黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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16章

ロックヘル

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 ロックヘルのある都市エフリはドワーフの都市機械都市とは別の意味で未知の機械化された都市。
ドワーフの機械都市が世界一騒がしい都市ならば、このエフリは静かな都市で、白い建物が建ち並び、物音がしない為に時が止まったように感じてしまう事もある。

 エフリの都市は巨大な銀行都市ともいえる。
小鬼の持っている財布は金貨を入れると銀行に金貨は入り、必要な時に財布に手を入れればお金が出て来るのだが、その財布の中身の金貨は、この銀行都市にある。
大抵この銀行都市エフリに皆お金は入れていて、お金を入れると小鬼の持っている財布の様な物を渡される。
これがお金を取り出す為のアイテムといえる。

街の住人は小人達が多く、2頭身の小人は小鬼とよく似た生態ではあるが、小鬼の様に角や羽は無い。
無表情で感情はあまり出さない。
逆に小鬼は表情豊かで感情は賑やかな性質と言える。
まさに正反対の種族で、実のところ非常に仲が悪いのである。

 仕事熱心なのは小人も小鬼も同じだが、小人は秘密厳守。小鬼はお金次第という所もあり、小人からしたら小鬼達は非常に不快な種族なのである。
小鬼側からしたら、他人の資産にしか興味がなく自分達の資産を増やそうともしない変な種族の小人達は理解できないのである。

 小人が唯一嫌味を言い感情を見せるのが小鬼で、小鬼達は小人達の弱みの1つでも握ってすました顔の小人をギャフンといわせてやりたいと常日頃から思っている。

「これは・・・またどうした事でしょうね・・・」
「こんな事になっているとはな・・・何故ここまでの状態になっても情報が出回っていなかったんだ」
「それは小人に会いに行く僕らは少ないって事です」

 白い建物の多いエフリの都市は今は見る影もなく黒煙を上げながら黒く染まっている。
街中を獣騎を走らせて通ってみるが、戦場の後の様に崩れた建物と、黒く小さくなった生き物の残骸があるだけだった。

「とにかく、この都市の最重要区間ロックヘルに急ぐぞ!」
「ええ。急ぎましょう」
「あっ、この情報を流しても良いですか?!」
「ああ。急いで小鬼達に状況を伝えろ!」

 小鬼が目をくるくると忙しそうに動かしながらエフリの都市を自分の目で記憶して取りこぼしの無い様にしていく。随時、小鬼のネットワークで流していくと他の小鬼達は急いで情報を取り寄せて行く。

『小人達何かヘマしたんでしょうか?僕ら気になります!』
『今それを僕調べてきます!』
『情報待ってます!頑張って温泉大陸の小鬼!』

 そんな会話もネットワーク内で他の小鬼として小鬼はテンの肩にしがみ付きながら、自分達の天敵を探す為に目を凝らす。
あるのは銀行都市を守る警備兵のゴーレムの残骸ばかり。

 一際異質な建物が中央にあり、白い建物が多いエフリの都市で岩肌の様な建物をしているのが『ロックヘル』なのである。
ロックヘルに近付くと、小人達が石像の様に固まり、ロックヘルの入り口を固めている。
これは攻撃を受けた小人が自分と財貨を守る為の最終段階の状態で、呪いを利用した石化なのである。

「こいつら仕事をヘマしましたね!」

 小鬼がテンの肩から降りて固まっている小人に蹴りを軽く入れると余りの固さに足をピョンピョンと上げながら「痛いっ!」と涙目になりテンに「何をしてるんですかぁー・・・」と呆れた声を出された。

「ロックヘルは小人が守り切っているのかどうかも分からんなこの状態では」

 入り口も建物全体も、都市全体の小人が集まって守ろうとしたのか小人で埋め尽くされている。
石化状態の小人は重く退かせない上に、意思の疎通もはかれない状態なので普通ならばお手上げ状態という所である。

 ルーファスが自分の手の平から鍵を出して空中に鍵を差し込み空間から朱里の特殊ポーションを取り出す。
一番近くに居た小人に振りかけると、体から湯気を出して小人が無表情の顔でルーファスを見上げる。

「一体ここで何があった?」

 小人が小さな眼鏡をクイッと指で押し上げて目を左右に動かし少し目を閉じる。
小人が後ろを振り向き、ロックヘルを見上げて何人かの小人の肩に手を置くと、手を当てられた小人は石化を解いて道を開けて行く。

「何があったか聞いているのに無視ですか!」
「・・・小鬼に情報を言うわけが無い」
「ムキィーッ!こっちはここに金貨を預けているんです!何があったか知る権利があるのです!」
「小鬼ごときの金貨なぞ我ら小人にははした金。上客になってから出直せ」
「キィィィッ!」

 小人と小鬼の言い争いにテンが「うちの子を苛めないで下さい」と小鬼を拾い上げる。

「小鬼はともかく、お客様に説明できる様に状況を把握しますから少々お待ちください」

 小人は他の小人を元に戻しながら奥へ奥へと建物の中へ入っていき、ルーファス達も後に続き歩いて行く。
建物の中へようやく足を踏み込むと、小人達が巨大なミミズの様な物にしがみ付いて石化している。

「これは・・・『岩喰虫ロックワーム』ですね!僕知ってます!」
「チッ。口の軽い小鬼はベラベラとうるさいですね・・・」
「何おぉ!小人はヘマをしたんですから精々そのすまし顔で謝罪するといいのです!」

 ムッとした小人が小鬼を睨むと小鬼はビクッとしながらテンにしがみ付き「べぇー」っと舌を出す。

「お前等の金貨が岩喰虫に食われている事を期待しろ」
「キャーッ!!!!!」

 金貨の大好きな小鬼を怯えさせる一言を小人が言ってようやく勝ち誇った顔をした。
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