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12章
試験官4日目 前編
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4日目の冒険者試験は通常通り行われることになり、いつも通りギルド施設に足を運ぶと6人の筆記試験試験官の4人が包帯を巻いての出勤となっていた。
昨日ギルド試験が行われなかった理由がこの試験官の治療の為だと理解して手に包帯を巻いていたリンディに声を掛けると明るい彼女は困った顔で笑う。
「一応わたしも冒険者のCランクなのにこの有様だよ。参っちゃう。ミヤ試験官は大丈夫だったの?」
「はい。私はルーが連れて逃げてくれたので」
「そっかー。犬君偉いね。でも実技試験官になるだけはあるんだね」
「ルーが強いだけなので私は1人だったらボコボコにされてますよ」
「でもミヤ試験官って魔法使えるでしょ?何人か魔法で反撃されて失格になったみたいだし」
「あー・・・ちょっぴり・・・です」
曖昧に笑って誤魔化しつつ、魔法なんて使ってはいないんだけどなぁと心の中でため息を吐く。
魔法反射のペンダントでそのまま魔法が反射してしまった人と性格的に冒険者にするのは難ありとルーファスが判断した受講者には朱里が魔法を唱えている振りをしながらルーファスが魔法で放ち倒している。
ルーファスは少し機嫌が悪そうにリンディを見るがいつもの様に唸ったりはしないのはリンディが怪我人だからだろうか?
ギルド職員が朱里の方へやってくるとすまなさそうな顔になる。
「ミヤ試験官、悪いが今日から1人で受け持ってもらう事になる」
「え?そうなんですか?ジェイゴ試験官は?」
「実はジェイゴ試験官が一番の重傷で復帰できそうにないんだ」
「そうですか・・・わかりました」
ギルド職員にそう告げられ、同じ実技試験官のジェイゴという男性冒険者が来れない事を聞かされる・・・が、半分はどうでもいい感じでもある。
ジェイゴは自分があと少しでBランクに上がる実力者だと言って朱里とルーファスにほとんどの受講者を押し付けていて、女受講者ばかりを担当したがっていたので些か朱里も少し腹に据えかねていたところもあるからだった。
「それにしてもミヤ試験官って衣装持ちですね」
「そんな事ないですよ。洋服はそんなに持っていなくて、家にある冒険者用の服を全部持って来た感じですから」
普段はほとんど着物なのと、冒険者に向かない薄手の服や授乳しやすい服ばかりしかない。
冒険者用に寒さにも暑さにも強い布地で出来ている特殊な服と矢や剣を通さない網タイツ等を以前買ってもらったのを持って来たぐらい冒険者用の服は少ない。
今日着ている物はチャイナ服に似ているが絹に見える布地が実は細かな物理反射の糸を織り込んだ物で、【刻狼亭】のお仕着せや朱里やルーファスの着物に入っている【刻狼】の文字の糸にも使われているらしい。
朱里が試験官の実技担当とわかるや否や従業員達が安全の為にも着てくださいと【風雷商】から布を買い取り、2日で縫い上げた物である。
スリットがルーファスに怒られたが、矢も通さないタイツも穿くし、腰にはポーションホルダーも下げてしまうのであまりきわどい所まではポーションホルダーが邪魔して見えないから大丈夫だと朱里が言い、ルーファスが少しむくれた。
一応、チャイナなら髪はお団子頭が良いかな?と、シニョンヘアにしているが、ルーファスにはサービスのし過ぎだとコレもダメ出しを出されていたりする。
「ミヤ試験官のご両親はお金持ちなんですか?」
「あー・・・両親は14の時に亡くなっているので居ません。この服は私が試験官をする事になったと聞いた知り合い達がくれた物なんです」
「あ、ごめんなさい。変な事聞いちゃって。でもわたしも親切な知り合いが欲しいですよー。この服なんて着回しですよ」
