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14章
狂った果実4
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テーブルに並んだトロトロに煮込まれたライノピポカの肉を使った角煮にもつ煮にトゥートとハンペンの挟みサラダバジルソース和え紫蘇少々、そして『竜の癒し木』の実で作ったお酒を手にグリムレインが満足そうに出来上がっていた。
自分の好物を前に上機嫌になるのは良い事だ。
しかし、色々と聞きたかった事があったのに、聞ける状態ではないのは些か困ってしまう。
「グリムレイン飲み過ぎですよ?」
「嫁よ。酌をするといい」
「いえ、ですから、飲み過ぎですよー?」
トロンとした目で出来上がっているグリムレインに今日は何を聞いても無駄だと朱里が諦めて、帰って来たばかりのグリムレインにお酒を出したハガネをジロッと睨むが、こちらはこちらでお酒を飲んでグデングデンになっている。
「私の従者が駄目すぎる・・・」
ルーファスは【刻狼亭】でニートライの件でニートライの従者と今後の話もあるらしく、従業員達とも話があると仕事に戻り、リュエールの所へティルナールを迎えに行き、大人しく『女将亭』へ帰ってみれば・・・長い事家を空けていたグリムレインを労ってハガネが色々と準備したらしい。
「まぁ、グリムレインも久々に家に帰れて気が抜けたんでしょ」
「シューちゃん・・・、仕方が無いから2人をそこら辺に転がしておいてくれる?」
「いいけど、2人共重いからなぁ」
「魔獣より軽いからシューちゃんなら大丈夫」
シュトラールが片眉を上げて「母上は・・・」と、ため息を吐く。
「シューちゃんのそういう顔ルーファスそっくりで母上は大好きです!」
「・・・父上似ではあるけど、こういう時の顔を好きって言われるのはどうかと思う」
ぶつぶつ文句を言いながらシュトラールが酔っ払い2人をソファの上に担いで横にして、朱里がサッとテーブルの上のお酒を片付けてしまう。
小さな子供のいる家では子供の口に入りそうな危険な物は即座に撤収させるのが原則である。
食べ残された料理も片付けて朱里がリビングに戻って戸棚に仕舞っておいた最中を持ってくる。
「はい。シューちゃんモナカだよ。お餅と栗と抹茶の3種類」
「オレは餅いりでいいや」
「私は・・・んーっ抹茶!最近は抹茶の良さがわかる様になったからこれが大人ってやつだよ。シューちゃん」
「それって舌が衰えてきた老化の証拠じゃ・・・って、母上、冗談だから」
「ゆるさなーい」と、朱里がシュトラールのお腹をくすぐりながらリビングでワーワー騒いでいると「ただいまー」とミルアとナルアとギルが帰ってくる。
3人は最近ルーシーのお世話をしながらルーシーのお昼寝中に魔力の勉強をしている。
基本はハガネが教え込んでいるが、ギルは実戦で使える様に教え込んでいる節がある・・・が、温泉大陸の当主の娘であり、次期当主の妹となると、やはり身を守る術は必要だとギルが怪我をしない程度に教えている。
何だかんだで、ミルアとナルアは戦闘能力が高い為に早いうちに体の使い方を覚えさせないと、手加減を知らずに他人を怪我させてからでは遅いというのもある。
「ミル、ナルおかえり。寒かったでしょ?何か飲み物入れようか?」
「シュー兄様、体がポカポカなので冷たいのが良いです」
「シュー兄様、何だか美味しそうな匂いがします」
シュトラールがここぞとばかりに朱里から逃げてミルアとナルアを構いに行く。朱里が「もう!逃げましたね!」と頬を膨らませつつ、ミルアとナルアとギル用にコップを用意する。
「ギルさん、ミルアとナルアをありがとうございました」
「気にしなくていいですよ。物を教えるのは好きですから」
ミルアとナルアはミッカジュースを飲むとテーブルに置いてある最中に手を伸ばし食べ始める。朱里の抹茶最中はナルアの物になったようだ。ギルには紅茶を淹れて差し出すと紅茶の匂いを嗅いで目を伏せながらギルが紅茶に口を付けて口元に笑みをこぼす。
ギルの目を細めるところはルーファスに似ている・・・親戚なんだなぁとしみじみギルの顔を見ながら朱里が思っていると、ギルが「そういえば」と口を開く。
「慈善家が温泉大陸に来ているらしいですね?」
「慈善家・・・ああ、もしかしてニートライさんですか?」
「ええ。来ている様ですね」
「一応・・・まぁ」
「歯切れが悪いですね。ニートライにはお世話になりましたし挨拶に行かなくてはいけないので後で泊っている部屋を教えてください」
「あの、その・・・ちょっと無理です。ニートライさんは少しお忙しくなるので」
身内と言えど、顧客の醜態(?)を口にする事も憚られるので曖昧に濁すとギルが片眉を上げる。
紅茶の入ったティーカップを口から離してギルが懐から小さな手帳を出すと、手帳をパラパラと捲って朱里に見える様に目の前に開く。
●医療慈善家 ノーグダム・アバロン 4人暴行逮捕
●魔獣保護管 スワン・ヒーネム 森林保護区に放火逮捕
●孤児援助団体 『オーシャン』職員5人 孤児殺傷逮捕
●慈善家 ヒルダ・マーグル 猥褻罪 罰金刑
●慈善家 カークランド・リヒテン 猥褻罪 罰金刑
「何ですか・・・これ?」
「ここ2ヶ月で起きた慈善家や団体施設職員による犯罪です。恐らく隠蔽された物もあると思うので掴めたのは一握りですけどね」
