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16章
風雷商の三男
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【風雷商】は代々【刻狼亭】に付き合いのある古物商で、色々と取り扱いの多い商人ギルドの派閥の1つである。
アシュレイ・ビンクスはルーファスの幼馴染ではあるものの、今現在はありすと一緒に新技術開発に力を注いでいる為に長男が【風雷商】を継ぎ、次男が営業や他店との共同で忙しく動き回っている。
そして三男ロケルト・ビンクスは特に役職は無い・・・運送屋の様な物だ。
要は【風雷商】の小間使いの様な物で、こうした『熱病』等で制限される場所へ【風雷商】のビンクス家の身分でしか入国が出来ない様な時の特別運送が彼の仕事。
ロケルトはビンクス家というだけの男だったりする。
基本、不真面目で女にだらしがなく直ぐフラフラと女性に言い寄り問題を起こす為に四男がもう少し育ったらロケルトは販売部門か裏方に回すべきかとアシュレイに思われている。
ロケルト本人もそれは気付いているが、それならそれで今を楽しむ気満々で動いている。
他の兄弟3人よりも顔がアシュレイに瓜二つで他の兄弟には使えないアシュレイと同じ能力『細工魔法』を引き継いでいるのに生かす事も出来ていない。
ルーファスがアシュレイから聞いているのはそんな感じの事で、目の前の青年に少しどうしたものかと同じ三男という立場のティルナールを見るが、流石に年が違い過ぎて判断基準にもならない。
ティルナールはルーファスを見上げながらえへーっと笑って腕に顔を擦りつけている。
「2人共ごめんね、少し支度に手間取っちゃって」
髪の毛を2つに分けて三つ編みにしてお団子頭にした朱里が白いワンピースに黒いレース付きのキリン達とお揃いの物を着てエプロンを付けながら外に出て来る。
朱里のお茶とジュース造りが終わり、あとは温泉大陸に来る人々に飲ませていくだけなので無事に露店復帰となった。そしてティルナールの最後のスタンプが本日終わりという感じである。
「ははえー、あいしぃー」
「はーい。ティル、アイス食べてスタンプ最後の押そうね」
朱里とティルナールが顔を近付けて小さく鼻をツンと付けると笑い合ってルーファスに「アカリ・トリニア今日から露店復帰です!」と元気に敬礼してえへへっと笑う。
笑い方がティルと一緒だとルーファスが思いながら「ああ」と言っておでこにキスをする。
「あら?アシュレイ・・・さん?」
朱里がようやくロケルトの存在に気付き首を傾げる。
スクッとロケルトが立ち上がり朱里の手を取って頭を下げると、ルーファスに手をはたき落とされてグルルルと小さく唸る。
「ロケルト・ビンクスです。可愛い妖精さんだね!」
「【風雷商】のロケルト坊ちゃんの監視役ヒリングです。うちの坊ちゃんがすいません!」
「・・・ぶふっ、妖精っっ!!」
朱里が吹き出すとお腹を押さえながら「やめてー!アシュレイさんの顔で、ぶふっ、妖精、ぷはは」と笑いのツボに入ったらしくお腹が痛いーっと言うまで笑い転げていた。
ルーファスが朱里の笑いのツボにはまる所を久々に見たなぁと少し遠い目をしながら、笑いすぎて咽ている朱里の背中をさすっている。
「で?アシュレイさんの息子さんは何をしにここへ?」
「【刻狼亭】の製薬部隊から薬草を入荷依頼されました。もうそろそろ運び込まれますのでご安心ください」
「お前は喋る度に人の手を握らんと喋れんのか!」
「坊ちゃん!いい加減にしなさい!」
朱里の手を握りながらロケルトがウィンクして言うと、再びルーファスに手を叩き落され、ヒリングに腕を後ろから掴まれる。
