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25章
おヨメさまと応援
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ベネティクタ都市の中心にある魔法学園。
ここはヴォルフさん達が言うように、属性関係なく仲良くしているらしく、学園長が五つの塔のいがみ合いを嘆いて、学園に居る間だけは、子供達を仲良くさせようという想いが学園方針になっている。
しかし、五つの塔の対抗試合の会場はこの学園の大きな中庭にあるグラウンド場で行われる為に、毎年それには頭を抱えているらしい。
少なからず、自分の属性がどの属性か分かり始める高等部の子供達は自分の属性の塔を応援したりして、喧嘩などにも発展するので、とても困っているのだとか……。
学園側は五つの塔が研究したりしている成果費用で運営をしている為に、学園側も強くは言えないらしい。
なので、ルーファスが「今後、十年の運用資金はオレが提供しよう。その十年で今の若者達に寄り良い教育と、塔での成果を上げて、学園に見返りが出るようにしていってくれ」と、援助を申し出た。
一応、ルーファスがグラウンド場を使って良いか、学園側に話をしたところ上記の話になり、「あの爺共をギッチギッチに締め上げてください!」と言われた。
おお、鬱憤がたまっているんですねぇ。まぁ、分からなくもない。
グラウンド場は楕円形をしていて、見た目は闘技場に見えなくもない。
映画で見た事のあるコロッセオとかいうのに似ているかも?
観客席もあり、既に人が埋まり始めているのは、学園側の生徒を学園長が呼び込んだのと、各塔の人々が塔長が戦うとあって観に来ているのだ。
「ルーファス、頑張ってね! 応援してるよ!」
「ああ。アカリの応援さえあれば、オレは無敵だ」
私が両手でガッツポーズでピョンピョン跳ねると、ルーファスが嬉しそうに尻尾を振って私の腰を手で掴み上げ、そのまま上に持ち上げると唇を重ね合わせる。
「んっ、ぅ」
「勝ったら、なにか褒美をくれるか?」
「もぅ、ルーファスは勝つに決まってるでしょ?」
「いや、あれだけ塔長共が豪語するのだから、分からんぞ?」
「んー……、ルーファスのお願いを一つ聞いてあげる。私に出来る範囲ならね?」
「言質はとったぞ」
ルーファスの良い笑顔に私は「あれ? なんか不味いこと承諾しちゃった?」と、少しだけゾックリと震えた。
まぁ、ルーファスが無理難題を言うことは無いだろうし、大丈夫かな?
グラウンド場に塔長達がそれぞれの属性の色の長いローブと杖を持って現れた。
『なにやら、面白そうな催しをするようだのぅ』
「あっ、アクエレイン起きたの?」
『うむ。面白そうな催しは見逃せぬからのぅ』
ふっふっふっとアクエレインが笑い、私の髪からスルリと解けるとグリムレインそっくりの人型になる。
グリムレインより、少し青みがかった髪は長く、金色の眼はグリムレインは切れ長なのに対して、少しだけ垂れ目だ。
「さて、誰からでも掛かって来て良いぞ? むしろ全員で来ても構わん」
おお、うちの旦那様恰好いいー!! 余裕のある言葉が吐けちゃう辺り流石という感じである。
対して、塔長達も余裕があるのか、長い巻物のような書類を出してきた。
「我々が負ければ、塔長を降りるという件だが、こちら側も条件を出そうではないか!」
「ほう? まぁ、一方的な条件だったからな。それぐらいは聞こう」
確かにルーファスだけの一方的なことでは、あちら側も納得は出来ないだろう。
ふむっと思って見ていたら、塔長の指が私を指す。
うん? ああ、アクエレインかとアクエレインを見上げると、アクエレインは私を指さす。
「奥方を塔の一員に加えさせてもらおう!」
「ふぁっ!?」
何故に私!?
あんぐり口を開きかけた私の顎を、アクエレインが『女性が人前で口をみっともなく開くでない』と言って、指で上にあげて閉じさせる。
「成程。アカリが塔の一員になれば、アカリを主君にしているドラゴンも手に入るという算段か。このオレの番を欲するとは、つくづく塔長という役職からお前達を引きずり落さねばいけなくなったな」
あわわっ、ルーファスが負けるとは思ってないけど、絶対こんな我が儘な老人達のところに私をやらないでー! 絶対に勝ってー!!
私が見えないポンポンを上下に振るように手をバタつかせて「ルーファス頑張ってー!」と、声を上げる。
ルーファスが小さく笑って、パリパリと体から既に雷が放出されている。
これは本気のようだ。
「我々が塔長であり、魔法の使い手だということを思い知らせてやるわ!」
杖を五人が構え、ルーファスは早く来いと言わんばかりに手招きして挑発している。
それにしても、魔法って、この世界では杖とかあまり使うことってないから、割りと久々に見たなぁという感じ。
魔力増加とかあくまで補助的な魔道具なんだよね。
私の世界では魔法使いの杖の先から魔法は出るイメージだったけど、この世界ではそういうのは無い。
杖から火でも出そうものなら杖が焦げてしまうのである。
『両者、お互いに魔法の使用のみ有効とします! 立会人はここに居る全員と、わたくし魔法学園長セルデウスが見届け人となります!』
魔道具の拡声器で学園長さんが張り切った声を出す。
そして学園長さんは私の方にも魔道具の拡声器を持ってやってきて、ウインクする。
『では、温泉大陸の大女将アカリさん意気込みをどうぞ!』
魔道具を向けられて、私もノリで答える。
『意気込みは私の番に聞くべきですが、景品のような扱いに私もなってしまいましたし、そうですね。温泉大陸のこの大女将である私を欲しがるなんて、負けた後でどうなるのか……少し怖いですね』
もちろん、私が怖いのは塔長達がルーファスにボコボコにされないかだけどね。
ここはヴォルフさん達が言うように、属性関係なく仲良くしているらしく、学園長が五つの塔のいがみ合いを嘆いて、学園に居る間だけは、子供達を仲良くさせようという想いが学園方針になっている。
しかし、五つの塔の対抗試合の会場はこの学園の大きな中庭にあるグラウンド場で行われる為に、毎年それには頭を抱えているらしい。
少なからず、自分の属性がどの属性か分かり始める高等部の子供達は自分の属性の塔を応援したりして、喧嘩などにも発展するので、とても困っているのだとか……。
学園側は五つの塔が研究したりしている成果費用で運営をしている為に、学園側も強くは言えないらしい。
なので、ルーファスが「今後、十年の運用資金はオレが提供しよう。その十年で今の若者達に寄り良い教育と、塔での成果を上げて、学園に見返りが出るようにしていってくれ」と、援助を申し出た。
一応、ルーファスがグラウンド場を使って良いか、学園側に話をしたところ上記の話になり、「あの爺共をギッチギッチに締め上げてください!」と言われた。
おお、鬱憤がたまっているんですねぇ。まぁ、分からなくもない。
グラウンド場は楕円形をしていて、見た目は闘技場に見えなくもない。
映画で見た事のあるコロッセオとかいうのに似ているかも?