「・・・ギルさんは知っているんですか?」
「冒険者と貴族は情報が命ですから」
ギルが形のいい唇に孤を描いて「【魔果】ですね」と言って手帳をパタンと閉じる。
自分の好物を前に上機嫌になるのは良い事だ。
しかし、色々と聞きたかった事があったのに、聞ける状態ではないのは些か困ってしまう。
「グリムレイン飲み過ぎですよ?」
「嫁よ。酌をするといい」
「いえ、ですから、飲み過ぎですよー?」
トロンとした目で出来上がっているグリムレインに今日は何を聞いても無駄だと朱里が諦めて、帰って来たばかりのグリムレインにお酒を出したハガネをジロッと睨むが、こちらはこちらでお酒を飲んでグデングデンになっている。
「私の従者が駄目すぎる・・・」
ルーファスは【刻狼亭】でニートライの件でニートライの従者と今後の話もあるらしく、従業員達とも話があると仕事に戻り、リュエールの所へティルナールを迎えに行き、大人しく『女将亭』へ帰ってみれば・・・長い事家を空けていたグリムレインを労ってハガネが色々と準備したらしい。
「まぁ、グリムレインも久々に家に帰れて気が抜けたんでしょ」
「シューちゃん・・・、仕方が無いから2人をそこら辺に転がしておいてくれる?」
「いいけど、2人共重いからなぁ」
「魔獣より軽いからシューちゃんなら大丈夫」
シュトラールが片眉を上げて「母上は・・・」と、ため息を吐く。
「シューちゃんのそういう顔ルーファスそっくりで母上は大好きです!」
「・・・父上似ではあるけど、こういう時の顔を好きって言われるのはどうかと思う」
ぶつぶつ文句を言いながらシュトラールが酔っ払い2人をソファの上に担いで横にして、朱里がサッとテーブルの上のお酒を片付けてしまう。
小さな子供のいる家では子供の口に入りそうな危険な物は即座に撤収させるのが原則である。
食べ残された料理も片付けて朱里がリビングに戻って戸棚に仕舞っておいた最中を持ってくる。
「はい。シューちゃんモナカだよ。お餅と栗と抹茶の3種類」
「オレは餅いりでいいや」
「私は・・・んーっ抹茶!最近は抹茶の良さがわかる様になったからこれが大人ってやつだよ。シューちゃん」
「それって舌が衰えてきた老化の証拠じゃ・・・って、母上、冗談だから」
「ゆるさなーい」と、朱里がシュトラールのお腹をくすぐりながらリビングでワーワー騒いでいると「ただいまー」とミルアとナルアとギルが帰ってくる。
3人は最近ルーシーのお世話をしながらルーシーのお昼寝中に魔力の勉強をしている。
基本はハガネが教え込んでいるが、ギルは実戦で使える様に教え込んでいる節がある・・・が、温泉大陸の当主の娘であり、次期当主の妹となると、やはり身を守る術は必要だとギルが怪我をしない程度に教えている。
何だかんだで、ミルアとナルアは戦闘能力が高い為に早いうちに体の使い方を覚えさせないと、手加減を知らずに他人を怪我させてからでは遅いというのもある。
「ミル、ナルおかえり。寒かったでしょ?何か飲み物入れようか?」
「シュー兄様、体がポカポカなので冷たいのが良いです」
「シュー兄様、何だか美味しそうな匂いがします」
シュトラールがここぞとばかりに朱里から逃げてミルアとナルアを構いに行く。朱里が「もう!逃げましたね!」と頬を膨らませつつ、ミルアとナルアとギル用にコップを用意する。
「ギルさん、ミルアとナルアをありがとうございました」
「気にしなくていいですよ。物を教えるのは好きですから」
ミルアとナルアはミッカジュースを飲むとテーブルに置いてある最中に手を伸ばし食べ始める。朱里の抹茶最中はナルアの物になったようだ。ギルには紅茶を淹れて差し出すと紅茶の匂いを嗅いで目を伏せながらギルが紅茶に口を付けて口元に笑みをこぼす。
ギルの目を細めるところはルーファスに似ている・・・親戚なんだなぁとしみじみギルの顔を見ながら朱里が思っていると、ギルが「そういえば」と口を開く。
「慈善家が温泉大陸に来ているらしいですね?」
「慈善家・・・ああ、もしかしてニートライさんですか?」
「ええ。来ている様ですね」
「一応・・・まぁ」
「歯切れが悪いですね。ニートライにはお世話になりましたし挨拶に行かなくてはいけないので後で泊っている部屋を教えてください」
「あの、その・・・ちょっと無理です。ニートライさんは少しお忙しくなるので」
身内と言えど、顧客の醜態(?)を口にする事も憚られるので曖昧に濁すとギルが片眉を上げる。
紅茶の入ったティーカップを口から離してギルが懐から小さな手帳を出すと、手帳をパラパラと捲って朱里に見える様に目の前に開く。
●医療慈善家 ノーグダム・アバロン 4人暴行逮捕
●魔獣保護管 スワン・ヒーネム 森林保護区に放火逮捕
●孤児援助団体 『オーシャン』職員5人 孤児殺傷逮捕
●慈善家 ヒルダ・マーグル 猥褻罪 罰金刑
●慈善家 カークランド・リヒテン 猥褻罪 罰金刑
「何ですか・・・これ?」
「ここ2ヶ月で起きた慈善家や団体施設職員による犯罪です。恐らく隠蔽された物もあると思うので掴めたのは一握りですけどね」
「・・・ギルさんは知っているんですか?」
「冒険者と貴族は情報が命ですから」
ギルが形のいい唇に孤を描いて「【魔果】ですね」と言って手帳をパタンと閉じる。
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