「製薬部隊の薬草・・・ああ、熱病に効果のありそうな薬草が解ったって言ってたね。うんうん。お疲れ様です助かります!」
試行錯誤でたどり着いたのが海底に生える熱さましの薬草が効果があったとかで大量に発注を掛けていたのを製薬室の隣りで作業していた朱里も見ている。
素直に頭を下げてロケルトに感謝して微笑むと「良いなぁ・・・」とロケルトが呟く。
ルーファスの耳がピクッと動き眉間にしわを寄せる。
「オレの番だ。変な気は起こすな」
「わかってますってば。やだなぁ番持ちは視野が狭くて」
ルーファスが睨みつけるとロケルトが拗ねた様な顔で口をへの字に曲げる。
「?よくわからないけど、とりあえず入荷が終わるまで【刻狼亭】の料亭でお茶でも飲んで涼んでて下さいな」
朱里が露店の方へ行き、キリンとフィリアに「代わるよー」と2人に休憩を出して元気に「いらっしゃいませー」と声を上げている。
ルーファスがロケルトとヒリングを従業員に頼み、露店の列に並ぶ。
「さてティル、最後の1つだな」
ティルナールがスタンプラリーのパンフレットを両手に持って目をキラキラさせて尻尾を振る。
朱里が露店に復帰するまでずっと待っていたのでティルナールの誕生日のギリギリというところで間に合った感じだった。
ようやくルーファスとティルナールの順番になり、朱里がティルナールに「ご注文は?」とニッコリ笑って聞く。
「クッキー!」
「クッキーアイス1つだ」
「はーい。お誕生日おめでとう!ティル!」
アイスの上に狼の形のクッキーにチョコペンで『おたんじょうびおめでとう!』と書いた物を乗せて、ティルナールの持っていたパンフレットにスタンプを押す。
「はーい。スタンプ完全制覇おめでとうございます!お人形とお食事券の贈呈になります!」
朱里がパチパチと手を叩くと周りからも手を叩かれてティルナールが嬉しそうに笑って尻尾を振り、アイスの上のクッキーにかじりついていた。
「ティル、良かったな」
「あーい!」
この後、ティルナールに「何処で食事をしたい?」と聞いたところ、「おあみてー」と『女将亭』のご指名がきたので新しい女将亭が出来上がるまでは食事券は取り置きになった。
アシュレイ・ビンクスはルーファスの幼馴染ではあるものの、今現在はありすと一緒に新技術開発に力を注いでいる為に長男が【風雷商】を継ぎ、次男が営業や他店との共同で忙しく動き回っている。
そして三男ロケルト・ビンクスは特に役職は無い・・・運送屋の様な物だ。
要は【風雷商】の小間使いの様な物で、こうした『熱病』等で制限される場所へ【風雷商】のビンクス家の身分でしか入国が出来ない様な時の特別運送が彼の仕事。
ロケルトはビンクス家というだけの男だったりする。
基本、不真面目で女にだらしがなく直ぐフラフラと女性に言い寄り問題を起こす為に四男がもう少し育ったらロケルトは販売部門か裏方に回すべきかとアシュレイに思われている。
ロケルト本人もそれは気付いているが、それならそれで今を楽しむ気満々で動いている。
他の兄弟3人よりも顔がアシュレイに瓜二つで他の兄弟には使えないアシュレイと同じ能力『細工魔法』を引き継いでいるのに生かす事も出来ていない。
ルーファスがアシュレイから聞いているのはそんな感じの事で、目の前の青年に少しどうしたものかと同じ三男という立場のティルナールを見るが、流石に年が違い過ぎて判断基準にもならない。
ティルナールはルーファスを見上げながらえへーっと笑って腕に顔を擦りつけている。
「2人共ごめんね、少し支度に手間取っちゃって」
髪の毛を2つに分けて三つ編みにしてお団子頭にした朱里が白いワンピースに黒いレース付きのキリン達とお揃いの物を着てエプロンを付けながら外に出て来る。
朱里のお茶とジュース造りが終わり、あとは温泉大陸に来る人々に飲ませていくだけなので無事に露店復帰となった。そしてティルナールの最後のスタンプが本日終わりという感じである。
