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10章
書簡の呼び出し
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「ルーファスこれ!これ何なの?!」
朱里が差し出した既に蝋封が解かれた書簡にルーファスが目を通し、眉根をしかめる。
不安そうに瞳を揺らせてガタガタと小刻みに震える朱里に、ルーファスが「大丈夫だ」と優しく声を掛ける。
「だって、ルーファスを犯罪者にするとか書いてあるって!」
朱里の声に事務所に居た人間も眉間にしわを寄せてガタッと音を立てる。
ルーファスが周りにも「大丈夫だ」と声を掛ける。
朱里の乱れた髪を手櫛で直しながら、テンのカーディガンをテンに返し、自分の羽織を朱里に掛けると朱里を椅子に座らせて書簡を机の上に広げる。
「少し前からオレを騙る詐欺師が出没して犯罪を繰り返しているらしい。この書簡もその事件で犯人が捕まらずにどうしようもなくなった騎士団からの呼び出しみたいなものだ」
「でも、ルーファスは関係ないのに・・・どうして犯罪者リストに載せるだなんて」
まだ震えの治まらない朱里の手を両手で掴み安心しろと微笑む。
「調べれば直ぐに判る事だろうが、オレが女性に結婚を仄めかして金銭を奪ったとかで女性から名指しで訴えられているから事情聴取に来なければ、犯罪者リストの載せてギルド本部から人を派遣して逮捕する・・・と、いう事らしい。犯人の男が捕まっていないから名指しで犯人扱いされているオレの濡れ衣を晴らす為にも来い。と、いうのが正しいな」
「そんな・・・」
朱里の顔が血色を無くすとフッと意識を失ってゆっくり倒れるとルーファスが抱きとめて、小さくため息を吐く。
「悪いが午後からの業務はシュテンに任せてオレはアカリを家に連れて帰る。あと、聞いての通り暫く事情聴取でここを離れないといけなくなった。その旨もシュテンに伝えておいてくれ」
「わかりました。お大事になさってくださいねぇ」
テンがルーファス達を見送りながら、事務所に居た人間に言伝をシュテンに頼み、書簡にあった蝋封の印から何処から届いた物かを調べ始める。
グリムレインが旅館を出ると乗って行けと背中を指さし、朱里を抱いたまま背に乗りこむ。
「のう、婿よ。我が代わりに婿に化けて行ってやろうか?」
「ん?なんだ随分優しいなグリムレイン」
「婿の為ではなく、嫁の為だがな。嫁は婿が側におらんと心が不安定になる。我はそれが心配なのだ」
「そうか。まぁ、今回の呼び出しはミールにも関係がある事かもしれないからな、朱里の体調が戻ったら行こうとは思っていた案件ではある」
ミールの父親かもしれない詐欺師の男を探す為にも、書簡の呼び出しの騎士団に詐欺師の話を詳しく聞き出すために出向こうとは思っていた。朱里の体調も気になっていたが、どのような結果が出るのかミールを思うと少し踏ん切りがつかなかったのもある。
これは丁度いい機会だったのかもしれない。
「ミール・・・?どういう、事なの?」
「アカリ、気が付いたか。あと少しで家に着く。家に着いたらゆっくり話す」
「今、教えて。これ以上不安になりたくない」
「まだ憶測の域の話だ。だからアカリもそれを頭に置いといてくれ」
朱里が頷くとルーファスが朱里をギュッと抱きしめながら話し始める。
「黒狼族で銀目の一族は【病魔】の時にほぼ全滅している。詐欺師の男はその一族の生き残りなのだろう。黒狼族は数が少なくてな。ほとんどの黒狼族は銀目の一族が大半を占めていたから、その一族が全滅したらこの世界で黒狼族はオレ含めて10人も居ない」
「じゃあ、その詐欺の男がミールの父親の可能性が高いの?」
「黒狼一族の数を考えれば、可能性は高い。他の黒狼族の人間を調べたが他は小鬼の情報でも見つけられなかった」
朱里が顔に手を当てながら小さく声を漏らす。
「犯罪者が親だとしたら、余計にミールを手放すなんて出来ない」
「まぁ、まだミールの父親かは分からない。それをハッキリさせる為にも事情聴取を受ける手間暇をその詐欺師の情報と交換で貰ってくるつもりだ」
『女将亭』に着くとルーファスが朱里を抱き上げたままリビングに戻り、リュエールとシュトラールが耳を下げたまま心配そうな顔をして朱里に抱きつき、朱里が「ごめんね」と2人を腕に抱きながら、自分が取り乱したら子供が不安になるだけなのに突っ走ってしまった事に少し反省をした。
夕飯になり、リビングに全員揃うと、ルーファスがしばらくの間温泉大陸を留守にすることを皆に告げる。
「じゃあ僕もついて行く!」
「オレもついて行く!」
リュエールとシュトラールが手を上げて主張するとルーファスが眉尻を下げる。
