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25章
おヨメさまとガレット
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カフェ『ナン・アラ・ミィ』は、白い陶器のような造りの四角い二階建ての建物で、二階の一角に緑のルーフガーデンがある。
一階のお店は二十席程の席があり、大勢の人達が楽しめるレストラン仕様で、私とルーファスが居るのは二階の二人だけの青空レストラン仕様の予約制のルーフガーデンである。
青空が見えるけれど、綺麗な透明のクリスタルガラスで四角く囲われていて、小さな空気の出入りがある四角く細長い窓があるくらいで、外からも見えない仕様になっているそうだ。
「なんだか、凄いお席を用意されちゃったね」
「まぁ、礼なのだから有り難く使わせてもらおう」
私とルーファスは元々、この『ナン・アラ・ミィ』にガレットを食べに行く途中だったのだけど、私達の前を通り過ぎた馬車が、列をなしていた『ナン・アラ・ミィ』のお客さん達の中へ突っ込んだのだ。
ルーファスが風の回復魔法で怪我人を治したのだけど……お店に並んだら、お店の人がお客さんを救ってくれたお礼にと、この時間帯は予約も無い事から、このルーフガーデンの席を用意してくれた。
しかも並ばずにお店に入れたので、お腹が切なく鳴いていた私としては大助かりである。
ウエイターの若い男の人が白いお皿に四角いガレットを持ってやって来て、ナイフとフォークを持って、私は笑顔で「いただきます」とへにゃっと笑うと、ルーファスが「オレの番が可愛い」と、目を細めていた。
ルーファス……番フィルターが今日も百倍くらい美化バージョンで投影されているようだ。
私よりルーファスの方が格好いいし、目を細めている姿は絵になるよ。うん。
「んーっ、クレープっぽい!」
「アカリのはシロップも入っているから、余計にそんな感じなんだろう?」
「ふふっ、甘くて美味しい」
ガレットは元の世界と変わらず、そば粉を使った薄い丸い生地にチーズやハムや卵を入れて四角に折りたたんだクレープみたいな感じで、ルーファスのは焼きトゥートとチーズとベーコンに卵のガレットで、私は薄切りの桃と生ハムにシロップが掛かったものにした。
普通にルーファスと同じような本来のガレットを楽しむつもりが……つい、邪道なクレープ感覚で甘い物を選んでしまった。
でも、甘くて美味しいので、悔いはない。生ハムの甘じょっぱくなった塩気もまた良いアクセントである。
「ルーファスが風魔法で回復が使えて良かった~」
「アカリも多少は使えるだろう?」
「私は風属性低いから、スピナの加護でもない限り、かすり傷程度しか治らないし、聖属性のは魔力ごっそり持っていかれるから使えないんだもの」
「まぁ、ここでは聖属性は使わない方が良いだろうな。魔法使い共に見つかると研究材料にされてしまうからな」
「それは怖いから、ここでは水属性で過ごします!」
「ああ、そうしてくれ」
旅行に行く前に「聖属性は使わないこと! はい。復唱!」とリュエールに散々言われて、何度も「魔法は生活魔法のみしか使いません!」と言わされたことか……。
ハァ……今日はいい天気だ……復唱した日々を思い出して、空を見上げると、背の高い塔の周りを繋げている橋でなにかが光っている。
「ルーファス、上のアレなんだろ?」
「ん? ああ、魔法学園の生徒か塔の研究者が喧嘩をして、魔法のぶつけ合いの光だろうさ」
「どこの大陸でも喧嘩は激しいねぇ」
温泉大陸の名物でもあるけど……そう思うと、多少は目の前で喧嘩が起きても動じないかも?
むしろ、【刻狼亭】では「行け―! 負けたらお給金減らしますよ!」と野次を飛ばすこともあるからね。
私も逞しくなったものだなぁ……喧嘩に巻き込まれると怒られるけど、野次を飛ばすだけなら、うちの従業員達に紛れて大騒ぎし放題である。
「食べ終わったらどこに行こうか?」
「そうだな。まずはリュエールの指示にしたがっておくか?」
「ふぇー……リューちゃんは、旅行の楽しみを社会科見学形式にするつもりだ~」
「カメラも撮っておかないとな」
カシャッと、ルーファスがガレットを食べる私を写真に撮って満足そうな顔をしているけど、思いっきり食べ物を頬張ってる『食いしん坊あかりちゃん40年後』の写真としてアルバムに並べられそうな予感しかしない。
「ルーファスも撮ってあげる!」
「オレはアカリを撮れればそれでいいんだが?」
「ダーメ。一緒に来たんだから、ルーファスの写真もないとね!」
カメラを構えてシャッターを押して、これで二人で『ナン・アラ・ミィ』で朝食をした思い出が出来た。
私も満足で、残りのガレットを食べていると、上から大量の水がザバーッと落ちてきて、一瞬身構えてしまったけど、クリスタルガラスのおかげで濡れることは無かった。
「なに、今の……? 上、あっ、橋の上からずっと流れてる」
「水魔法使いがコントロールを誤っているようだな。酷い水の量だな……すぐに魔力切れを起こすな」
ルーファスの言葉が終わる前に水は止まり、上から人影が落下してくるのが見えた。
あの高さから人が落ちたら……いやいや、ここに落下してきてない?
