黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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24章

お酒

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 貸家に帰って来ると夕飯の準備を始めて、ルーファスは庭から洗濯物を取り入れてくれている。
これぞ新婚家庭という感じだろうか? 今日はお米を炊かなくて良い分、チャッチャとおかず作りである。
お買い物途中で街の人にお酒を頂いたので、本日はお酒とおつまみ系なおかずのみ!

 ふんふん~と鼻歌交じりにニンニクをスライスして、オリーブオイルの中に入れ込み、ジャガイモ、海老、オクトパ、ブロッコリー、ベーコンを入れて塩コショウにちょっぴり鷹の爪、最後に刻みパセリ。
あとは昨日作っておいたバケットをセットにすれば、簡単アヒージョセット完成!
生ハムと温牛のカマンベールチーズにトゥートとバジルで少し、お口直し出来るようにして、大根の酢漬けに柚子を刻んだ物も出しておこう。

「ご機嫌だな」
「えへへ~、スーちゃんを産んでからお酒飲んでなかったし、久々なので楽しみ~」
「そんなに飲んでいなかったか」
「うん。それにヒドラのクリスタルでお酒の耐性とかどうなったのかも気になるの!」
「ああ、そういえば【聖域】は酒の耐性も低いからコップ半分にベロベロに酔っていたからなぁ」

 ふふふっ、お酒は嫌いじゃないんだけど直ぐに酔って、なにかしら変なことをしたりしてたから駄目だったのと、妊娠中や授乳中でお酒は禁酒状態だった。
ヒドラのクリスタルは毒や薬物にも耐性がある分、お酒はどうなのかな? と、気になっていたのだ。

「今日は飲みますよー!」
「程々にな。アカリは酒癖がそんなにいい方じゃないからな」
「大丈夫ですよ! きっと!」

 ちゃぶ台におかずを並べて、貰ったお酒をグラスに注ぐ。
貰ったお酒は北国のブランデーを仕入れているところから、甘口のワインも作ってみたところ女性に好評らしく、私にもどうぞということらしい。
ルーファスはいつも通り、樽酒のブランデーをグラスに注いでいる。

「では、美味しいお酒に、乾杯~!」
「ああ、酒とアカリの笑顔に」

 カチンとグラスを合わせて、いざ一口。

「ふぁ~、フルーティ~甘くて爽やか」
「そうか。それなら良かったな。気に入ったのなら、今度買うとしよう」

 口の中にまろやかな甘さと少しのお酒の熱さが広がる。
ブドウの中身だけで作っているような、皮の渋みみたいなのは一切ない。
クイクイ飲めてしまうけど、酔う感じはそんなにしないし、目が凄くクリアな感じでよく見える。

「アカリ、ペースが早いが大丈夫か?」
「うん。美味しいよー、えへへ。クリスタルのおかげかな? 酔わない~」
「あー、その、アカリ。酔っていないと言うが、アカリがさっきから生ハムで巻いているのはバケットだが……酔ってるんじゃないのか?」

 うん? バケット……なんで生ハムをぐるぐるに巻かれているんだろ?
首をコテンとすると、そのまま天井が見えた。

「アカリ、やはり酒は程々にしないと駄目なようだな。顔が真っ赤だぞ」
「うーん? 酔った感じしないんだけどなー……うふふっ、可笑しい」

 なんだか、お腹の下の方がくすぐったくて、ふふふっと笑ってしまい、笑いが止まらない。
困った。私、笑い上戸なのかも? ルーファスが「仕方がない番め」と、おでこを撫でて苦笑いしている。

「えへへー。でも、美味しかったー」
「ああ、今度からは少しずつ飲むようにな。一気に飲み過ぎて酔いが回っているんだろう」
「はぁーい」

 ルーファスが食事を終えて、片付けもしてくれたから私は横になって楽ちんで過ごさせてもらった。
たまにルーファスの足にちょっかいを掛けては、「この酔っ払いめ」と頭を撫でられていく。ルーファスは優しいから、ちょっかい掛けても怒らないのが出来た旦那様だと思う。
ふふーっ、自慢の旦那様。

「ほら、アカリ。布団を敷くから起こすぞ」
「うにぃー……お風呂?」
「ああ、布団を敷き終わったらな」
「はぁーい。朱里さんは先に脱ぐぅー」
「あっ、コラ、アカリ!」

 着物を脱いで畳んでいると、「体を冷やすから、暫くそれを羽織っていろ」とルーファスの羽織を頭から被せられる。
おおー、脱ぎたて! ホカホカ温かーい!

