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22章
魔国の学園祭21
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狭くはない部屋ではあるものの、人狼の入った液体の筒が並んでいるせいで相手も派手に動けはしないが、ルーファス達も動きに制限があり、大立ち回りとはいけない。
「くそっ! この筒が無きゃ……本当に邪魔だな!」
「大旦那、短気起こさないでくださいねぇ~」
「分かっている! ああっ、まったく、急ぎたい時にワラワラと!」
「あはは~、ゼリティア夫人は大丈夫ですかぁ~?」
「わたくしのことは気になさらずに!」
レイピアに炎を纏わせてゼリティアが突きを放つと、レイピアの先から火が飛び出て、反魔国を掲げている胡散臭い集団も慌てふためく。
「ゼリティア夫人は流石だな……」
「凄いですねぇ~」
老人とは思えぬ魔力と剣さばきにルーファスとテンも、足手まといではなく戦力としてゼリティアを見ても良いようだと、テンが小鬼に腕輪で連絡を取っている間にルーファスがテンとゼリティアを守りながら戦い、テンが小鬼と連絡を取り終わると、ルーファスが腕輪に手をかける。
「ティル! 王妃が出す食事を生徒も親も食べない様にしろ!」
『え? もう出されちゃったし、食べ終わるよ?』
「なっ!? お前は食べたのか!?」
『え、うん……駄目だった?』
「おかしなことには……なってないか?」
『おかしな事ならあったよ』
「なにがあった!?」
『母上が……』
ティルナールの言葉の続きを聞く前に、ルーファスの目の前の筒が割れ、液体がルーファスのかかり、テンが慌てて水玉をルーファスにぶつける。
「大旦那っ! 大丈夫ですか!?」
「ぐっ……鼻が曲がりそうだ……」
異臭にルーファス達もそうだが、あちら側も口元を押さえて吐きそうになっている者もいる。
水玉で体を一度包み込み、再度かかった液体を取り除いていると、水玉がオパール色に輝き、ルーファスの周りに流れていた地面の液体も、オパール色に輝いて浄化されていく。
「なんですこれは……?」
「大旦那、これって……大女将のでしょうかぁ~?」
ゼリティアとテンがルーファスの周りから浄化されていくさまを見て、驚いた表情をし、ルーファスは自分の薬指に巻かれたアカリの髪の毛に口元を緩ませる。
「アカリはいつだって、オレの救いの女神だな」
薬指の髪の毛に軽くキスをすると、水玉の中で薄くアカリの甘い味が唇から口の中へ入っていく。
薄く瞼を閉じると、アカリの笑顔が脳裏に浮かび、ティルナールの言葉に意識が戻る。
アカリがどうしたというのか……もう一度聞き出す必要がある。
水玉を体に纏わせたまま部屋の中の筒を破壊し、水玉に触れた液体は次々に浄化されていく。
筒を気にしない戦いは大立ち回りが出来るようになったルーファスにとっては、手加減無用とあって遠慮なく攻撃が出来る。
浄化されていく液体に、反魔国を掲げる者達はじりじりと部屋から逃げ始め、テンが逃げる者達の足を狙って細い鉄の串を投擲して機動力を奪っていく。
「うわぁぁぁ! やめろー!」
「助けてくれー!」
ガシャーン
バタバタ ガシャーン
叫び声と筒を割る音に人々が倒れていく音が響き渡り、ようやく立っているのがルーファス達だけになると、白い騎士服を着た騎士団が到着する。
「【乾燥】」
「相変わらず、大女将の能力は健在ですねぇ~。むしろ前より強くなっていますかぁ~?」
「魔石で食べ物の魔力が豊富な分、アカリ自身も知らぬうちに能力が増しているのかもな」
ルーファス自身も最近能力が上がって手加減が下手な分、余計にコントロールが出来ずに生活魔法以外は少し控えているところもあるぐらいだ。
全身を魔法で乾かし、ルーファスは浄化されて異臭が少なくなった部屋ではあるが、微量の異臭も獣人の鼻にはキツく、指を鼻の近くにあてて、アカリの髪の匂いで誤魔化していた。
「ルーファス小父さん! 遅くなりました!」
「シノリアか。ここは任せて大丈夫そうか?」
