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14章
狂った果実6【魔果の始まり1】
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大森林の奥深く、ドリアード族の聖なる樹が大地から吸い上げた栄養を葉に乗せ、一滴だけ雫を落とす。
その雫を下で受け取るのがドリアード族の若木達の仕事。雫はどの葉から落ちるか分からない為に、若木達は朝早くから葉っぱで作った桶を持ちながら、聖なる樹を見上げて右往左往する。
聖なる樹の雫はドリアード達のご馳走で雫を飲めば飲むだけ生命力のあるドリアードになっていく。
____タンッ。
雫の落ちる音と受け止めた葉っぱで出来た桶の音に若木達は「今日は誰が受け止めたのか」と今日の幸運な若木を見ようと音の方へ顔を向ける。
体は人型で頭に枝や葉が生えているのがドリアード族の特徴で肌の色は褐色より少し薄い土色をしている。
しかし、若木と呼ばれる幼年期は体の色は薄い緑色をしている。その為に、今日の幸運な若木が白い肌をしているドリアード族の鼻つまみ者だと判ると、若木達は嬉しそうだった顔から表情を無くし、冷めた目で白い肌の若木を見つめて仕事は終わりだとばかりにさっさと自分達の家に帰っていく。
1人葉っぱの桶を持ち、聖なる樹の雫を見つめる肌の白い若木は唇を噛みしめながら泣くものかと歩き出す。
白い肌のドリアード族の若木の名前は ” サル ” という。
意味は『汚い』という言葉で、サルはこの名前が悪意があって付けられた物だと知っている。
サルの母親はドリアード族で父親は冒険者で何者かは解らない。
サルの住んでいるドリアード族の村の近くにあるダンジョンに来た冒険者で、サルの母親が道案内をした時に恋中になったらしい。
しかし、冒険者の父親はダンジョンから生きては帰らなかった。
母親のお腹の中にサルが宿っていた事すら知らぬままに、母親は難産の末にサルを産み落としたが、そのまま帰らぬ人となってしまった。
サルは生まれ落ちたその時から肌の色が抜け落ちた様に白く、村人たちは不気味がって付けた名前も『汚い』だった。
生まれつきのものはサルにはどうする事も出来ない。父親が別の種族の人間で肌が白い種族なのかも母親が亡くなっている為に知りようも無かった。
サルは村人の情けで生かしてもらっているようなもので、母親が住んでいた小さなウッドハウスと呼ばれる木をくり抜いて作られた家で1人で暮らしている。
何度も村の若木達から「村から出ていけ」と言われた事か・・・それでもサルにはこの村以外の世界を知らない為に出て行く事すら出来なかった。
そんなサルだったが、ある日村が賑やかで笑い声が漏れていた為に、少しだけ興味が湧いてウッドハウスから顔を覗かせれば、別のドリアード族の村から1人の若いドリアード族の娘が嫁いできたらしい。
娘の名前はフィリーア。
サルと違って意味は『愛』で家族から愛されて暮らしてきた娘だった。
可愛らしく綺麗な花を咲かせたドリアードだった。
フィリーアは村人と違い、サルに色々な事を教えてくれ親切であった。
サルという名前は余りに酷いと ” サルターナル ” と呼んでくれた。
意味は『頑張り屋』という物で、1人で頑張って生きているサルにはピッタリだとフィリーアが言って村でただ一人サルをサルターナルと呼んでくれた。
「サルターナル、一緒に森にベリーポップを摘みに行かない?」
「・・・おれと居るとまた村の人にイヤミを言われるよ」
フィリーアにそう言って背を向けて歩くと、追ってきて「サルターナルに道案内してほしいのよ」と騒いでサルターナルと連呼して結局、しつこさにサルが折れて一緒に行く事になる。
毎度そんな感じでフィリーアに付き合わされる。
村人に白い目で見られてもフィリーアは「これだから閉鎖的な村は駄目なのよ」と言って村人に逆にフンッとそっぽを向く。
「フィリーア!いい加減、村の人達と仲良くしてくれ!」
「あら、旦那様ごきげんよう。私はちゃんと村の住民のサルターナルと仲良くしているじゃない」
「フィリーア!そういう屁理屈を言うのはやめてくれ!」
「あなた達この村のドリアードは小さな若木1人を差別することで団結をしている様で私はこの村の人も、そういうあなたも嫌いだわ!行きましょう!サルターナル!」
サルの腕を引いてフィリーアが歩き出し、サルはフィリーアの夫のドリアードを困惑して見るが、憎しみの満ちた目で睨まれ、サルは直ぐに視線を外しかなかった。
「フィリーア・・・こういうのは良くないと思うよ」
「サルターナ、気にしないで良いわ。1人を爪弾きにして生活しているこの村の人達の方がおかしいの。旦那様もそうよ。優しい人だけれど、それをサルターナにも向けられないなら、あの人の優しさは石ころ並みって事なのよ」
「フィリーア・・・」