リンディが自分の服を摘まんで見せる。
リンディが来ているのは普通の麻のシャツに上に革のベストとズボンは少し厚手の物で物を大量に入れられる仕様になっている物らしく、ボックス型のポケットが大量に付いている。
大抵の冒険者は清浄魔法で服は汚れを落として毎日同じ物を着ているので朱里の様に毎日違う服を着ている冒険者は上級クラスの冒険者くらいなのだが、【刻狼亭】の人間はそういう事をコロッと忘れているぐらいには下級クラスの冒険者事情を忘れている。
冒険者ギルドの営業時間になり、扉が開くと今日もまた冒険者と冒険者試験を受けに来た受講者が所狭しとギルド内に入ってくる。
たった数日の間とはいえ、冒険者達が気さくに声を掛けてくれるのは少し嬉しいものもあり、いつもの様に挨拶にきた冒険者に挨拶を返す。
「おはよう。今日のミヤ試験官は変わった服装だな」
「おはようございます。まぁ寒そうに見えるかもしれませんが、結構これ温かいのですよ?」
「それ、シルクだろ?ミヤ試験官どんだけギルドから給金貰ってるんだ?」
「ふふっ。秘密です」
ギルドから試験官に支払われる給金が実は雀の涙も良いところなのだが、試験官にならない限りは知らない事実なので内緒にしておく。
試験官はギルド職員に弱みを握られている場合が多いので安く使われてしまうのである。
食事にしても3食お金が出るが1食、白銅貨5枚(500円)なのである。
そしてギルドが取ってくれている宿は1日、銅貨1枚(1000円)の風呂無しトイレ無し食事なしのベッドがあるだけの宿なので、文句があれば自分で宿も食事代も用意するしかないのである。
他の試験官はよく文句も言わないなぁとは思っている。やはり弱みを握られると言い返したくても言えない物なのか・・・。
「うおっ、ミヤ試験官今日はこれまた可愛いな」
「ありがとうございます。おだてても何も出ませんよ」
「グルルル」
「今日もルーはミヤ試験官の護衛に手を抜かねぇな」
「ルーは私の大事なパートナーですから。ねー、ルー」
ルーファスが頭を擦り付けながら、もう訓練場に行くぞとばかりに朱里のお尻をグイグイ押して力押しで朱里を連れて行く。
「ルー、やきもちですか?」
「判っているなら、オレ以外を誘惑するな」
「誘惑なんてしてないよ!もう、私に誘惑されてくれるのはルーくらいですよ」
前かがみになって朱里が手を広げるとルーファスがポフッと胸の谷間に顔を埋めてフンフンと息を嗅ぐ。
「誘惑完了。捕獲です。ふふっ」
「クククッ。オレを誘惑できるのはミヤだけだからな」
2人で受講者が実技試験に来るまで訓練場のベンチの上で身を寄せ合っていると1時間ほどで筆記試験を終えた受講者達が実技の方へ案内されてくる。
「ミヤ試験官、受講者1番です。準備は良いですか?」
職員に言われ、1番目は女の子かーと、思っているとルーファスが朱里の足をタシタシと2回踏んでくる。
この2回踏む合図は「合格」の合図なのだが、戦ってもいないのに良いのかな?と、ルーファスを見れば、頷くので「合格」でいいらしい。
「1番さんは「合格」です。私の「降参」で大丈夫です」
試験官と受講者1番の少女が「えっ?」と声を上げて朱里を見ると朱里はルーファスと練習した通りに笑って喋る。
「冒険者になれる資格があるかどうかを戦う前から見極めるのも、試験官の能力ですから。1番さん冒険者としてこれからの活躍を期待しています」
「ミヤ試験官、良いのですか?」
「はい。試験官の私が「降参」をしたので1番さんは合格です」
「あの、アタシは戦ってちゃんと合格をしたい!」
1番の受講者の少女が少し困ったような怒った様な顔をして朱里に詰め寄ってくる。
どうやら負けん気の強い子なのかもしれない。
「ルー、どうします?」
ルーファスに聞けば、スリッと朱里に頭を摺り寄せて耳元に顔を近づけると小さく囁く。
