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5章
大橋
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製薬のテッチとアルビーが朱里の血を使った特製ポーションを持って魔族の国エグザドルに使者として行って5日目。
アルビーがエグザドルに着いたと魔法通信で連絡があり、朱里もルーファスもホッとしながら、あと10日は帰ってこないアルビーに少しの寂しさを覚えつつ、魔法通信の映像でありすと言い合いをしているアルビーは楽しそうで十分に楽しんできて欲しいとも思っている。
______温泉大陸と大陸を繋ぐ大橋。
【病魔】騒ぎで叩き落とし、今現在、修復工事が行われている。
ようやく人1人通れるだけの骨組みが出来上がった状態になった。
魔法でパッと出来る物かと朱里は思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
「魔法で作ると術者が死んだ時に消えてなくなる可能性もあるからこういうのは手で作るしかねぇな」
そう言ってハガネが大橋を見ながら大陸側から持ち運ばれる物資と運んだ人間のチェックを紙に書き記していく。
夏が終わり秋に差し掛かり、少し早い冬支度の為に今は人の出入りが少しだけ多くなっている。
人が多くなり、忙しくなると働く人材も足りなくなり、ハガネも駆り出されている訳だが、ハガネの横に朱里が居るのはルーファスに少しの間、朱里を見ている様に頼まれたからだ。
大陸側と温泉大陸側に両方に関所の通行門が作られ、前よりも入国の審査が厳しくなった。
関所の門にある窓口が少し開いているだけの部屋。
1時間ほどで戻ると言うルーファスを待っている間、ハガネの横で朱里もハガネが渡してくる書類の人物と目の前の人物が同じかをみて入国許可のハンコを押す手伝いをしている。
今日の朱里は薄手の長袖のコットンチュニックに小鹿色のパンツという商人風の子供と間違われそうな出で立ちで髪の毛はハガネに編み込みをしてもらい黄色の飾り紐と茶色いリボンで結んでもらっている。
そして極めつけのアイテムはルーファスが仕事の時にしている黒メガネをしている所だろうか?
この黒メガネは不正書類や魔法不正そして鑑定が出来る優れもの。
少し情報過多で色々と空中に文字が出てしまうのが面倒くさいが、馴れてしまえばそれほどではない。
「ハガネ、この人の書類なんだけど、微妙にダブってるの」
朱里がハガネに書類を渡すとハガネが書類を見て「あー、偽造だな」と、呟いて首から下げた竹笛を吹くと【刻狼亭】の着物を着た従業員がサッと現れて、書類と書類の人物を連れて行ってしまう。
「今のダブって見える書類は、正規の書類を偽造したものだな。本物の書類を持ってる奴も後で探して話を聞き出さないといけない。まぁ、お手柄だな」
朱里の頭を撫でてハガネが次の書類を手にし、次の荷物と人を通す。
少し得意な顔で朱里が親指を立てるとハガネも親指を立てる。
「それにしても、偽造書類とか不正入国が多いね」
「ああ、まだ他の国も復興が終わってねぇから、冬が来る前に安全な土地に早く逃げようと色々やってんだろうな。こっちはいい迷惑だけどな。逃げ出す前に自分の国を捨てるならちゃんと正規の手続きを踏めってんだ」
ハンコをペタリと押して朱里が苦笑いすると、ハガネがやれやれと次の書類と荷物をチェックする。
そんな繰り返しで気付けばあっという間に1時間が過ぎていた。
「アカリ、待たせてすまない!商人組合の連中に捕まっていた!」
ルーファスが関所の部屋に駆け込んでくると、朱里にタックルする様に飛びついて抱き上げる。
「わわっ!ルーファスお疲れ様」
「若旦那、お疲れ様です」
朱里がずれたメガネを掛け直しながら、手に持っていた書類とハンコをハガネに渡す。
「ハガネ、後は頑張ってね!」
「おう。アカリも冬物市場楽しんで来いよ」
朱里がハガネに手を振りながらルーファスに抱き上げられ、フード付きのポンチョを被る。
「あっ、ルーファス。メガネ返すね」
朱里が眼鏡を外してルーファスに渡すとルーファスはそのまま眼鏡を顔に掛けて笑う。
「はわわっ、ルーファスやっぱりイケメン」
「たまにアカリはそれを言うな。いけめんってなんだ?」
「えと、イケてる、メンズ・・・?カッコイイ男の人って意味かな?」