「はい! 他の出口も既に押さえてあります!」
「王妃が出す食事に、ここの『人狼薬』が混ぜられているという話だ。すでにティルの話では食べてしまったらしいが……学園の方にも人を配置するよう通達を入れてくれ」
「それでしたら、リュエール兄さんからの通達とアカリ小母さんの聖水がドラゴン達の手で霧状に散布されて、ドラゴンの祝福という形で何事もないように表面上はしてあります!」
シノリアの報告にルーファスは片眉を上げて薄く笑い、自分の息子の動きの速さに【刻狼亭】の十六代目は自分よりしっかりしているらしいと安堵の息を吐く。
ティルナールの言っていた『母上が』の続きもこの事なのだろう。
「反乱分子を一人も逃がすな!」
「パディオン騎士団の者達も抵抗するようなら、容赦をするな!」
「未来の子供達の為にも、ここで全てを終わらせるんだ!」
テンペス王の声が響き、テンは素早く自分の投擲した鉄の串を回収するとそそくさとルーファスの元へ戻っていく。
「ルーファス殿、この度は私共の国の事でお手を煩わせてしまい、申し訳ない」
「いいや、これぐらいはいつもの事だ。それより、この筒の中身に関しては、悪用を避ける為に全て浄化させてもらっても構わないか?」
「ええ、私としては文句は無いですが、しかし、一応分析などに回したいと思ってはいます」
「それは感心しない。この中身は人狼族の遺骸だ。死者をこれ以上苦しめるものでは無いだろう」
思うところはあるものの、テンペス王も引き下がらずを得ず、ルーファスは他の部屋の筒の液体の中に指の周りに水玉を作って、筒の中に入れていき、全て浄化していった。
液体の底で、白い微かに残った骨も泡の様に砕けて消えていった。
「良かったんですかぁ~? 研究しても良かったと思うんですけどぉ~」
「フッ……どうせ、お前も軍部の研究物を全て破壊するつもりで、ここへ来ていたんだろう?」
「……わかりますかぁ~?」
「まぁな。お前とは古い付き合いだからな。学園の食事に使われるはずだった『人狼薬』の方も浄化しておこう」
「ついでに小鬼も回収しておかなくてはですねぇ~」
ゼリティアを連れて三人で王宮地下から出ると王宮の庭には捕らえられたパディオン騎士団と反魔国の人々が座らされていた。
「くそっ! この筒が無きゃ……本当に邪魔だな!」
「大旦那、短気起こさないでくださいねぇ~」
「分かっている! ああっ、まったく、急ぎたい時にワラワラと!」
「あはは~、ゼリティア夫人は大丈夫ですかぁ~?」
「わたくしのことは気になさらずに!」
レイピアに炎を纏わせてゼリティアが突きを放つと、レイピアの先から火が飛び出て、反魔国を掲げている胡散臭い集団も慌てふためく。
「ゼリティア夫人は流石だな……」
「凄いですねぇ~」
老人とは思えぬ魔力と剣さばきにルーファスとテンも、足手まといではなく戦力としてゼリティアを見ても良いようだと、テンが小鬼に腕輪で連絡を取っている間にルーファスがテンとゼリティアを守りながら戦い、テンが小鬼と連絡を取り終わると、ルーファスが腕輪に手をかける。
「ティル! 王妃が出す食事を生徒も親も食べない様にしろ!」
『え? もう出されちゃったし、食べ終わるよ?』
「なっ!? お前は食べたのか!?」
『え、うん……駄目だった?』
「おかしなことには……なってないか?」
『おかしな事ならあったよ』
「なにがあった!?」
『母上が……』
ティルナールの言葉の続きを聞く前に、ルーファスの目の前の筒が割れ、液体がルーファスのかかり、テンが慌てて水玉をルーファスにぶつける。
「大旦那っ! 大丈夫ですか!?」
「ぐっ……鼻が曲がりそうだ……」
異臭にルーファス達もそうだが、あちら側も口元を押さえて吐きそうになっている者もいる。
水玉で体を一度包み込み、再度かかった液体を取り除いていると、水玉がオパール色に輝き、ルーファスの周りに流れていた地面の液体も、オパール色に輝いて浄化されていく。
「なんですこれは……?」
「大旦那、これって……大女将のでしょうかぁ~?」
ゼリティアとテンがルーファスの周りから浄化されていくさまを見て、驚いた表情をし、ルーファスは自分の薬指に巻かれたアカリの髪の毛に口元を緩ませる。