「軽く倒すが、この子は合格で良いからな」
朱里がルーファスに頷いて、1番の少女に「ではお相手いたしますね」と笑いかける。
勝負はルーファスのいう様に直ぐに着いたが、少女は普通に強く動きも素早かった。相手がルーファスじゃなかったら、きっと圧勝していたのではないだろうか?と、思う。
「あなたの負けですが、でも最初に私は「降参」を言っていますので、合格ですよ。あなたは冒険者になるだけの素質のある子ですから、頑張って」
グスッと少女が鼻をすすり上げて「納得いかないけど、でも、ありがとうございました!」頭を下げて少女が訓練場を出ていくと、小休憩でベンチに座りルーファスにコップで果実水を渡す。
「ルー、あの子強かったですね」
「ああ、他の新人たちには無い足の動きをしていたからな。あの子はいい冒険者になるだろう」
「足の動きですか?」
「あの子はこの訓練場の出入り口付近に埋めてある罠に見立てた石全てを回避して歩いていた」
「そんな物があるんですか?!」
「仮にも冒険者の訓練場なのだから何でもないような物が罠に見立てられたりしている」
「ふぇー・・・お勉強になります」
1番の少女以外はその日の合格者は無く、ギルドの終業時間になり挨拶をしてギルドの施設を出ると1番の受講者の少女が朱里を見付けると駆け寄って来た。
「ミヤ試験官!」
「はい?どうかしましたか?」
「あの、アタシはモアといいます!ミヤ試験官、ミヤ試験官はこのギルド支部の方じゃないんですよね?」
「はい。そうですよ」
「ミヤ試験官のギルド支部は何処になるんですか?」
「特に私に支部はないかな?それがどうかしたの?」
「そうですか・・・なら、活動している場所とかはないんですか?」
「んーっ、特にないけど、しいて言うなら温泉大陸付近かな?」
「あー・・・やっぱり、ミヤ試験官強いですもんね・・・」
強いのはルーファスなんですけどね。と、笑顔の下で思いながらモアが沈んだ顔をしているのを見て首を傾げる。
「アタシ強くなって温泉大陸とか行けるぐらい凄腕の冒険者になりますから、いつかパーティーを組んでください!」
「私、Cランクですよ?それにモアさんの方が強いですよ?」
モアは首をブンブンと勢い良く振ると、朱里の手を取って「頑張ります!」と言う。
「試験官になる人は何か理由があるって聞きました!ミヤ試験官は本当は強いのに何か理由があってCランクに落とされたんでしょう?アタシ、絶対、頑張って追いつきますから!」
モアはそれだけ言うと「いつかまたー!」と元気に手を振って去っていく。
「あらら・・・元気な子でしたね」
ルーファスがフッと鼻で笑って朱里に行こうと促して2人で夕暮れの街を歩いて行く。
昨日ギルド試験が行われなかった理由がこの試験官の治療の為だと理解して手に包帯を巻いていたリンディに声を掛けると明るい彼女は困った顔で笑う。
「一応わたしも冒険者のCランクなのにこの有様だよ。参っちゃう。ミヤ試験官は大丈夫だったの?」
「はい。私はルーが連れて逃げてくれたので」
「そっかー。犬君偉いね。でも実技試験官になるだけはあるんだね」
「ルーが強いだけなので私は1人だったらボコボコにされてますよ」
「でもミヤ試験官って魔法使えるでしょ?何人か魔法で反撃されて失格になったみたいだし」
「あー・・・ちょっぴり・・・です」
曖昧に笑って誤魔化しつつ、魔法なんて使ってはいないんだけどなぁと心の中でため息を吐く。
魔法反射のペンダントでそのまま魔法が反射してしまった人と性格的に冒険者にするのは難ありとルーファスが判断した受講者には朱里が魔法を唱えている振りをしながらルーファスが魔法で放ち倒している。
ルーファスは少し機嫌が悪そうにリンディを見るがいつもの様に唸ったりはしないのはリンディが怪我人だからだろうか?