気持ちは嬉しいがフィリーアが村人たちから白い目で見られ、厄介な余所者が来たと噂される程になっている。
それに自分のせいで優しいフィリーアが夫と仲違いをしているのも申し訳が無かった。
どこか居心地の良さと悪さの狭間でサルの気持ちは落ち着かなかった。
その雫を下で受け取るのがドリアード族の若木達の仕事。雫はどの葉から落ちるか分からない為に、若木達は朝早くから葉っぱで作った桶を持ちながら、聖なる樹を見上げて右往左往する。
聖なる樹の雫はドリアード達のご馳走で雫を飲めば飲むだけ生命力のあるドリアードになっていく。
____タンッ。
雫の落ちる音と受け止めた葉っぱで出来た桶の音に若木達は「今日は誰が受け止めたのか」と今日の幸運な若木を見ようと音の方へ顔を向ける。
体は人型で頭に枝や葉が生えているのがドリアード族の特徴で肌の色は褐色より少し薄い土色をしている。
しかし、若木と呼ばれる幼年期は体の色は薄い緑色をしている。その為に、今日の幸運な若木が白い肌をしているドリアード族の鼻つまみ者だと判ると、若木達は嬉しそうだった顔から表情を無くし、冷めた目で白い肌の若木を見つめて仕事は終わりだとばかりにさっさと自分達の家に帰っていく。
1人葉っぱの桶を持ち、聖なる樹の雫を見つめる肌の白い若木は唇を噛みしめながら泣くものかと歩き出す。
白い肌のドリアード族の若木の名前は ” サル ” という。
意味は『汚い』という言葉で、サルはこの名前が悪意があって付けられた物だと知っている。
サルの母親はドリアード族で父親は冒険者で何者かは解らない。
サルの住んでいるドリアード族の村の近くにあるダンジョンに来た冒険者で、サルの母親が道案内をした時に恋中になったらしい。
しかし、冒険者の父親はダンジョンから生きては帰らなかった。
母親のお腹の中にサルが宿っていた事すら知らぬままに、母親は難産の末にサルを産み落としたが、そのまま帰らぬ人となってしまった。
サルは生まれ落ちたその時から肌の色が抜け落ちた様に白く、村人たちは不気味がって付けた名前も『汚い』だった。
生まれつきのものはサルにはどうする事も出来ない。父親が別の種族の人間で肌が白い種族なのかも母親が亡くなっている為に知りようも無かった。
サルは村人の情けで生かしてもらっているようなもので、母親が住んでいた小さなウッドハウスと呼ばれる木をくり抜いて作られた家で1人で暮らしている。
何度も村の若木達から「村から出ていけ」と言われた事か・・・それでもサルにはこの村以外の世界を知らない為に出て行く事すら出来なかった。
そんなサルだったが、ある日村が賑やかで笑い声が漏れていた為に、少しだけ興味が湧いてウッドハウスから顔を覗かせれば、別のドリアード族の村から1人の若いドリアード族の娘が嫁いできたらしい。
娘の名前はフィリーア。
サルと違って意味は『愛』で家族から愛されて暮らしてきた娘だった。
可愛らしく綺麗な花を咲かせたドリアードだった。
フィリーアは村人と違い、サルに色々な事を教えてくれ親切であった。
サルという名前は余りに酷いと ” サルターナル ” と呼んでくれた。
意味は『頑張り屋』という物で、1人で頑張って生きているサルにはピッタリだとフィリーアが言って村でただ一人サルをサルターナルと呼んでくれた。
「サルターナル、一緒に森にベリーポップを摘みに行かない?」
「・・・おれと居るとまた村の人にイヤミを言われるよ」
フィリーアにそう言って背を向けて歩くと、追ってきて「サルターナルに道案内してほしいのよ」と騒いでサルターナルと連呼して結局、しつこさにサルが折れて一緒に行く事になる。
毎度そんな感じでフィリーアに付き合わされる。
村人に白い目で見られてもフィリーアは「これだから閉鎖的な村は駄目なのよ」と言って村人に逆にフンッとそっぽを向く。
「フィリーア!いい加減、村の人達と仲良くしてくれ!」
「あら、旦那様ごきげんよう。私はちゃんと村の住民のサルターナルと仲良くしているじゃない」
「フィリーア!そういう屁理屈を言うのはやめてくれ!」
「あなた達この村のドリアードは小さな若木1人を差別することで団結をしている様で私はこの村の人も、そういうあなたも嫌いだわ!行きましょう!サルターナル!」
サルの腕を引いてフィリーアが歩き出し、サルはフィリーアの夫のドリアードを困惑して見るが、憎しみの満ちた目で睨まれ、サルは直ぐに視線を外しかなかった。
「フィリーア・・・こういうのは良くないと思うよ」
「サルターナ、気にしないで良いわ。1人を爪弾きにして生活しているこの村の人達の方がおかしいの。旦那様もそうよ。優しい人だけれど、それをサルターナにも向けられないなら、あの人の優しさは石ころ並みって事なのよ」
「フィリーア・・・」
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