「オレは遊びに行くわけでは無い。リューもシューも母上と妹達を守ってオレの居ない間留守を頼む」
バッと白い手が上がる。
「私もついて行く!」
「ハッ?アカリ?!」
「嫁が行くなら我も行く」
「だったら俺も行くしかないだろ?」
グリムレインとハガネも手を上げるとルーファスが眉間に指を置きながら机に肩肘をついて、盛大にため息を吐いた。
朱里が差し出した既に蝋封が解かれた書簡にルーファスが目を通し、眉根をしかめる。
不安そうに瞳を揺らせてガタガタと小刻みに震える朱里に、ルーファスが「大丈夫だ」と優しく声を掛ける。
「だって、ルーファスを犯罪者にするとか書いてあるって!」
朱里の声に事務所に居た人間も眉間にしわを寄せてガタッと音を立てる。
ルーファスが周りにも「大丈夫だ」と声を掛ける。
朱里の乱れた髪を手櫛で直しながら、テンのカーディガンをテンに返し、自分の羽織を朱里に掛けると朱里を椅子に座らせて書簡を机の上に広げる。
「少し前からオレを騙る詐欺師が出没して犯罪を繰り返しているらしい。この書簡もその事件で犯人が捕まらずにどうしようもなくなった騎士団からの呼び出しみたいなものだ」
「でも、ルーファスは関係ないのに・・・どうして犯罪者リストに載せるだなんて」
まだ震えの治まらない朱里の手を両手で掴み安心しろと微笑む。
「調べれば直ぐに判る事だろうが、オレが女性に結婚を仄めかして金銭を奪ったとかで女性から名指しで訴えられているから事情聴取に来なければ、犯罪者リストの載せてギルド本部から人を派遣して逮捕する・・・と、いう事らしい。犯人の男が捕まっていないから名指しで犯人扱いされているオレの濡れ衣を晴らす為にも来い。と、いうのが正しいな」
「そんな・・・」
朱里の顔が血色を無くすとフッと意識を失ってゆっくり倒れるとルーファスが抱きとめて、小さくため息を吐く。
「悪いが午後からの業務はシュテンに任せてオレはアカリを家に連れて帰る。あと、聞いての通り暫く事情聴取でここを離れないといけなくなった。その旨もシュテンに伝えておいてくれ」
「わかりました。お大事になさってくださいねぇ」
テンがルーファス達を見送りながら、事務所に居た人間に言伝をシュテンに頼み、書簡にあった蝋封の印から何処から届いた物かを調べ始める。
グリムレインが旅館を出ると乗って行けと背中を指さし、朱里を抱いたまま背に乗りこむ。
「のう、婿よ。我が代わりに婿に化けて行ってやろうか?」
「ん?なんだ随分優しいなグリムレイン」
「婿の為ではなく、嫁の為だがな。嫁は婿が側におらんと心が不安定になる。我はそれが心配なのだ」
「そうか。まぁ、今回の呼び出しはミールにも関係がある事かもしれないからな、朱里の体調が戻ったら行こうとは思っていた案件ではある」
ミールの父親かもしれない詐欺師の男を探す為にも、書簡の呼び出しの騎士団に詐欺師の話を詳しく聞き出すために出向こうとは思っていた。朱里の体調も気になっていたが、どのような結果が出るのかミールを思うと少し踏ん切りがつかなかったのもある。
これは丁度いい機会だったのかもしれない。
「ミール・・・?どういう、事なの?」
「アカリ、気が付いたか。あと少しで家に着く。家に着いたらゆっくり話す」
「今、教えて。これ以上不安になりたくない」
「まだ憶測の域の話だ。だからアカリもそれを頭に置いといてくれ」
朱里が頷くとルーファスが朱里をギュッと抱きしめながら話し始める。
「黒狼族で銀目の一族は【病魔】の時にほぼ全滅している。詐欺師の男はその一族の生き残りなのだろう。黒狼族は数が少なくてな。ほとんどの黒狼族は銀目の一族が大半を占めていたから、その一族が全滅したらこの世界で黒狼族はオレ含めて10人も居ない」
「じゃあ、その詐欺の男がミールの父親の可能性が高いの?」
「黒狼一族の数を考えれば、可能性は高い。他の黒狼族の人間を調べたが他は小鬼の情報でも見つけられなかった」
朱里が顔に手を当てながら小さく声を漏らす。
「犯罪者が親だとしたら、余計にミールを手放すなんて出来ない」
「まぁ、まだミールの父親かは分からない。それをハッキリさせる為にも事情聴取を受ける手間暇をその詐欺師の情報と交換で貰ってくるつもりだ」
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バッと白い手が上がる。
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「嫁が行くなら我も行く」
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