ギルド職員が朱里の方へやってくるとすまなさそうな顔になる。
「ミヤ試験官、悪いが今日から1人で受け持ってもらう事になる」
「え?そうなんですか?ジェイゴ試験官は?」
「実はジェイゴ試験官が一番の重傷で復帰できそうにないんだ」
「そうですか・・・わかりました」
ギルド職員にそう告げられ、同じ実技試験官のジェイゴという男性冒険者が来れない事を聞かされる・・・が、半分はどうでもいい感じでもある。
ジェイゴは自分があと少しでBランクに上がる実力者だと言って朱里とルーファスにほとんどの受講者を押し付けていて、女受講者ばかりを担当したがっていたので些か朱里も少し腹に据えかねていたところもあるからだった。
「それにしてもミヤ試験官って衣装持ちですね」
「そんな事ないですよ。洋服はそんなに持っていなくて、家にある冒険者用の服を全部持って来た感じですから」
普段はほとんど着物なのと、冒険者に向かない薄手の服や授乳しやすい服ばかりしかない。
冒険者用に寒さにも暑さにも強い布地で出来ている特殊な服と矢や剣を通さない網タイツ等を以前買ってもらったのを持って来たぐらい冒険者用の服は少ない。
今日着ている物はチャイナ服に似ているが絹に見える布地が実は細かな物理反射の糸を織り込んだ物で、【刻狼亭】のお仕着せや朱里やルーファスの着物に入っている【刻狼】の文字の糸にも使われているらしい。
朱里が試験官の実技担当とわかるや否や従業員達が安全の為にも着てくださいと【風雷商】から布を買い取り、2日で縫い上げた物である。
スリットがルーファスに怒られたが、矢も通さないタイツも穿くし、腰にはポーションホルダーも下げてしまうのであまりきわどい所まではポーションホルダーが邪魔して見えないから大丈夫だと朱里が言い、ルーファスが少しむくれた。
一応、チャイナなら髪はお団子頭が良いかな?と、シニョンヘアにしているが、ルーファスにはサービスのし過ぎだとコレもダメ出しを出されていたりする。
「ミヤ試験官のご両親はお金持ちなんですか?」
「あー・・・両親は14の時に亡くなっているので居ません。この服は私が試験官をする事になったと聞いた知り合い達がくれた物なんです」
「あ、ごめんなさい。変な事聞いちゃって。でもわたしも親切な知り合いが欲しいですよー。この服なんて着回しですよ」
リンディが自分の服を摘まんで見せる。
リンディが来ているのは普通の麻のシャツに上に革のベストとズボンは少し厚手の物で物を大量に入れられる仕様になっている物らしく、ボックス型のポケットが大量に付いている。
大抵の冒険者は清浄魔法で服は汚れを落として毎日同じ物を着ているので朱里の様に毎日違う服を着ている冒険者は上級クラスの冒険者くらいなのだが、【刻狼亭】の人間はそういう事をコロッと忘れているぐらいには下級クラスの冒険者事情を忘れている。
冒険者ギルドの営業時間になり、扉が開くと今日もまた冒険者と冒険者試験を受けに来た受講者が所狭しとギルド内に入ってくる。
たった数日の間とはいえ、冒険者達が気さくに声を掛けてくれるのは少し嬉しいものもあり、いつもの様に挨拶にきた冒険者に挨拶を返す。
「おはよう。今日のミヤ試験官は変わった服装だな」
「おはようございます。まぁ寒そうに見えるかもしれませんが、結構これ温かいのですよ?」
「それ、シルクだろ?ミヤ試験官どんだけギルドから給金貰ってるんだ?」
「ふふっ。秘密です」
ギルドから試験官に支払われる給金が実は雀の涙も良いところなのだが、試験官にならない限りは知らない事実なので内緒にしておく。
試験官はギルド職員に弱みを握られている場合が多いので安く使われてしまうのである。
食事にしても3食お金が出るが1食、白銅貨5枚(500円)なのである。
そしてギルドが取ってくれている宿は1日、銅貨1枚(1000円)の風呂無しトイレ無し食事なしのベッドがあるだけの宿なので、文句があれば自分で宿も食事代も用意するしかないのである。
他の試験官はよく文句も言わないなぁとは思っている。やはり弱みを握られると言い返したくても言えない物なのか・・・。
「うおっ、ミヤ試験官今日はこれまた可愛いな」
「ありがとうございます。おだてても何も出ませんよ」
「グルルル」
「今日もルーはミヤ試験官の護衛に手を抜かねぇな」
「ルーは私の大事なパートナーですから。ねー、ルー」
ルーファスが頭を擦り付けながら、もう訓練場に行くぞとばかりに朱里のお尻をグイグイ押して力押しで朱里を連れて行く。
