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21章
十月十日
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秋が深まった頃、満月の綺麗な深夜にルーファスとアカリの八人目の子供が誕生した。
流石に四回目の出産とあってか、時間もかからずに産んだのと、アカリが元気なのもあって1週間程入院したのち、屋敷に帰ってきた。
八人目は男の子で五男である。
アカリ似でふにゃふにゃとした赤ん坊に三つ子も自分達の弟が出来たとあって、毎日様子を見に来ては夜遅くまで屋敷に居る。
こうした時ばかりは流石に、ギルの屋敷に出してしまったのは可哀想な気もしてしまうが、本人達も自分達が仕出かした事の罰だと思って受け入れている。
アルビーが白い紙を持ってきて『クルシュ』と名前を書いてきた。
ルーファスは『スクルード』と名前を書き。
アカリは『ルドルフエンゲルシュタイン』と名前を書いてきた。
「アカリのは長すぎでしょ?」
「八人目なんだし長くてもいいと思うの」
「いや、アカリ、流石に長すぎだろう?」
「んーっ……ルードルフシュタイン」
アルビーとルーファスが横に顔を振り、アカリがぷぅっと頬を膨らますと参戦とばかりに、他のドラゴン達も白い紙に名前を書いて持ってくる。
「我のは『コール』だ」
「アタシは『イミル』よ」
「エデンは『ヒクルス』」
「ケイトは『デイルート』なの」
「あたしは『ベクトル』かな!」
赤ん坊をアカリが抱き上げて、それぞれが自分の紙を横に掲げてみせる。
ミルアとナルアがリュエールとシュトラールも呼び、いつの間にやら大広間には白い紙が散乱し、それぞれが名前の候補を掲げていた。
キリンやフィリアも参加し、暴走する夫の名付けや義母の名付けを止めに掛かっていた。
「まぁまぁ、折角の名前なんですから、ギリギリまで考えましょ?」
キリンがお茶を淹れながら全員の顔を見渡して、少し眉を下げてリュエールの横に座る。
ドラゴン達も引かなければ、トリニア家の人々も引かないのである。
「もう埒が明かないね。今日提出なんだし、恨みっこ無し!箱に入れて決めるよ」
リュエールが箱を持ってきて、それぞれの紙を小さくたたんで中に入れ、傍観していたハガネに引くように言い、ハガネが面倒くさそうな顔をして箱から紙を一枚引く。
「んじゃ、読み上げるぜ……『スクルード』大旦那の決めた名前だな。妥当なところじゃね?」
「父上かー……」
「ルーファスの決めた名前かー」
少し不満も出たが、ルーファスが書類に名前を書いて魔法で提出すると、八人目の子供はスクルード・トリニアとして登録された書類が直ぐに送られてくる。
「んー……スーちゃんかな?」
アカリが早速スクルードを略して呼び、「スーちゃん」と子供達も呼ぶ。
受け入れるのも早いのがアカリである。家族が揃ったところで名前決めのお祝いに【刻狼亭】の料亭から食事が届き、宴会が開かれて深夜遅くまで騒いでいた。
途中でアカリと子供達はお開きにして部屋に戻ってはいたが、孫とは違う自分の子供の誕生にルーファスも嬉しかったのか、騒ぐドラゴン達と程よく騒いでいた。
アカリが授乳で起きた時には、ミルアとナルアが片付けを終わらせて、ルーファスは獣化して伸びていた。
「あらま、駄目な父上がいますねー。スーちゃん、明日は父上にいっぱいお世話してもらおうねー」
ルーファスの上に毛布を掛けて、寄り掛かり授乳しているとルーファスが首を上げる。
「アカリか。すまん、飲み過ぎた……」
「お祝いだから別にいいよ。明日からは、ちゃんと手伝ってもらいますけど」
「了解だ。しかし、久々の子育てに、もう赤ん坊の世話を忘れてしまったな」