朱里もイケメンとは連呼するが意味はあまり深くは知らない。
ルーファスがクククッと笑いながら、雑踏の中を機嫌よく歩いていく。
温泉街の港近くで船で入港した商人達がバザールを開き、本日から『冬物市場』が開かれ、少し早めの冬物を買いにルーファスと朱里の2人で買い物に来ている。
人で賑わうバザールに朱里が興味津々で目を輝かせて周りを見つめる。
商人と買い物客が交渉をして値切っている姿や、異世界らしい見た事も無い不思議な道具も売っていて目を楽しませる。
「ルーファス、あのお皿可愛い」
「ん。これか?」
手の平サイズの小さな陶器の深皿に猫の絵が描いてあるシンプルな物をルーファスが取って朱里に見せると、朱里が「クロのご飯皿にどうかな?」とルーファスに尋ねる。
「確かにいいかもしれんが、クロはいつも人の手から餌は貰っているから使わんと思うぞ?」
「あー。確かに。可愛いけど使い道が無いなら駄目だね」
ルーファスが皿を元に戻し、再び歩き始める。
朱里が至る所で「あれ可愛い!」と言うたびにルーファスが手に取り朱里に見せる。
中々に買い物は難航し、結局、今のところ買った物は、兎獣人のアンゴラータ族が売っていたフワフワの毛で編まれた肩掛けと、編み物用に毛糸玉を大量に買い込んだだけだ。
「むっ。この食器一式は良い物だな。店主、これをくれ」
ルーファスが衝動買いの様に四角い籠に入った食器一式を買い占め、朱里に「良い物が手に入った」と、笑って見せる。
「そうなの?普通の白いお皿にしか見えないのに」
「この食器は【保温】魔法が付与されている。冬場には重宝するぞ」
「おおーすごい。魔法の使えない私には【保温】機能は嬉しいかも」
「だろ?他にも掘り出し物があるといいな」
「うん。探そう!」
2人で半分冷やかしに近い形で冬市場を堪能し、市場で売っていた揚げ菓子を半分こにして食べていたところ、大橋の方で煙が上がっているのが見えた。
「ルーファス、何の煙だろ・・・?」
「気にはなるが、今は荷物も多いしな・・・今日は市場はここまでにして家に戻るか」
「ハガネ、大丈夫かな?」
「あいつは殺しても死なんから大丈夫だろう」
2人が荷物を抱えて【刻狼亭】に戻るとすでに大橋の煙の事で従業員が動き出していた。
「大橋で何があった?」
「ああ、若旦那。陽動みたいです。煙であわてたところに紛れ込んで温泉街に入ろうとした奴等がいたので、今対処に当たってるところです」
アルビーがエグザドルに着いたと魔法通信で連絡があり、朱里もルーファスもホッとしながら、あと10日は帰ってこないアルビーに少しの寂しさを覚えつつ、魔法通信の映像でありすと言い合いをしているアルビーは楽しそうで十分に楽しんできて欲しいとも思っている。
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ようやく人1人通れるだけの骨組みが出来上がった状態になった。
魔法でパッと出来る物かと朱里は思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
「魔法で作ると術者が死んだ時に消えてなくなる可能性もあるからこういうのは手で作るしかねぇな」
そう言ってハガネが大橋を見ながら大陸側から持ち運ばれる物資と運んだ人間のチェックを紙に書き記していく。
夏が終わり秋に差し掛かり、少し早い冬支度の為に今は人の出入りが少しだけ多くなっている。
人が多くなり、忙しくなると働く人材も足りなくなり、ハガネも駆り出されている訳だが、ハガネの横に朱里が居るのはルーファスに少しの間、朱里を見ている様に頼まれたからだ。
大陸側と温泉大陸側に両方に関所の通行門が作られ、前よりも入国の審査が厳しくなった。
関所の門にある窓口が少し開いているだけの部屋。
1時間ほどで戻ると言うルーファスを待っている間、ハガネの横で朱里もハガネが渡してくる書類の人物と目の前の人物が同じかをみて入国許可のハンコを押す手伝いをしている。
今日の朱里は薄手の長袖のコットンチュニックに小鹿色のパンツという商人風の子供と間違われそうな出で立ちで髪の毛はハガネに編み込みをしてもらい黄色の飾り紐と茶色いリボンで結んでもらっている。
そして極めつけのアイテムはルーファスが仕事の時にしている黒メガネをしている所だろうか?