観客席もあり、既に人が埋まり始めているのは、学園側の生徒を学園長が呼び込んだのと、各塔の人々が塔長が戦うとあって観に来ているのだ。
「ルーファス、頑張ってね! 応援してるよ!」
「ああ。アカリの応援さえあれば、オレは無敵だ」
私が両手でガッツポーズでピョンピョン跳ねると、ルーファスが嬉しそうに尻尾を振って私の腰を手で掴み上げ、そのまま上に持ち上げると唇を重ね合わせる。
「んっ、ぅ」
「勝ったら、なにか褒美をくれるか?」
「もぅ、ルーファスは勝つに決まってるでしょ?」
「いや、あれだけ塔長共が豪語するのだから、分からんぞ?」
「んー……、ルーファスのお願いを一つ聞いてあげる。私に出来る範囲ならね?」
「言質はとったぞ」
ルーファスの良い笑顔に私は「あれ? なんか不味いこと承諾しちゃった?」と、少しだけゾックリと震えた。
まぁ、ルーファスが無理難題を言うことは無いだろうし、大丈夫かな?
グラウンド場に塔長達がそれぞれの属性の色の長いローブと杖を持って現れた。
『なにやら、面白そうな催しをするようだのぅ』
「あっ、アクエレイン起きたの?」
『うむ。面白そうな催しは見逃せぬからのぅ』
ふっふっふっとアクエレインが笑い、私の髪からスルリと解けるとグリムレインそっくりの人型になる。
グリムレインより、少し青みがかった髪は長く、金色の眼はグリムレインは切れ長なのに対して、少しだけ垂れ目だ。
「さて、誰からでも掛かって来て良いぞ? むしろ全員で来ても構わん」
おお、うちの旦那様恰好いいー!! 余裕のある言葉が吐けちゃう辺り流石という感じである。
対して、塔長達も余裕があるのか、長い巻物のような書類を出してきた。
「我々が負ければ、塔長を降りるという件だが、こちら側も条件を出そうではないか!」
「ほう? まぁ、一方的な条件だったからな。それぐらいは聞こう」
確かにルーファスだけの一方的なことでは、あちら側も納得は出来ないだろう。
ふむっと思って見ていたら、塔長の指が私を指す。
うん? ああ、アクエレインかとアクエレインを見上げると、アクエレインは私を指さす。
「奥方を塔の一員に加えさせてもらおう!」
「ふぁっ!?」
何故に私!?
あんぐり口を開きかけた私の顎を、アクエレインが『女性が人前で口をみっともなく開くでない』と言って、指で上にあげて閉じさせる。
「成程。アカリが塔の一員になれば、アカリを主君にしているドラゴンも手に入るという算段か。このオレの番を欲するとは、つくづく塔長という役職からお前達を引きずり落さねばいけなくなったな」
あわわっ、ルーファスが負けるとは思ってないけど、絶対こんな我が儘な老人達のところに私をやらないでー! 絶対に勝ってー!!
私が見えないポンポンを上下に振るように手をバタつかせて「ルーファス頑張ってー!」と、声を上げる。
ルーファスが小さく笑って、パリパリと体から既に雷が放出されている。
これは本気のようだ。
「我々が塔長であり、魔法の使い手だということを思い知らせてやるわ!」
杖を五人が構え、ルーファスは早く来いと言わんばかりに手招きして挑発している。
それにしても、魔法って、この世界では杖とかあまり使うことってないから、割りと久々に見たなぁという感じ。
魔力増加とかあくまで補助的な魔道具なんだよね。
私の世界では魔法使いの杖の先から魔法は出るイメージだったけど、この世界ではそういうのは無い。
杖から火でも出そうものなら杖が焦げてしまうのである。
『両者、お互いに魔法の使用のみ有効とします! 立会人はここに居る全員と、わたくし魔法学園長セルデウスが見届け人となります!』
魔道具の拡声器で学園長さんが張り切った声を出す。
そして学園長さんは私の方にも魔道具の拡声器を持ってやってきて、ウインクする。
『では、温泉大陸の大女将アカリさん意気込みをどうぞ!』
魔道具を向けられて、私もノリで答える。
『意気込みは私の番に聞くべきですが、景品のような扱いに私もなってしまいましたし、そうですね。温泉大陸のこの大女将である私を欲しがるなんて、負けた後でどうなるのか……少し怖いですね』
もちろん、私が怖いのは塔長達がルーファスにボコボコにされないかだけどね。
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