「まぁ、毎回、双子だ三つ子だって忙しかったから、流れ作業だったからね……私も忘れちゃってます。でも、スーちゃんは一人なのできっといつもより楽ですよ」
のんびりとしたアカリの言葉に、孫の面倒もそれなりに見ているのだから、大丈夫か……と、のんびりとルーファスも構える。
「それにしても、私達、子沢山になりましたね」
「アカリとオレの相性が良いからな」
ルーファスが鼻先でツンツンとアカリの手にキスをして、アカリがルーファスの頭を撫でながらスクルードを見つめて、一人だけ育てるのは案外余裕もあるものだなぁと、しみじみ思う。
「大きく育つと良いなぁ」
「スーはアカリに似ているからどうだろうな?」
「ルーファス……身長の事を言っているなら、叩きますよ?」
ブンブンとルーファスが左右に首を振り、自分の失言にアカリから放たれた殺気を感じてブルッと身震いする。
相変わらず、身長の事を気にしているアカリに余計な一言だったと口をつぐむ。
「さてと、スーちゃんをまた寝せてきますから、ルーファスも風邪をひかない様に、早めに自分のお布団に入って下さいね。私はスーちゃんのお部屋で一緒に寝てますから」
スクルードの背をポンポン叩きながらアカリが子供部屋に退散して、ルーファスも大人しく寝室に戻っていく。
「明日からは、子育てに参加しないとな」
折角の隠居暮らしなのだから、ゆっくり子育てに専念しようと欠伸をしてから眠りにつく。
アカリが何度か起きてはあやしている物音に起きて、交代してあやしてみるが、手の平に頭がすっぽりと入る赤ん坊にルーファスも久々の感覚に多少驚き、用意された哺乳瓶を片手に飲ませたりして様子を見る。
「眠い……」
「オレが面倒を見ておくから、寝て良いぞ?」
「いえ、心配なので起きています……」
少しヨレっとしたアカリに、眉を下げながら、これは久々に気合を入れないと新生児に対応出来ないな……と、密かに思い気合を入れたのだった。
流石に四回目の出産とあってか、時間もかからずに産んだのと、アカリが元気なのもあって1週間程入院したのち、屋敷に帰ってきた。
八人目は男の子で五男である。
アカリ似でふにゃふにゃとした赤ん坊に三つ子も自分達の弟が出来たとあって、毎日様子を見に来ては夜遅くまで屋敷に居る。
こうした時ばかりは流石に、ギルの屋敷に出してしまったのは可哀想な気もしてしまうが、本人達も自分達が仕出かした事の罰だと思って受け入れている。
アルビーが白い紙を持ってきて『クルシュ』と名前を書いてきた。
ルーファスは『スクルード』と名前を書き。
アカリは『ルドルフエンゲルシュタイン』と名前を書いてきた。
「アカリのは長すぎでしょ?」
「八人目なんだし長くてもいいと思うの」
「いや、アカリ、流石に長すぎだろう?」
「んーっ……ルードルフシュタイン」
アルビーとルーファスが横に顔を振り、アカリがぷぅっと頬を膨らますと参戦とばかりに、他のドラゴン達も白い紙に名前を書いて持ってくる。
「我のは『コール』だ」
「アタシは『イミル』よ」
「エデンは『ヒクルス』」
「ケイトは『デイルート』なの」
「あたしは『ベクトル』かな!」
赤ん坊をアカリが抱き上げて、それぞれが自分の紙を横に掲げてみせる。
ミルアとナルアがリュエールとシュトラールも呼び、いつの間にやら大広間には白い紙が散乱し、それぞれが名前の候補を掲げていた。
キリンやフィリアも参加し、暴走する夫の名付けや義母の名付けを止めに掛かっていた。
「まぁまぁ、折角の名前なんですから、ギリギリまで考えましょ?」
キリンがお茶を淹れながら全員の顔を見渡して、少し眉を下げてリュエールの横に座る。
ドラゴン達も引かなければ、トリニア家の人々も引かないのである。