 そういえば、小さい頃はお父さんとお母さんのお仕事の帰りを待っていて、結局テーブルに突っ伏して寝てしまった私に、お父さんが背広を掛けてくれて、温かかったなぁ……。


「アカリ、寝るんじゃない。まったく、仕方ないな……」

 そんな困ったような笑うような声がして、あー、耳に心地いい……と、私は寝入ってしまって、気付けば、朝だった。

 所々の記憶はあるような? 無いような?


「はて? 私はなんでルーファスの羽織を寝間着にしているのかな?」

 ルーファスの羽織を着て、帯紐を巻いて寝てたみたいでお酒でなにかやらかしちゃったのかも?
横で寝ているルーファスはちゃんとナイトガウンなのに……。
うーむ。とりあえず、頭をサッパリさせる為に朝風呂と洒落しゃれ込もう。

「はぅー、朝の冷え込み凄い。流石、冬が近いだけある……」

 着替えを用意してお風呂に入ると、贅沢な朝の完成である。
この貸家のお風呂は自分の暮らしていたお風呂に似た狭さなので落ち着く。
住んでたと言っても、ボロアパートじゃなくて、実家の方……お父さんと貴広の殺された場所。
どうしても見れなくて、事件の後は見ることさえなかった。

 お父さん、私はお父さんの好きなビールは飲んだことは無いし、この世界じゃ見ないから飲むのは無理かもしれないけど、お酒飲めるようになったんだよ。
お父さんにルーファスを紹介したかったなぁ。
きっと良いお酒飲みな義親子になってたよ。

 そうだ。未来のスクルードにアルバムを貰ったんだった。
泣いてしまいそうでちゃんと見れていなかったけど、見ようかな?

「よし、今日はいっぱい泣く日、うん。そうしよう!」

 お風呂からザバッと上がって乾燥魔法をかけて浴室を出ると、腕組をして困ったような顔をしてルーファスが首を傾げていた。

「どうしたの?」
「いや、アカリが泣く日だとかなんとか言っているのが、気になってな」
「ああ、家族のアルバムを今日は見ようと思うの。今日は、いっぱい泣くと思うから、ルーファスの胸をいっぱい借りちゃうね?」
「そうか……、まだ辛いなら見ない方が良いんじゃないか?」
「ううん。キッカケが無いと、一生見ることが出来なくなるから」
「わかった。朝食を作っておいてくれ。屋敷に取りに行ってくる」
「はい。お願いします」

 ルーファスが出掛けて行き、私は着替えて朝食の準備開始である。
魚を焼いて、温泉鳥の卵が入ったジャガイモとワカメのお味噌汁、出汁巻き卵、お漬物。
保温魔法をかけて、あとはお米を魔道具で炊くだけ。

 この魔道具は東国が作った物が最初とされているけど、割りと改良されまくっていて、【風雷商】の最新の炊飯器がお高いけど、十分くらいでふっくら艶々なお米が炊けるので【刻狼亭】では最新型を揃えたんだよねぇ。
 ついでに私も「母上も欲しがるだろうから予備にもらった物をあげる」と言ってくれた。
見習いの時に調べたら、予備なんて無くて、リュエールが個人で私に買ってくれていたことが判明。
嬉しくてルーファスに自慢したら、ルーファスが私に色々と最新の家事魔道具を買ってくれて、今回持ってきたのはリュエールがくれた炊飯器の魔道具だけど、お鍋はルーファスが買ってくれた最新型のお鍋の魔道具で煮る時間が短縮出来る優れもの!

「うん。私、愛されてるなぁ……」

 お父さん、私は愛されてるから、安心して下さい。
さーて、そろそろルーファスが戻って来るだろうし、ご飯をちゃぶ台に用意しておこう。
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