「アカリはいつだって、オレの救いの女神だな」
薬指の髪の毛に軽くキスをすると、水玉の中で薄くアカリの甘い味が唇から口の中へ入っていく。
薄く瞼を閉じると、アカリの笑顔が脳裏に浮かび、ティルナールの言葉に意識が戻る。
アカリがどうしたというのか……もう一度聞き出す必要がある。
水玉を体に纏わせたまま部屋の中の筒を破壊し、水玉に触れた液体は次々に浄化されていく。
筒を気にしない戦いは大立ち回りが出来るようになったルーファスにとっては、手加減無用とあって遠慮なく攻撃が出来る。
浄化されていく液体に、反魔国を掲げる者達はじりじりと部屋から逃げ始め、テンが逃げる者達の足を狙って細い鉄の串を投擲して機動力を奪っていく。
「うわぁぁぁ! やめろー!」
「助けてくれー!」
ガシャーン
バタバタ ガシャーン
叫び声と筒を割る音に人々が倒れていく音が響き渡り、ようやく立っているのがルーファス達だけになると、白い騎士服を着た騎士団が到着する。
「【乾燥】」
「相変わらず、大女将の能力は健在ですねぇ~。むしろ前より強くなっていますかぁ~?」
「魔石で食べ物の魔力が豊富な分、アカリ自身も知らぬうちに能力が増しているのかもな」
ルーファス自身も最近能力が上がって手加減が下手な分、余計にコントロールが出来ずに生活魔法以外は少し控えているところもあるぐらいだ。
全身を魔法で乾かし、ルーファスは浄化されて異臭が少なくなった部屋ではあるが、微量の異臭も獣人の鼻にはキツく、指を鼻の近くにあてて、アカリの髪の匂いで誤魔化していた。
「ルーファス小父さん! 遅くなりました!」
「シノリアか。ここは任せて大丈夫そうか?」
「はい! 他の出口も既に押さえてあります!」
「王妃が出す食事に、ここの『人狼薬』が混ぜられているという話だ。すでにティルの話では食べてしまったらしいが……学園の方にも人を配置するよう通達を入れてくれ」
「それでしたら、リュエール兄さんからの通達とアカリ小母さんの聖水がドラゴン達の手で霧状に散布されて、ドラゴンの祝福という形で何事もないように表面上はしてあります!」
シノリアの報告にルーファスは片眉を上げて薄く笑い、自分の息子の動きの速さに【刻狼亭】の十六代目は自分よりしっかりしているらしいと安堵の息を吐く。
ティルナールの言っていた『母上が』の続きもこの事なのだろう。
「反乱分子を一人も逃がすな!」
「パディオン騎士団の者達も抵抗するようなら、容赦をするな!」
「未来の子供達の為にも、ここで全てを終わらせるんだ!」
テンペス王の声が響き、テンは素早く自分の投擲した鉄の串を回収するとそそくさとルーファスの元へ戻っていく。
「ルーファス殿、この度は私共の国の事でお手を煩わせてしまい、申し訳ない」
「いいや、これぐらいはいつもの事だ。それより、この筒の中身に関しては、悪用を避ける為に全て浄化させてもらっても構わないか?」
「ええ、私としては文句は無いですが、しかし、一応分析などに回したいと思ってはいます」
「それは感心しない。この中身は人狼族の遺骸だ。死者をこれ以上苦しめるものでは無いだろう」
思うところはあるものの、テンペス王も引き下がらずを得ず、ルーファスは他の部屋の筒の液体の中に指の周りに水玉を作って、筒の中に入れていき、全て浄化していった。
液体の底で、白い微かに残った骨も泡の様に砕けて消えていった。
「良かったんですかぁ~? 研究しても良かったと思うんですけどぉ~」
「フッ……どうせ、お前も軍部の研究物を全て破壊するつもりで、ここへ来ていたんだろう?」
「……わかりますかぁ~?」
「まぁな。お前とは古い付き合いだからな。学園の食事に使われるはずだった『人狼薬』の方も浄化しておこう」
「ついでに小鬼も回収しておかなくてはですねぇ~」
ゼリティアを連れて三人で王宮地下から出ると王宮の庭には捕らえられたパディオン騎士団と反魔国の人々が座らされていた。
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