「もう埒が明かないね。今日提出なんだし、恨みっこ無し!箱に入れて決めるよ」
リュエールが箱を持ってきて、それぞれの紙を小さくたたんで中に入れ、傍観していたハガネに引くように言い、ハガネが面倒くさそうな顔をして箱から紙を一枚引く。
「んじゃ、読み上げるぜ……『スクルード』大旦那の決めた名前だな。妥当なところじゃね?」
「父上かー……」
「ルーファスの決めた名前かー」
少し不満も出たが、ルーファスが書類に名前を書いて魔法で提出すると、八人目の子供はスクルード・トリニアとして登録された書類が直ぐに送られてくる。
「んー……スーちゃんかな?」
アカリが早速スクルードを略して呼び、「スーちゃん」と子供達も呼ぶ。
受け入れるのも早いのがアカリである。家族が揃ったところで名前決めのお祝いに【刻狼亭】の料亭から食事が届き、宴会が開かれて深夜遅くまで騒いでいた。
途中でアカリと子供達はお開きにして部屋に戻ってはいたが、孫とは違う自分の子供の誕生にルーファスも嬉しかったのか、騒ぐドラゴン達と程よく騒いでいた。
アカリが授乳で起きた時には、ミルアとナルアが片付けを終わらせて、ルーファスは獣化して伸びていた。
「あらま、駄目な父上がいますねー。スーちゃん、明日は父上にいっぱいお世話してもらおうねー」
ルーファスの上に毛布を掛けて、寄り掛かり授乳しているとルーファスが首を上げる。
「アカリか。すまん、飲み過ぎた……」
「お祝いだから別にいいよ。明日からは、ちゃんと手伝ってもらいますけど」
「了解だ。しかし、久々の子育てに、もう赤ん坊の世話を忘れてしまったな」
「まぁ、毎回、双子だ三つ子だって忙しかったから、流れ作業だったからね……私も忘れちゃってます。でも、スーちゃんは一人なのできっといつもより楽ですよ」
のんびりとしたアカリの言葉に、孫の面倒もそれなりに見ているのだから、大丈夫か……と、のんびりとルーファスも構える。
「それにしても、私達、子沢山になりましたね」
「アカリとオレの相性が良いからな」
ルーファスが鼻先でツンツンとアカリの手にキスをして、アカリがルーファスの頭を撫でながらスクルードを見つめて、一人だけ育てるのは案外余裕もあるものだなぁと、しみじみ思う。
「大きく育つと良いなぁ」
「スーはアカリに似ているからどうだろうな?」
「ルーファス……身長の事を言っているなら、叩きますよ?」
ブンブンとルーファスが左右に首を振り、自分の失言にアカリから放たれた殺気を感じてブルッと身震いする。
相変わらず、身長の事を気にしているアカリに余計な一言だったと口をつぐむ。
「さてと、スーちゃんをまた寝せてきますから、ルーファスも風邪をひかない様に、早めに自分のお布団に入って下さいね。私はスーちゃんのお部屋で一緒に寝てますから」
スクルードの背をポンポン叩きながらアカリが子供部屋に退散して、ルーファスも大人しく寝室に戻っていく。
「明日からは、子育てに参加しないとな」
折角の隠居暮らしなのだから、ゆっくり子育てに専念しようと欠伸をしてから眠りにつく。
アカリが何度か起きてはあやしている物音に起きて、交代してあやしてみるが、手の平に頭がすっぽりと入る赤ん坊にルーファスも久々の感覚に多少驚き、用意された哺乳瓶を片手に飲ませたりして様子を見る。
「眠い……」
「オレが面倒を見ておくから、寝て良いぞ?」
「いえ、心配なので起きています……」
少しヨレっとしたアカリに、眉を下げながら、これは久々に気合を入れないと新生児に対応出来ないな……と、密かに思い気合を入れたのだった。
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