレには厄介な男としか思えないが」
ルーファスの手にキスをしながら朱里がルーファスの髪を手で撫でつける。
そんな朱里を眺めながらルーファスが目を細める。
「アカリの方が【聖女】らしくて頷けるんだがな」
「【聖女】なんて柄じゃないよ。まぁ、この世界で病弱な所は似てるかもしれないけど・・・異世界からきた人間って皆この世界では病弱なのかな?」
朱里が小さく首を振りながら、はにかむのを見てルーファスはやはり自分の番は【聖女】だな。と、ほくそ笑む。
「アカリや【聖女】の能力自体が引き起こしている体質だからな。他の異世界人は逆に死ににくいぐらいだ。東国の【勇者】は能力全開放という能力持ちだったらしいしな。死んでも蘇ったなんて伝承も残っている」
朱里が小さく「ずるい」と言うとルーファスが苦笑いしながら目を閉じる。
「あ、ルーファス。船で【聖女】と過ごしても、浮気しちゃ・・・嫌だよ?」
ルーファスが目を開けて朱里を見ると少し目を逸らしながら頬を赤くしている。
おそらく言ってみたかっただけという事がありありと顔に出ているのにルーファスは半目になる。
「オレはアカリの番だから他の人間に目が行くことは無い。それに【聖女】は【魔王】の番だろうな。まぁ、あの様子だと『番の義』も終わって無さそうだが」
クククッとルーファスが笑えば朱里がルーファスの額に顔を寄せておでこにキスを落とす。
「ルーファスってたまに意地悪な事言うよね」
「そうか?まぁ、あの【魔王】を見ていると、番を目の前にしてよく我慢出来ると感心もしているが。番じゃないのにああも必死さを出しているとしたら純情な奴だと揶揄いたくもなるな」
朱里がルーファスの頬を指でつんつんと突きながら困った顔で笑っている。
「意地悪しないの。4日後に交渉があるんだよね?私は何かする事ある?」
「そうだな。とりあえずは何があってもいい様に従業員には武装させておくから、アカリは製薬の奴等の残りと怪我人が出た時用にポーションを用意して待機しててくれ。なるべくそうならない様に、島の大砲を海に向けているが、上陸されてからでは武力が物を言うからな。従業員の近くに居る事。それぐらいだ」
ルーファスが真剣な目で朱里を見つめているのを見て、朱里が頷いて笑う。
「はい。マグノリアとテッチが無茶しないようにルーファスは気を付けてね。あの二人、製薬の事になると我を忘れるから」
「ああ。わかっている」
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