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24章
失格者
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【刻狼亭】で見習いが雇われて三日程経ち、四十名程居たのに、もう二十人にまで減っている。
理由は様々だけど、料亭で多かったのが、高ランクの冒険者のお客さんに対しての態度問題が多かった。
憧れの冒険者の人だー! と、はしゃぐくらいならギリギリ大丈夫だけど、本来は駄目なんだけど見習いなのでギリギリ判定の甘口である。
高ランクの冒険者を見て「俺と勝負しろ!」と、言っちゃう人。
高ランクの冒険者から「お前冒険者辞めて、ここでお食事運びかよー」と揶揄われて喧嘩しちゃった人。
高ランクの冒険者はお金回りも良いから、部屋番号を聞き出して「今夜遊びに行っても良いですかー」と言っちゃった人。
女性の見習いさんに多かったのが色目を使って高ランク冒険者や貴族の人にモーションを掛けちゃう系。
「あなた達はバカなのですかぁ~? こんなことでは小鬼達が相棒を失って可哀想ですねぇ」
ハァー……と、深い溜め息を吐いてテンが小鬼ちゃん達を回収し、小鬼ちゃん達は「でも楽しい行動観察でした!」とはしゃいでいた。意外とポジティブな性格のようだ。
「いつまで冒険者気取りでいるつもりですか? 【刻狼亭】の従業員はそこらの冒険者とは格が違う。客として来るような冒険者は二流。見習いとはいえ、【刻狼亭】で働けることの意味が解らないようでは、ここでは雇えない」
シュテンがそう言って、タマホメとメビナと共に見習いを掴んで橋や港へ行く姿が何度も見られた。
「此処は男漁りの場じゃないんだよ! うちの店の品位を下げるようじゃ雇えないね!」
フリウーラが見習いの荷物を宿舎から出して、見習いの女性達に「サッサと出てお行き!」と怒りの声を上げた。
旅館の方では……なんというか、金目の物に目が眩んじゃった人が数人出た。
貴族の人の荷物や高ランクの冒険者の持ち物はレアなアイテムもあるから、冒険者をしていた人には生唾ものだったのだろう……。
あろうことか、ペアの小鬼ちゃんに「アンタにも金貨をあげるから」と買収しようとしたらしい。
残念ながら、小鬼という種族は「金貨が好き」ではあるけど、それは情報と見合った時に得られる金貨が好きなのであって、無償で貰ったりする金貨には価値を見出せない種族なのだ。
小鬼ちゃん達は上司である『テン』『温泉』の二人の小鬼に直ぐに情報を飛ばして、即座に取り押さえたので、お客さんの荷物は無事だった。
これは信用問題にもなるので、そんな見習いを雇うことはできない為に、即座に『失格』で叩きだした。
宿舎で賄いを食べながら、私は仲良くなった見習いのペテロピとペアの小鬼ちゃんとお昼ご飯にしていた。
ペテロピは明るい色の茶色の髪で私と同じように三つ編みを二つにしていて、サーモンピンクの瞳に可愛いそばかすがチャームポイントで人懐っこい子である。
「結構居なくなっちゃいましたね」
「仕方がないよねー。ここで働けるだけでも凄い事なのに、バカなことする人多すぎじゃん?」
「僕等、小鬼見習いも少し余ってきてしまいました……」
しゅんとした小鬼ちゃんに、私は自分のデザートのヨーグルトを差し出す。
小鬼ちゃんは嬉しそうに受け取ると元気にヨーグルトにスプーンでハチミツを入れている。
チマッとしていて可愛い姿が癒される。テンの気持ちも少しわかってしまうというものだ。
「ミヤは、この後の仕事は?」
「料亭の事務の雑用を手伝いに行くよー」
「事務って、怖くない? 大丈夫なの?」
「えー? 怖い人居ないよー。みんな優しいよ?」
「ウチはテンさんマジ怖いー! あっ、小鬼ちゃんこれ秘密ね! ペア同士の秘密!」
「うふふ。僕等もテンさんは怖いですから、大丈夫ですよー」
ペテロピと小鬼ちゃんのペアは友達感覚で上手くいっているらしく、直すべきところと言うのならば、言葉使いだろうか? 少し田舎から出て来たらしくなまり口調な喋りらしい。
私にはどう聞いても、昔のありすさんに似たものを感じるのだけど、悪い子ではないし、お客さんの前では言葉使いも必死に直しているから、私としては頑張って欲しい。
あっ、でもありすさんの喋りも田舎なまりに、この世界の人からは聞こえているとしたら……もしかしてありすさん「おらは、ありすだべ」とか言ってたのだろうか……想像してしまい、私は最近この事実を思い出してはいきなり思い出し笑いしてしまう怪しい人と化していたりする。
絶対、ありすさんには内緒にしておこう。
ご飯を食べ終わって、一息つくと私は腰を上げる。
「そろそろ私は事務の方に行くね。ペテロピと小鬼ちゃん、頑張ってね」
「うん。ミヤも頑張ってねー!」
「行ってらっしゃいです!」
食事の食器を片付けて、二人に手を振って別れた。
宿舎を出るとスクルードは良い子にしているかな? と気になって、少しだけ庭を覗いたら庭に光る泥団子がいっぱい製造されていた……泥団子は今もまだ遊びとして健在のようだ。