「ルー、やきもちですか?」
「判っているなら、オレ以外を誘惑するな」
「誘惑なんてしてないよ!もう、私に誘惑されてくれるのはルーくらいですよ」
前かがみになって朱里が手を広げるとルーファスがポフッと胸の谷間に顔を埋めてフンフンと息を嗅ぐ。
「誘惑完了。捕獲です。ふふっ」
「クククッ。オレを誘惑できるのはミヤだけだからな」
2人で受講者が実技試験に来るまで訓練場のベンチの上で身を寄せ合っていると1時間ほどで筆記試験を終えた受講者達が実技の方へ案内されてくる。
「ミヤ試験官、受講者1番です。準備は良いですか?」
職員に言われ、1番目は女の子かーと、思っているとルーファスが朱里の足をタシタシと2回踏んでくる。
この2回踏む合図は「合格」の合図なのだが、戦ってもいないのに良いのかな?と、ルーファスを見れば、頷くので「合格」でいいらしい。
「1番さんは「合格」です。私の「降参」で大丈夫です」
試験官と受講者1番の少女が「えっ?」と声を上げて朱里を見ると朱里はルーファスと練習した通りに笑って喋る。
「冒険者になれる資格があるかどうかを戦う前から見極めるのも、試験官の能力ですから。1番さん冒険者としてこれからの活躍を期待しています」
「ミヤ試験官、良いのですか?」
「はい。試験官の私が「降参」をしたので1番さんは合格です」
「あの、アタシは戦ってちゃんと合格をしたい!」
1番の受講者の少女が少し困ったような怒った様な顔をして朱里に詰め寄ってくる。
どうやら負けん気の強い子なのかもしれない。
「ルー、どうします?」
ルーファスに聞けば、スリッと朱里に頭を摺り寄せて耳元に顔を近づけると小さく囁く。
「軽く倒すが、この子は合格で良いからな」
朱里がルーファスに頷いて、1番の少女に「ではお相手いたしますね」と笑いかける。
勝負はルーファスのいう様に直ぐに着いたが、少女は普通に強く動きも素早かった。相手がルーファスじゃなかったら、きっと圧勝していたのではないだろうか?と、思う。
「あなたの負けですが、でも最初に私は「降参」を言っていますので、合格ですよ。あなたは冒険者になるだけの素質のある子ですから、頑張って」
グスッと少女が鼻をすすり上げて「納得いかないけど、でも、ありがとうございました!」頭を下げて少女が訓練場を出ていくと、小休憩でベンチに座りルーファスにコップで果実水を渡す。
「ルー、あの子強かったですね」
「ああ、他の新人たちには無い足の動きをしていたからな。あの子はいい冒険者になるだろう」
「足の動きですか?」
「あの子はこの訓練場の出入り口付近に埋めてある罠に見立てた石全てを回避して歩いていた」
「そんな物があるんですか?!」
「仮にも冒険者の訓練場なのだから何でもないような物が罠に見立てられたりしている」
「ふぇー・・・お勉強になります」
1番の少女以外はその日の合格者は無く、ギルドの終業時間になり挨拶をしてギルドの施設を出ると1番の受講者の少女が朱里を見付けると駆け寄って来た。
「ミヤ試験官!」
「はい?どうかしましたか?」
「あの、アタシはモアといいます!ミヤ試験官、ミヤ試験官はこのギルド支部の方じゃないんですよね?」
「はい。そうですよ」
「ミヤ試験官のギルド支部は何処になるんですか?」
「特に私に支部はないかな?それがどうかしたの?」
「そうですか・・・なら、活動している場所とかはないんですか?」
「んーっ、特にないけど、しいて言うなら温泉大陸付近かな?」
「あー・・・やっぱり、ミヤ試験官強いですもんね・・・」
強いのはルーファスなんですけどね。と、笑顔の下で思いながらモアが沈んだ顔をしているのを見て首を傾げる。
「アタシ強くなって温泉大陸とか行けるぐらい凄腕の冒険者になりますから、いつかパーティーを組んでください!」
「私、Cランクですよ?それにモアさんの方が強いですよ?」
モアは首をブンブンと勢い良く振ると、朱里の手を取って「頑張ります!」と言う。
「試験官になる人は何か理由があるって聞きました!ミヤ試験官は本当は強いのに何か理由があってCランクに落とされたんでしょう?アタシ、絶対、頑張って追いつきますから!」
モアはそれだけ言うと「いつかまたー!」と元気に手を振って去っていく。
「あらら・・・元気な子でしたね」
ルーファスがフッと鼻で笑って朱里に行こうと促して2人で夕暮れの街を歩いて行く。
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