「ははえー、あいしぃー」
「はーい。ティル、アイス食べてスタンプ最後の押そうね」
朱里とティルナールが顔を近付けて小さく鼻をツンと付けると笑い合ってルーファスに「アカリ・トリニア今日から露店復帰です!」と元気に敬礼してえへへっと笑う。
笑い方がティルと一緒だとルーファスが思いながら「ああ」と言っておでこにキスをする。
「あら?アシュレイ・・・さん?」
朱里がようやくロケルトの存在に気付き首を傾げる。
スクッとロケルトが立ち上がり朱里の手を取って頭を下げると、ルーファスに手をはたき落とされてグルルルと小さく唸る。
「ロケルト・ビンクスです。可愛い妖精さんだね!」
「【風雷商】のロケルト坊ちゃんの監視役ヒリングです。うちの坊ちゃんがすいません!」
「・・・ぶふっ、妖精っっ!!」
朱里が吹き出すとお腹を押さえながら「やめてー!アシュレイさんの顔で、ぶふっ、妖精、ぷはは」と笑いのツボに入ったらしくお腹が痛いーっと言うまで笑い転げていた。
ルーファスが朱里の笑いのツボにはまる所を久々に見たなぁと少し遠い目をしながら、笑いすぎて咽ている朱里の背中をさすっている。
「で?アシュレイさんの息子さんは何をしにここへ?」
「【刻狼亭】の製薬部隊から薬草を入荷依頼されました。もうそろそろ運び込まれますのでご安心ください」
「お前は喋る度に人の手を握らんと喋れんのか!」
「坊ちゃん!いい加減にしなさい!」
朱里の手を握りながらロケルトがウィンクして言うと、再びルーファスに手を叩き落され、ヒリングに腕を後ろから掴まれる。
「製薬部隊の薬草・・・ああ、熱病に効果のありそうな薬草が解ったって言ってたね。うんうん。お疲れ様です助かります!」
試行錯誤でたどり着いたのが海底に生える熱さましの薬草が効果があったとかで大量に発注を掛けていたのを製薬室の隣りで作業していた朱里も見ている。
素直に頭を下げてロケルトに感謝して微笑むと「良いなぁ・・・」とロケルトが呟く。
ルーファスの耳がピクッと動き眉間にしわを寄せる。
「オレの番だ。変な気は起こすな」
「わかってますってば。やだなぁ番持ちは視野が狭くて」
ルーファスが睨みつけるとロケルトが拗ねた様な顔で口をへの字に曲げる。
「?よくわからないけど、とりあえず入荷が終わるまで【刻狼亭】の料亭でお茶でも飲んで涼んでて下さいな」
朱里が露店の方へ行き、キリンとフィリアに「代わるよー」と2人に休憩を出して元気に「いらっしゃいませー」と声を上げている。
ルーファスがロケルトとヒリングを従業員に頼み、露店の列に並ぶ。
「さてティル、最後の1つだな」
ティルナールがスタンプラリーのパンフレットを両手に持って目をキラキラさせて尻尾を振る。
朱里が露店に復帰するまでずっと待っていたのでティルナールの誕生日のギリギリというところで間に合った感じだった。
ようやくルーファスとティルナールの順番になり、朱里がティルナールに「ご注文は?」とニッコリ笑って聞く。
「クッキー!」
「クッキーアイス1つだ」
「はーい。お誕生日おめでとう!ティル!」
アイスの上に狼の形のクッキーにチョコペンで『おたんじょうびおめでとう!』と書いた物を乗せて、ティルナールの持っていたパンフレットにスタンプを押す。
「はーい。スタンプ完全制覇おめでとうございます!お人形とお食事券の贈呈になります!」
朱里がパチパチと手を叩くと周りからも手を叩かれてティルナールが嬉しそうに笑って尻尾を振り、アイスの上のクッキーにかじりついていた。
「ティル、良かったな」
「あーい!」
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