枝を拾って、地面に花丸を書いて『スーちゃんよくがんばりました!』と書いて私はその場を後にした。
理由は様々だけど、料亭で多かったのが、高ランクの冒険者のお客さんに対しての態度問題が多かった。
憧れの冒険者の人だー! と、はしゃぐくらいならギリギリ大丈夫だけど、本来は駄目なんだけど見習いなのでギリギリ判定の甘口である。
高ランクの冒険者を見て「俺と勝負しろ!」と、言っちゃう人。
高ランクの冒険者から「お前冒険者辞めて、ここでお食事運びかよー」と揶揄われて喧嘩しちゃった人。
高ランクの冒険者はお金回りも良いから、部屋番号を聞き出して「今夜遊びに行っても良いですかー」と言っちゃった人。
女性の見習いさんに多かったのが色目を使って高ランク冒険者や貴族の人にモーションを掛けちゃう系。
「あなた達はバカなのですかぁ~? こんなことでは小鬼達が相棒を失って可哀想ですねぇ」
ハァー……と、深い溜め息を吐いてテンが小鬼ちゃん達を回収し、小鬼ちゃん達は「でも楽しい行動観察でした!」とはしゃいでいた。意外とポジティブな性格のようだ。
「いつまで冒険者気取りでいるつもりですか? 【刻狼亭】の従業員はそこらの冒険者とは格が違う。客として来るような冒険者は二流。見習いとはいえ、【刻狼亭】で働けることの意味が解らないようでは、ここでは雇えない」
シュテンがそう言って、タマホメとメビナと共に見習いを掴んで橋や港へ行く姿が何度も見られた。
「此処は男漁りの場じゃないんだよ! うちの店の品位を下げるようじゃ雇えないね!」
フリウーラが見習いの荷物を宿舎から出して、見習いの女性達に「サッサと出てお行き!」と怒りの声を上げた。
旅館の方では……なんというか、金目の物に目が眩んじゃった人が数人出た。
貴族の人の荷物や高ランクの冒険者の持ち物はレアなアイテムもあるから、冒険者をしていた人には生唾ものだったのだろう……。
あろうことか、ペアの小鬼ちゃんに「アンタにも金貨をあげるから」と買収しようとしたらしい。
残念ながら、小鬼という種族は「金貨が好き」ではあるけど、それは情報と見合った時に得られる金貨が好きなのであって、無償で貰ったりする金貨には価値を見出せない種族なのだ。
小鬼ちゃん達は上司である『テン』『温泉』の二人の小鬼に直ぐに情報を飛ばして、即座に取り押さえたので、お客さんの荷物は無事だった。
これは信用問題にもなるので、そんな見習いを雇うことはできない為に、即座に『失格』で叩きだした。
宿舎で賄いを食べながら、私は仲良くなった見習いのペテロピとペアの小鬼ちゃんとお昼ご飯にしていた。
ペテロピは明るい色の茶色の髪で私と同じように三つ編みを二つにしていて、サーモンピンクの瞳に可愛いそばかすがチャームポイントで人懐っこい子である。
「結構居なくなっちゃいましたね」
「仕方がないよねー。ここで働けるだけでも凄い事なのに、バカなことする人多すぎじゃん?」
「僕等、小鬼見習いも少し余ってきてしまいました……」
しゅんとした小鬼ちゃんに、私は自分のデザートのヨーグルトを差し出す。
小鬼ちゃんは嬉しそうに受け取ると元気にヨーグルトにスプーンでハチミツを入れている。
チマッとしていて可愛い姿が癒される。テンの気持ちも少しわかってしまうというものだ。
「ミヤは、この後の仕事は?」
「料亭の事務の雑用を手伝いに行くよー」
「事務って、怖くない? 大丈夫なの?」
「えー? 怖い人居ないよー。みんな優しいよ?」
「ウチはテンさんマジ怖いー! あっ、小鬼ちゃんこれ秘密ね! ペア同士の秘密!」
「うふふ。僕等もテンさんは怖いですから、大丈夫ですよー」
ペテロピと小鬼ちゃんのペアは友達感覚で上手くいっているらしく、直すべきところと言うのならば、言葉使いだろうか? 少し田舎から出て来たらしくなまり口調な喋りらしい。
私にはどう聞いても、昔のありすさんに似たものを感じるのだけど、悪い子ではないし、お客さんの前では言葉使いも必死に直しているから、私としては頑張って欲しい。
あっ、でもありすさんの喋りも田舎なまりに、この世界の人からは聞こえているとしたら……もしかしてありすさん「おらは、ありすだべ」とか言ってたのだろうか……想像してしまい、私は最近この事実を思い出してはいきなり思い出し笑いしてしまう怪しい人と化していたりする。
絶対、ありすさんには内緒にしておこう。
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「そろそろ私は事務の方に行くね。ペテロピと小鬼ちゃん、頑張ってね」
「うん。ミヤも頑張ってねー!」
「行ってらっしゃいです!」
食事の食器を片付けて、二人に手を振って別れた。
宿舎を出るとスクルードは良い子にしているかな? と気になって、少しだけ庭を覗いたら庭に光る泥団子がいっぱい製造されていた……泥団子は今もまだ遊びとして健在のようだ。
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