この黒メガネは不正書類や魔法不正そして鑑定が出来る優れもの。
少し情報過多で色々と空中に文字が出てしまうのが面倒くさいが、馴れてしまえばそれほどではない。
「ハガネ、この人の書類なんだけど、微妙にダブってるの」
朱里がハガネに書類を渡すとハガネが書類を見て「あー、偽造だな」と、呟いて首から下げた竹笛を吹くと【刻狼亭】の着物を着た従業員がサッと現れて、書類と書類の人物を連れて行ってしまう。
「今のダブって見える書類は、正規の書類を偽造したものだな。本物の書類を持ってる奴も後で探して話を聞き出さないといけない。まぁ、お手柄だな」
朱里の頭を撫でてハガネが次の書類を手にし、次の荷物と人を通す。
少し得意な顔で朱里が親指を立てるとハガネも親指を立てる。
「それにしても、偽造書類とか不正入国が多いね」
「ああ、まだ他の国も復興が終わってねぇから、冬が来る前に安全な土地に早く逃げようと色々やってんだろうな。こっちはいい迷惑だけどな。逃げ出す前に自分の国を捨てるならちゃんと正規の手続きを踏めってんだ」
ハンコをペタリと押して朱里が苦笑いすると、ハガネがやれやれと次の書類と荷物をチェックする。
そんな繰り返しで気付けばあっという間に1時間が過ぎていた。
「アカリ、待たせてすまない!商人組合の連中に捕まっていた!」
ルーファスが関所の部屋に駆け込んでくると、朱里にタックルする様に飛びついて抱き上げる。
「わわっ!ルーファスお疲れ様」
「若旦那、お疲れ様です」
朱里がずれたメガネを掛け直しながら、手に持っていた書類とハンコをハガネに渡す。
「ハガネ、後は頑張ってね!」
「おう。アカリも冬物市場楽しんで来いよ」
朱里がハガネに手を振りながらルーファスに抱き上げられ、フード付きのポンチョを被る。
「あっ、ルーファス。メガネ返すね」
朱里が眼鏡を外してルーファスに渡すとルーファスはそのまま眼鏡を顔に掛けて笑う。
「はわわっ、ルーファスやっぱりイケメン」
「たまにアカリはそれを言うな。いけめんってなんだ?」
「えと、イケてる、メンズ・・・?カッコイイ男の人って意味かな?」
朱里もイケメンとは連呼するが意味はあまり深くは知らない。
ルーファスがクククッと笑いながら、雑踏の中を機嫌よく歩いていく。
温泉街の港近くで船で入港した商人達がバザールを開き、本日から『冬物市場』が開かれ、少し早めの冬物を買いにルーファスと朱里の2人で買い物に来ている。
人で賑わうバザールに朱里が興味津々で目を輝かせて周りを見つめる。
商人と買い物客が交渉をして値切っている姿や、異世界らしい見た事も無い不思議な道具も売っていて目を楽しませる。
「ルーファス、あのお皿可愛い」
「ん。これか?」
手の平サイズの小さな陶器の深皿に猫の絵が描いてあるシンプルな物をルーファスが取って朱里に見せると、朱里が「クロのご飯皿にどうかな?」とルーファスに尋ねる。
「確かにいいかもしれんが、クロはいつも人の手から餌は貰っているから使わんと思うぞ?」
「あー。確かに。可愛いけど使い道が無いなら駄目だね」
ルーファスが皿を元に戻し、再び歩き始める。
朱里が至る所で「あれ可愛い!」と言うたびにルーファスが手に取り朱里に見せる。
中々に買い物は難航し、結局、今のところ買った物は、兎獣人のアンゴラータ族が売っていたフワフワの毛で編まれた肩掛けと、編み物用に毛糸玉を大量に買い込んだだけだ。
「むっ。この食器一式は良い物だな。店主、これをくれ」
ルーファスが衝動買いの様に四角い籠に入った食器一式を買い占め、朱里に「良い物が手に入った」と、笑って見せる。
「そうなの?普通の白いお皿にしか見えないのに」
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「だろ?他にも掘り出し物があるといいな」
「うん。探そう!」
2人で半分冷やかしに近い形で冬市場を堪能し、市場で売っていた揚げ菓子を半分こにして食べていたところ、大橋の方で煙が上がっているのが見えた。
「ルーファス、何の煙だろ・・・?」
「気にはなるが、今は荷物も多いしな・・・今日は市場はここまでにして家に戻るか」
「ハガネ、大丈夫かな?」
「あいつは殺しても死なんから大丈夫だろう」
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