「チッ、【風・捕縛】」
ルーファスが素早く四角い小窓を開けて魔法を唱えると、ゆっくりと上から落下してきた人がクリスタルガラスの天井に横たわった。
これなら怪我も無く無事に終わったかな? と、ホッとしていると、クリスタルガラスの天井に赤い染みが広がっていく。
一階のお店は二十席程の席があり、大勢の人達が楽しめるレストラン仕様で、私とルーファスが居るのは二階の二人だけの青空レストラン仕様の予約制のルーフガーデンである。
青空が見えるけれど、綺麗な透明のクリスタルガラスで四角く囲われていて、小さな空気の出入りがある四角く細長い窓があるくらいで、外からも見えない仕様になっているそうだ。
「なんだか、凄いお席を用意されちゃったね」
「まぁ、礼なのだから有り難く使わせてもらおう」
私とルーファスは元々、この『ナン・アラ・ミィ』にガレットを食べに行く途中だったのだけど、私達の前を通り過ぎた馬車が、列をなしていた『ナン・アラ・ミィ』のお客さん達の中へ突っ込んだのだ。
ルーファスが風の回復魔法で怪我人を治したのだけど……お店に並んだら、お店の人がお客さんを救ってくれたお礼にと、この時間帯は予約も無い事から、このルーフガーデンの席を用意してくれた。
しかも並ばずにお店に入れたので、お腹が切なく鳴いていた私としては大助かりである。
ウエイターの若い男の人が白いお皿に四角いガレットを持ってやって来て、ナイフとフォークを持って、私は笑顔で「いただきます」とへにゃっと笑うと、ルーファスが「オレの番が可愛い」と、目を細めていた。
ルーファス……番フィルターが今日も百倍くらい美化バージョンで投影されているようだ。
私よりルーファスの方が格好いいし、目を細めている姿は絵になるよ。うん。
「んーっ、クレープっぽい!」
「アカリのはシロップも入っているから、余計にそんな感じなんだろう?」
「ふふっ、甘くて美味しい」
ガレットは元の世界と変わらず、そば粉を使った薄い丸い生地にチーズやハムや卵を入れて四角に折りたたんだクレープみたいな感じで、ルーファスのは焼きトゥートとチーズとベーコンに卵のガレットで、私は薄切りの桃と生ハムにシロップが掛かったものにした。
普通にルーファスと同じような本来のガレットを楽しむつもりが……つい、邪道なクレープ感覚で甘い物を選んでしまった。
でも、甘くて美味しいので、悔いはない。生ハムの甘じょっぱくなった塩気もまた良いアクセントである。
「ルーファスが風魔法で回復が使えて良かった~」
「アカリも多少は使えるだろう?」
「私は風属性低いから、スピナの加護でもない限り、かすり傷程度しか治らないし、聖属性のは魔力ごっそり持っていかれるから使えないんだもの」
「まぁ、ここでは聖属性は使わない方が良いだろうな。魔法使い共に見つかると研究材料にされてしまうからな」
「それは怖いから、ここでは水属性で過ごします!」
「ああ、そうしてくれ」
旅行に行く前に「聖属性は使わないこと! はい。復唱!」とリュエールに散々言われて、何度も「魔法は生活魔法のみしか使いません!」と言わされたことか……。
ハァ……今日はいい天気だ……復唱した日々を思い出して、空を見上げると、背の高い塔の周りを繋げている橋でなにかが光っている。
「ルーファス、上のアレなんだろ?」
「ん? ああ、魔法学園の生徒か塔の研究者が喧嘩をして、魔法のぶつけ合いの光だろうさ」
「どこの大陸でも喧嘩は激しいねぇ」
温泉大陸の名物でもあるけど……そう思うと、多少は目の前で喧嘩が起きても動じないかも?
むしろ、【刻狼亭】では「行け―! 負けたらお給金減らしますよ!」と野次を飛ばすこともあるからね。
私も逞しくなったものだなぁ……喧嘩に巻き込まれると怒られるけど、野次を飛ばすだけなら、うちの従業員達に紛れて大騒ぎし放題である。
「食べ終わったらどこに行こうか?」
「そうだな。まずはリュエールの指示にしたがっておくか?」
「ふぇー……リューちゃんは、旅行の楽しみを社会科見学形式にするつもりだ~」
「カメラも撮っておかないとな」
カシャッと、ルーファスがガレットを食べる私を写真に撮って満足そうな顔をしているけど、思いっきり食べ物を頬張ってる『食いしん坊あかりちゃん40年後』の写真としてアルバムに並べられそうな予感しかしない。
「ルーファスも撮ってあげる!」
「オレはアカリを撮れればそれでいいんだが?」
「ダーメ。一緒に来たんだから、ルーファスの写真もないとね!」
カメラを構えてシャッターを押して、これで二人で『ナン・アラ・ミィ』で朝食をした思い出が出来た。
私も満足で、残りのガレットを食べていると、上から大量の水がザバーッと落ちてきて、一瞬身構えてしまったけど、クリスタルガラスのおかげで濡れることは無かった。
「なに、今の……? 上、あっ、橋の上からずっと流れてる」
「水魔法使いがコントロールを誤っているようだな。酷い水の量だな……すぐに魔力切れを起こすな」
ルーファスの言葉が終わる前に水は止まり、上から人影が落下してくるのが見えた。
あの高さから人が落ちたら……いやいや、ここに落下してきてない?
「チッ、【風・捕縛】」
ルーファスが素早く四角い小窓を開けて魔法を唱えると、ゆっくりと上から落下してきた人がクリスタルガラスの天井に横たわった。
これなら怪我も無く無事に終わったかな? と、ホッとしていると、クリスタルガラスの天井に赤い染みが広がっていく。
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